著者娘 - ルーザーズハウリング 4(前編)

4章:強者の集い、負け犬の遠吠え。

嘘のコンテストの余熱も冷めやらぬ中、meshiochi娘は連日生徒会に入り浸っていた。

「一つやりたいことがあって打診してんだ」

とは、本人の談。この打ち合わせへの情熱は『筐体』の時を思い出す。一人で悩んで形にすることが多い彼女だが、別に議論や打ち合わせは嫌いというわけではないようだ。

「編集者!やったぞ」

そんなある日、meshiochi娘は片手に大きな旗を持ってやってきた。

「『チームコンテスト』、本邦初開催だ。許可が降りた」

チームコンテスト……つまり普段の(共著を除いて)一人で戦うコンテストとは全く別の団体戦。著者学の元祖たるEN著者学園では何度か行われたコンテストだが、日本ではまだ開催されたことはなかった。

「団体戦なんてぜってえ楽しいだろ。強いやつ×強いやつ=強い作品! そんなわけで打診して、おれが主催者ってことで合意を得ました」

なるほど、確かに面白そうだ。そう頷くと、早速みんなに伝えてくる、meshiochi娘は息を巻いた。

A. その旗って主催者の証?

B. テンション上がって扉とか壊すなよ?

「ああ、この旗? テンション上がって自作した」

だから別にいらねぇ、と旗から棒を抜いて投げ捨て、生徒ホールに駆けていった。

慌てて追いかけると、扉を蹴破るような音がしたところだった。

「おまえら!聞けぇ!!」

そう言ってmeshiochi娘は丸めた旗(の棒を抜いたやつ)を広げる。ポスターだった。なるほど……。

「チームコンテストの開催だ!おれが主催!!参加よろしく!!!」

コンテストと聞いて、著者娘たちの目の色が変わる。

「ついにやるのかチームコンテスト!」
「いいからレギュを出せ、無能か?」
「チームの人数は!?」
「taleのみでも、いい?」
「怖いよう……」
「あー、そういうのはいいや」

多種多様な反応。いかにも祭りと言った騒ぎ。meshiochi娘は教卓の上でレギュレーションについて説明しようとして……ぱかん、と。背後から丸めたポスターで頭を叩かれる。

「主催者をやろうって奴がドアを壊すんじゃあないよ」

「げっ、委員長」

運営委員長、海野娘。歴戦の著者娘であり、今年のコンテストの取りまとめ役でもある。騒ぎを聞きつけたらしく、ほかの運営委員の姿も見える。

「Misharyさんあれ片付けといて」

「了解」

「いやちょっと待て俺をなんだと痛い痛い痛い歩ける歩ける自分で歩くから」

nanigashi娘が真顔でそんなことを言い、Mishary娘が真顔でmeshochi娘を引き摺る。meshi娘の悲痛の声がだんだん遠のいていく……。

・2節

『チームコンテスト』発表後。meshiochi娘と一度自室に戻ってきた。

「扉を直すのって意外と楽しいね。もう一回……冗談だって」

本当だろうか……?meshiochi娘ならやりかねない。だがこちらの疑念もつゆ知らず、彼女は話を続ける。

「さて、チームコンテストでも当然勝ちに行く。つまりは、最強の布陣を組む必要がある」

A. 組む人に心当たりは?

meshiochi娘は、特にカノン関連で培った人脈がある。実際にこの前の共著形式の個人コンテストでは、『筐体』の同期組と組んでいた。普通に考えればかつて協力したメンバーかな、と思う。ただ……meshiochi娘は、いつも予想通りに動かない。

「ああ。一人だけ、絶対に組むと決めてる奴がいる」

あの人はこの時間なら屋上かな、と。meshiochi娘は階段を登っていく。昼休みを屋上で過ごす変わり者の著者娘……朧げな記憶で、一人該当者がいたのを思い出す。

屋上に出る。心地よい風が吹き抜けるその先に、フェンスにもたれてパンを齧る著者娘の姿があった。

名をsouyamisaki014。meshiochi娘の先輩に当たる。陰で泣く著者娘に煽りとしか取れない言葉を浴びせたり、変身ベルトをつけて投稿したり、どこか世俗とズレているところがあると噂される著者娘。

彼女が何か口を開くより早く、meshiochi娘は前に詰めて話し始める。

「お嬢さん、今暇?」

「……ナンパ?」

「ナンパ」

ナンパなんだ。

meshiochi娘はその足取りと同じように、真っ直ぐ話を進める。

「先輩、チームコンテストに出る予定はありますか」

「無いけど」

「良ければ、おれと組んでチムコンに出てくれませんか」

「へ?」

それだけ言って、meshiochi娘は頭を下げる。ナンパと形容するにはあまりにも実直な勧誘。宗谷岬娘は目を丸くした。

「……私でいいの?」

「アンタがいいんだ」

「へぇ、大丈夫? 著者娘にしては審美眼に問題があると思うけど。眼科行ったら?」

「なんだ、おれにビビってんのか? 随分と小さい肝だな、そっちこそ内科行ったほうがいいぞ」

口が悪い応酬。案外というかなんというか、波長は合うのかもしれないな、と考える。

「ビビってる?はは、冗談。私はてっきり君はstenganさんあたりと組むものかと思ってね」

「!」

その言葉に、meshiochi娘が少し硬直する。その硬直を誤魔化すように、のろのろと息を吐いた。

「あの人とおれじゃあタイプが違うし、何よりあの人と組んだらあの人には勝てないだろ」

「なるほどね。じゃあ私と組むのは妥協──」

「そんなわけないだろ」

今度は宗谷岬娘が硬直する版だった。

「おれはアンタの作品が好きで、ファンだ。アンタを誘うことは俺の中では前提条件だった」

「……ははぁ、なるほどわかった、君、気が狂ってるね?」

たっぷり10秒は沈黙してから、宗谷岬娘はそう返答する。

「そして、アンタも同族だ」

meshi娘は彼女の目を見てそう答え、右手を差し出す。

「……違いない。わかったよ、共に勝ち星を追うとしようか」

その手は、しっかりと握り返される。


チームコンは盛り上がっていた。いや、まだ作品は投稿されていない。チーム発表の時点で、サプライズがいくつも起こった。

「わたしたち『永久欠番四天王』、よろしく」

例えばそれは、"死と無の王"notyetDrが大物新人と怪物著者を引き連れて発表した厨パだった。

「そう来たらこう出るしかねえよなぁ!チーム『はぐれメタル×4』、出場するぜ!」

例えばそれは、meshiochi娘が負け続けたstengan774を含む、超一流"執筆サイボーグ"の如き猛者たちの厨パだった。

「『MMMR』です。よろしくな」

「若干出遅れた気はしますが、『お肉万歳』もドリームチームを揃えました。戦場で会いましょう!」

「『歴史文化同好会』、出ます。ついに正面からやりあう時が来ましたね」

「『産地直送幻覚畑』、楽しみにしててください!」

例えばそれは、例えばそれは、例えばそれは……挙げ出したらキリがない、圧倒的強者の集い。チームコンテストは開催前から魔境だと、誰もが確信した。

「おいおい、厨パ祭りも大概にしろよ」

そう、宗谷岬娘は嘆く。meshiochi娘は全く同感だと頷いた後、だけど、と続ける。

「まあ、うちも大概だよな」

そう言ってmeshiochi娘が集めたチーム『m^4』は、勢いよく宣戦布告に躍り出る。

「主催者だからって参戦しちゃいけないって決まりはねえよなぁ!いくぜsouyamisaki!」

meshiochi娘が吠え、

「ハハ、惨敗して閉会スピーチで泣く羽目にならないといいね主催者サマ?」

宗谷岬娘が混ぜっ返し、

「私にチームリーダー押し付けといて何であんなに偉そうなんだろう……」

0v0娘が首を傾げ、

「よくわからない奴らですが頑張ります」

aisurakuto娘が締め括る。

──さあ、役者は出揃った。後に「SCP-JPの1番長い月」と称されることになる宴が、幕を開ける。

・3節

〜ここにいい感じの音楽〜

実況: さあ始まりましたSCP-JP夏の重賞1、28チームが鎬を削ります。

実況: ファンの期待を一心に背負って、1番人気ははぐれメタル×42。違いを見せつけることはできるのか!

実況: 実力は引けを取りません、2番人気はお肉万歳。気合充分!今にも投稿しそうです。

実況: この評価は少し不満か?3番人気はMMMR。ただならぬ雰囲気を感じます。

実況: コンテストハブ投稿完了、運営の準備が整いました。

実況: 一斉にスタート!





コンテスト風物詩、「開幕投稿」あるいは「初日投稿」ライバルがいない間に読んでもらえる安定した手段だ。しかしこれを行うには、初日じゃなくてもいっかという妥協を抑える強いメンタルと、初日までに完成させるスピードが必要になる。

それを前提として。今回のチームコンテストは、初日に──プラス評価のみで──16作が投稿された。

「なんで?」

主催者兼参加者のmeshiochi娘はビビっていた。飛ばしすぎだろ。

しかも、ハブを投稿したチームが二組もいた。加減しろよ、という宗谷岬娘の呟きに、meshiochi娘が大きく頷く。

A. でも、まだまだコンテストはここからだろ?

「そうだな、任せとけ」

meshiochi娘がそう頷いて、端末に向き直る。頼もしい後ろ姿だ。

成る程、MMMRの「共異廻歴」とお肉万歳の「聖杯を仰ぐ翳」のスタートダッシュはたしかに驚異的だ。しかし、我らがm^4のmeshiochislashも筆の速さでは負けていない。巻き返しは充分可能!

「共異廻歴できた♡」

A. ……え?

「なんて?

「主催が真っ先に裏切るって何!?」

実況: さあ第1週が終わって先頭はMMMR、2番手にお肉万歳!前はこの二人が鎬を削ります。過去に類を見ないハイペースで展開が流れています!果たして終盤までスタミナは保つのでしょうか!

実況: それを追いますのはもうひとりいる一水四見バルカン半島、少し離れて地を這ううどん妖怪教月光町ちっちゃいものクラブ

実況: 後方不気味に息を潜めます、はぐれメタル×4。いつ仕掛けてく──ああっと仕掛けた!2週目から一気に速度を上げます!

実況: そしてほぼ当タイミングで後方集団を抜け出したのは京都年末オフ運営!一気に前方集団にプレッシャーを掛けます!

実況: 先頭は未だMMMR、2番手お肉万歳と3番手もうひとりいるが激しい競り合いを見せています。そしてそれを見るように月光町ちっちゃいものクラブ、ここで速度を上げてきた!

実況: 後方集団m^4のmeshiochislashはなんとここでチームコンテストの裏レース「裏チームコン」にMMMRの共異廻歴で殴り込みました!主催者に似つかない無法っぷりです!





当然、meshiochi娘もただ裏切った訳ではなかった。実を言えば──meshiochi娘は、既に一作完成させているのだ。『対話部門のオリエンテーション』、m^4のテーマの導入となる一作を。

「導入だけ投げてもなぁ」

そう、導入はあくまで導入。真価は関連作が出来てから……ということで、他のメンバーが書き上げるのを待っているのだ。

「それは他チームの作品投稿する理由にはならないと思うけどなー」

A. うん、俺もそう思う。

「編集者!?宗谷岬に味方するのか!?」

meshiochi娘はそんな悲痛な叫びを上げてから、悪かったとは思ってるけど、つい面白くて筆が乗った……と頭を書く。それより、と。彼女は手を叩く。

「そろそろ俺も2作目書き上がるし、他の人も作品ができるころだと思うし、多分今週が勝負だt」

「できました、見て頂ければ」

aisurakuto娘。チーム最古参にして最高評価のm^4エース、4番打者が、ついに作品を完成させた。

「……最高です」

meshiochi娘はその下書きを読み切って、それだけ言った。

「見せてやりましょう、m^4の次元の違い」

実況: さあチームコンテストも折り返し、2週目が終わり向こう正面に入ります!

実況: 先頭は未だMMMRがリードを保っています、それを追う2番手集団は混戦模様!お肉万歳を追うようにもうひとりいるはぐれメタル×4が速度を上げていきます!

実況: おっとここで後方集団、m^4がついに進撃を開始する!最後方から──え?なんですか?

解説(?): 飯落!!!!!愛してるぞ!!!!

実況: えーっと、どなたでしょうか?

meshiochi娘: 犬殴!!!CSS助かった!!!すき!!!

解説(dog_punch娘): うわああ!!!!!!!!!!!!!!!!

実況: えー、気を取り直してやっていきます、m^4と同時に後方集団から抜け出したのは歴史文化同好会産地直送幻覚畑

実況: 3週目終盤、ここで先頭のMMMRがここで再加速を見せてさらにリードを広げます!

実況: 2番手集団、もうひとりいるを先頭にはぐれメタル×4お肉万歳が続きます。

実況: その後ろには月光町ちっちゃいものクラブ、そして京都年末オフ運営の後ろにピッタリと付けているのは加速してきたm^4

実況: さあ先頭変わらぬまま第4週に入ります!





「納涼祭、めっちゃよかったです」

「ありがとうございます!!!」

敵に塩を送る……というほど穿った考え方をしている著者娘は意外と少ない。良い作品は良いと言う。meshiochi娘はtaga娘にしっかりとそれを伝えていた。

「ただまあ、最後に勝つのはうちですけど」

「えっ」

しかしそのままナチュラルに宣戦布告をしてしまうのがmeshiochi娘の悪い所だ。明らかに困惑しているたが娘に声をかける。

A. 照れ隠しみたいなもんだから気にしなくていいよ

B. 新作の進捗あんまりだから安心していいよ

「ちょ……おい、編集者!」

meshiochi娘が慌ててこちらを睨む。その仕草に、たが娘はちょっと笑った。

「面白い人たちですね。うん……はい。納涼祭第二幕、楽しみにしていてください」

「……うん、楽しみ」

最後には、そう言って別れた。その後腹に強めのをもらったことは言うまでもない。

「──のような文章で詰めておきたいです。あと宗谷岬さんは──」

「なるほど!修正します!」

「なるほどね。まあやってみます」

腹にパンチをもらった後にm^4会議室に入ると、0v0_0v0娘と宗谷岬娘が書き終えた作品をaisurakuto娘に見てもらっているところだった。

m^4は現在7位。しかし勝ちの目がないわけではない。aisurakuto娘の「"クンストカンマー病"についての講義と症例紹介」は全体でも5本の指に入る伸びを見せている。このままいけば、まだまだ勝敗は分からない。

「改稿終わりました、出します!」

「おー、リーダー様。随分と時間がかかったな」

「まだまだまだこんなもんじゃないだろー?」

宗谷岬娘とmeshiochi娘がここぞとばかりに煽り始める。が、meshiochi娘はその途中に宗谷岬娘に向き直る。

「アンタもまだ投稿できてないだろうが!!!まだハブページの画像作りくらいだしそれのロゴ作ったのもaisurakutoさんだろ!!」

「その画像についてる初歩的な英語をミスりまくったのはどこのどちら様でしたっけぇ?」

「それに関してはすいませんでした!!!」

「投稿しまし……あ」

漫才に似た喧騒に紛れて、0v0娘が投稿し……その体勢のまま固まる。

「どうした?」

「すごいタイミング被りました……」

『シーグラス』投稿の25分前。チーム『サツバツ!』、投稿開始。

後半へ続く。