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EianSakashibaさんでした!
予想結果: EianSakashiba, teruteru_5, rokurouru, tateito
何者の敵にも味方にもなりたくない。創作を始めた理由だった。
「創作に逃げた」が正しいか。血の繋がった人たちを含めた関係というものに嫌気が差し、そんな俺は人らしく生きれないという事実と、0の自己肯定と、99の承認欲求から逃げられる場が欲しかった。
創作のための文章や音楽は未経験だった。低空飛行が続き、また逃げようとした矢先に面白がってくれる人たちが出始めた。ここにいていいのかと、俺自身を許せるかもと勝手な希望を抱けた。
俯いた顔を上げる余裕が出来ると、先人たちの歩んだ道と目標を見つけることが出来た。俺の心を値踏みしたら逃げられるような楽な道には見えない。でも先人たちは楽しそうに道上で道標として歩み続けていた。
何者にも俺の創作をぶつけたい。敵味方の狭い尺度ではなく、好敵手として。
4年経った。俺にしては長く続いた。人と関わることも苦痛ではなくなった。だがそれは宇宙船に乗って逃げた先での話だ。故郷の星に置いてきた災厄が「それをやめろ」とお終いを説いた。
逃げたい、怖い。以前ならその2つで心が一杯だった。だが今は状況を変えたいという期待、老いた家族と向き合う覚悟、それは逃げるべき敵ではないという目標があった。俺が創ったものじゃないけど、理由は分かっていた。
いつの間にか多くのものを貰っていたんだな。創作を始めてからだけじゃない、始める前からずっと。
相棒であるビグスビー付きのテレキャスを持って終末の発生源へ駆け出す。全力を出せる自信があった。この物語の主人公は終末齎す災厄ではなく、俺自身だから。
そして俺は主人公として、この物語をまだ終わらせる気がないから。
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KeiShirosakiさんでした!
予想結果: KeiShirosaki, eringiumexe×2, Hasuma_S
初めて徹夜をしたのは、大学時代、実験レポートの執筆に追われていた頃だったと思う。机の上にノートパソコンと実験ノートを広げ、場所が足りなくなって膝の上に参考書を置いて、更に背後のベッドの上には授業プリントをばら撒いて、ワードで実験手法や理論値の計算式を入力していた、あの日々。西向きの窓の外から光が差し込んで、カーテンをめくってみると、外の色はもう夜のものではなく、早朝の空と同じ色合いの光が天上を覆っていた。
その時初めて、夜と朝が睡眠という断絶なしに自分の中で接続して、夜はその神秘性を少しだけ欠いた。眠りという儀式を経ずとも朝が来ることを知った。大晦日はいつもよりも夜更かしをする日ではなく、いつもよりも早く寝る日になった。
どんな夜も有限だということを、もう子供でなくなった私たちは知っている。夜は終わる。レポートに追われる夜も、友人と飲み会をする夜も、荒れ果てたスーパーのバリケードの中から、人ならざるものの音を警戒して耳を澄ませる夜も。
ひび割れた壁面を見つめる。傍に置かれた大ぶりのスコップに触れる。これが私の鈍器。
社会というものは案外に脆かった。けれども人間という単位はそうでもなかった。人が死ねば細胞もすぐに死に絶えるが、社会が死んでも私たちは生きている。引越しする前に移転先での生活を正確に思い描けないように、それでも引っ越した後はそこで生活できてしまうように、人間という生き物は案外としぶとくて、新たな環境に馴染めてしまうものらしい。
窓の外からあの薄青い光が差し込み始めた。世界が変わる前と同じ鳥の声。
夜が明ける。
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eringiumexeさんでした!
予想結果: eringiumexe, BARIGANEsensha, rokurouru, tateito
人類史全体でどれだけの人間が生まれ、そして死んでいくんだろうか。
そんな中で私はどのくらいの位置にいるんだろうか。
人類が70人しかいない時代にそのうちのひとりとして生まれる確率よりも、70億人の現代に生まれる場合の方が確率にして1億倍ほど高いと言っても良いだろう。ここから、人口が多い時代に生まれる確率が高いということが推測できる。
人口は時代が下っていくにつれて指数関数的に増えている。一方で、ここまで増えた人類の歴史を終わらせるほどの出来事は、隕石にせよ、戦争にせよ、現生人類を一掃するようなものであろう。
すなわち、人類が滅びるのは人類史で最も人口が多い時代の直後であると予測できる。
先に述べた通り、人口が最も多い時代とは生まれてくる確率が最も高い時代ということになる。
したがって、自分が生まれた、この時代は人類史の終盤である可能性が高い。
自分が人類の中のごく平凡なサンプルであると考えれば、人類史の終末は案外遠くもないのかもしれない。
そんなことを考えながら歩いてたら、クルマに轢かれて、死んだ。
来世は織田信長。
そういうシステムだそうだ。人の魂は全て一旦織田信長に生まれ変わり、本能寺の変で死んだ後にそれぞれの時代の個人に生まれ変わるーー
話変わってくるじゃんかよォ?
ひとりの中に魂一個じゃないってなったらさっきの理屈通用しねえのよ!各個人に生まれる確率が“同様に確からしい”って前提が崩れるわけだからさあ!無駄死にも良いとこじゃねえか!
しかも人類の魂のうち織田信長に生まれる割合が50%ってことはよお!マジかよ人類の半数は織田信長だったのかよ!
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BARIGANEsenshaさんでした!
予想結果: EianSakashiba×2, BARIGANEsensha×2
あるところに地獄だ、辛い、などと言う人がいれば、周囲は簡単に逃げてしまえと言う。逃げた先こそが無間地獄かもしれないのに、天国かもしれないぞと、決して否定出来ないよう嘯いて。
教室の隅から野郎共の話し声が聞こえる。ネトゲのランキングがどうとかで2徹中でヤバいらしい。今しかない青春に躍起になることが顔も知らない友達と仲良くなることなんて、そんなことして何になるんだ思った。が、言ってやる義理もなかろう。サッと荷物をまとめた私はギターを担いで立ち上がった。
私は、何かが得られると思ってギターを弾いているのか?
否。そんなに愚かにはなれなかった。
一度だけ姉に問うたことがある。
「なんでギターの演奏動画なんてネットに上げたの?」
姉は答えた。
「え……しゃ、社会に……居場所が、無かったから……?」
ネットになら居場所があると思ったのか、とは問わなかった。そして、居場所はあった。
私には友達がたくさんいた。既に社会に居場所があった。なのにどうしてギターなんて始めたんだろう?高校デビューしたい陰キャJKみたいだ。
私にはギターの才能が無かった。躍起になって練習しても上手くなりゃしない。親切な社会は私に居場所を提示し続けたが、それでも「ギタリスト」は汚名だけを残し続け、姉の後を追い続けた。
私は野郎共に問いかけた。
「ゲームのイベントとかで授業サボって、そんなにネットの友達との繋がりが切れるのが怖いの?」
男子は当然不機嫌になった様子で、返答することは無かった。でもわかるよ。私はあの人との繋がりが切れることが怖い。きっと私の知らないうちに遠くへ行ってしまう。だから私は逃げられない。得る物が無かろうと、失いたくないんだ。
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Tsukajunさんでした!
予想結果: Tsukajun×2, Hasuma_S, tateito
一晩中考え続けた結果、私は日課の散歩をすることにした。ジリジリと強くなり続ける日差しを手で遮りながら、私はひび割れたアスファルトを踏みしめる。ギシギシと。これで満足なんだ、と自分に言い聞かせて。でも、彼はそうじゃなかったみたい。
「やぁサディ。今日も日課の散歩?」
聞き馴染みのある声に振り返る。あぁ主よ、何故貴方は「例え少しの外出であってもおめかしを忘れないよう」と取扱説明書に書かなかったのか!
「わ!え、ソール?なんでこんなとこ、家反対方向よね?」
「ちょっとね」
慌てる私をよそにソールは傍らのベンチに腰掛ける。私は深呼吸をして、うん、座るしかないかな。
「今日、良い天気だね」
「ん」
近づいてくる太陽を横目に、私達はこんな何処か上の空な応酬を続けてく。なんだかいつもの彼らしくない。やっぱりオーバーヒートしちゃったのかな。
「サディ」
急に彼が私を見つめ直す。私、何か変なこと言っちゃった?
「良ければ、君のと交換したいんだけど、どう?」
「え!? あ、え、…………好きにすれば?」
一呼吸置いて、彼が私の胸に手を入れる。金属の冷たさを感じた後、取り出されたのは苺くらいの小さな歯車。私も彼の胸に手を入れて、同じように苺を取り出す。そしてお互いに、お互いのそれを胸にはめ込む。カチリ。機構が回り出す。
私の中で彼の一部が動いてる。融けた背中よりも顔が熱い。血流は存在しないハズなのに。
「最期だから、どうしても伝えたかった」
彼の体は光に包まれ、次第に私も呑まれてく。50億年前の創造主だって、こんな幸せは得られなかった!
土曜日が終わり、日曜日が始まる。
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teruteru_5さんでした!
予想結果: Tsukajun×2, teruteru_5, roneatosu
明日、隕石が降るって、あの人が言ったの。
それで世界は終わって、みんなが幸せになるんだって。
わたし、そんな終わりがあるものかって思った。
終わりって言うのは絶対的な打ち止めで、生きている以上は避けられない到達点の別名で、強い苦しみを招くことを知っているからこそ、信じられなかった。
わたしは散々苦しんだのに、あの子はその最中で苦しみながら死んだのに。周りはわたしたちを非難するばかりで何もしてくれやしなかった。母は学生妊娠が発覚した瞬間に見切りをつけて、わたしのことを無視した。クラスメイトは好奇心かなんなのか知らないが、心を抉る言葉を吐いた。苦しみを与えたやつらが幸せになる。
これが、どうしても納得できなかった。わたしたちのような「救われない子」が幸せになるのなら分かる。でも、加害者が幸せになるのは違うと胸を張って言える。彼ら彼女らに幸せを享受する資格なんてないっていうのが事実とわかっている。
それでもやることは夢中への逃避行で、そこであの子と会って、ひたすらに後悔を口にするだけだ。あの子はそんなわたしを他所に「流れ星!」なんて言うから、ああ誰もわたしには取り合ってくれないって思って、でもここ以外に居場所なんてないから留まるしかなくて。
朝6時の警鐘によってわたしたちは分かたれて、またいつもと同じ悪夢の日々に溶け込んでいく。ゼロになることすら叶わず、スリップダメージを負い続ける。
あの子は、ずっと夢の中で待っている。
わたしは、ずっと現の中に留まっている。
世界が終わる数瞬前の、僅かな思案と回想。この生が正しいものだったかなんて、わたしには分かんない。
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Something_funya2さんでした!
予想結果: BARIGANEsensha, izhaya×2, v vetman
「俺、シュウマツが好きなんだよ」
主任は、酒が回るとよく分からないことを言う。言いたい言葉と言っている言葉が全く違うような酔い方をするのだ。だから、意を汲み取ってやる必要がある。音の流れからすると、恐らくシュウマイのことなのだろうが。
「私も好きですよ。グリーンピースだけは嫌ですが」
「グリーンピースは確かに良くねえな」
「アレ、何のためにあるんですかね?」
「分かんねえ。でも、意味がありそうで実はないなんてのは良くあることだろ。グリーンピースもそういう類だと思うな」
「確かに、そうですね」
「大体、グリーンピースって名前が嫌いだね俺は。緑の平和? 名前と実態が合ってねえ」
「私もそう思って調べたことがあるんですけど、ピースはpeas、エンドウ豆のことらしいんですよ」
「へえ、そうなのか。ってことは緑のエンドウ豆ってことか? なんでそんな名前にしたんだか」
「未熟果だからグリーンってことなんですかね」
「なるほどねえ、未熟だもんな」
「ま、主任が好きな方はよく熟してるはずですけどね」
「じゃないと好きにならねえよ。爛熟してもない文明がシュウマツを迎えても旨味が足りない。良く育って練られた文明が迎えるシュウマツだから良いんだ。だから、ガキみたいに喚いて私欲を貪って、文明の価値を貶めるグリーンピースはダメだね」
「もしかして、さっきまでずっと終末の話してました?」
「何と勘違いしてた?」
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izhayaさんでした!
予想結果: Something_funya2, izhaya×2, roneatosu
「いつ飛ぶの、これ?」
頭を下げる搭乗口のスタッフに、ビジネスマンが突っかかっている。ごてごてした腕時計に粘ついた視線をやるその仕草に不快感が閾値を超えて、俺は席を立ち、喧騒から遠ざかる方へ歩き出した。
すぐに出発できないことは明白だ。家を出た時に嗅ぎ取った僅かな雨の兆しは、マリントンネルを抜けた直後に非常識的な土砂降りとなって姿を現した。雨はすぐに止んだが、かわりに滑走路の誘導灯すら霞むどろどろとした霧があたりを覆いつくしている。これではどの飛行機も降りれないし、飛び立てないだろう。
一番端の出発ゲートを歩いていると、上空から低い音が聞こえた。地鳴りが天から降ってきたような、遥かに大きなものの音だった。まもなく空港全てが低く巨大な音に包まれ、音は間延びして低くなっていく。何かが降り立つように。
そして、それは見えた。
航空灯だ。赤と緑の光が霧をこじ開けるように沈んでくる。
地上スタッフも困惑し、どこかに連絡し始めた。高度と合わせるように、音は聞き取れない深さまで下がったが、窓ガラスを叩く不気味な振動が、この巨大な音がまだ鳴っていることを伝えている。
そして、
識別できる模様がどこにもない、白く巨大な汚れた飛行機が。
ヴヴン、とチェンソーが肉を嚙むような音をたてて、着陸した。
全開のフラップが霧を押しのけて減速し、そして、停止する。もう音はしない。
ゲートは霧の音すら聞こえそうな静寂に包まれていた。
突如として場違いな声が空港内に響く。
「皆様、お待たせして申し訳ございません。当空港はこれより『特別な荷物の整理』を行います。グランドセキュリティークルーは受け取りカウンターに集まって下さい」
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v vetmanさんでした!
予想結果: KeiShirosaki, Something_funya2, rokurouru, tateito
普段からそんなに飲む方じゃない。「パッケージと目が合う」機会がそうそうやってくるわけでもないから手に取っただけだ。290円を代償に手にした缶の側面には、やはり何とも言えない表情でこちらを見つめるパッチワーク仕立ての猫がヌラリと佇んでいる。土曜深夜の23時だった。
商品名をまともに認識したのは帰宅してしばらく経った後で、内容物がビールであることを知ったのは一応と用意したプラスチック製コップに注いだ直後のことだった。“水曜日のネコ”。そもそもビールに触れてこなかったのでよく解らないが、パッケージが言うには果実的な風味を売りとしているモデルらしい。度数5%。ググったら大体出てきた。その過程で晩飯を作る気力も尽きた。こんなもん飲んだところで得られるのは炭水化物以下の何かと致死量未満の毒物だけだというのに。
どうしようもなく辛いわけじゃない。学友の誰もが一向に努力しないから相対的に焦燥や苦心を覚えているだけだ。今の僕に酒は不要の筈である。一口だけなら含もうとコップに手を伸ばしたのはパッチワーク猫の魔力によるものだ。猫が僕を呼んでいた。少し高めの声調で。ひっきりなしに。
嚥下。微炭酸と共に黄金が喉を下る。空になりかけた胃袋をアルコールで焦がしながら。麦芽の柔らかな苦みと共に、微かなオレンジの風味に撫でられながら。
苦みの中に慈愛があった。別に気力が回復したわけじゃないけど、何かに寄り掛かる感覚を少しだけ取り戻した気がする。初めて口にするビールの波は猫の毛並みに似ていた。
「知らねえよ」
誰からともなく労われた気がして呟く。
「……ありがとう」
誰へともなく付け足した。3日遅れの水曜日と共に猫が佇んでいた。
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roneatosuさんでした!
予想結果: teruteru_5×2, Something_funya2, roneatosu
週に一度の物資集めの帰路。道端の空き缶を思わず手に取った。剥がれた表面に“ペプシコーラ”の文字。今日においては現存しないブランドだ。
缶を鞄に突っ込み、冬の街を軍用自転車でかける。ここ数年は都市復旧が進んできたおかげで、目に見えた廃墟群や敵対実体は少ない。人類の生存圏域は着実に拡大しつつある。自治団や再生連合が何を考えてるかは分からないが、新統治府庁が再建築された事実、最近市場に出回る品の多様さと値段、あるいは人々の間に増える笑顔の数を通じてこうした楽観的な雰囲気は確かなようだ。
拠点に着いた。漁った宝を抱えてあいつに会いに行く。
「おっちゃん戻って来た! 今日なんかレアものあった?」
「いつまでもおっちゃん言うな。俺はもうジジイだよ。ほらよ、コンビーフ」
「あんがと、おっちゃん!」
相変わらず、このクソガキは。そう思いながらも鞄を開封し、中身を机へ取り出していく。レトルトスープ、マッチ箱、雑誌……そしてコーラの缶。
「これ、ゴミじゃない? 何で持ってきたの?」
「コーラの缶なんだよ。今時珍しい」
「コーラって何?」
「世界一美味い飲み物。歴史の教科書にも載ってるだろ? もっと勉強しねえとな」
“勉強は嫌だぁ!”と言わんばかりのうめき声。本当にコイツは変わらない。だが、日曜くらいは学業のことを忘れさせてやってもいいかもしれない。
「飲んでみるか? 有り物の調合だから完全なソレとは言えねえが……」
「えっ、飲めんの! 飲む飲む! 世界一美味いんだろソレ!」
「そんとーり。お前も手伝えよ」
終末においても週末はやって来る。それだけは不思議と変わらない。
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rokurouruさんでした!
予想結果: v vetman×2, rokurouru, Hasuma_S
この地球そのものが馬鹿でかい時限型の爆弾機構である事が判明し、なんと爆発時刻が五日後だったという発表がされた事は記憶に新しい。つまる所粛々と歴史を紡ぎ続けてきた我々人類の結末は爆発オチだったという訳である。
「らっしゃい」
「えぇ……」
PM11:24。小さな山、その頂上付近の土産店にて。何故か一人の中年がそこにはいた。適当に一人と一匹分の食糧でも頂こうかと思っていたのだが。
「なんでこの状況下で働いてんだって顔してるな」
「その通りだよ。何考えてんだマジで」
中年が憮然とした顔で話しかけてきた。ペットの兎(名:だいごろう)を連れて宛もなく旅をする俺も大概だが随分と変な男だ。あと数日後には、全てが爆ぜるというのに。
「……終わりが確定して分かったのは、この世は爆発して終わる位が丁度いい位の物だってことだ」
中年は商品の煙草片手に続けた。
あと数日で世界は終わる。強引でつまらん〆で全部おしまいだ。この世界が爆発上等の、盛大なスラップスティックだと云うのなら。
なら、せめて俺は鬱屈した日々を最期まで続けてみせようと思う。退屈な前フリをその瞬間まで積み重ねるんだよ。平等にくる爆発オチを、誰よりもくだらねえって笑える様に。
「爆発の時刻にゃ俺は店前で仕入れ作業をしてる。終わりのその瞬間、煙草片手に爆ぜる街を特等席のこの場所で眺めながら俺は笑うんだ」
中年に合わせて外を見れば、満月が間抜けに浮かんでいた。だいごろうが餌を求めて鞄からレジへ着地する。
「……いや。一番の特等席にいるのは、お前の仲間達かもな」
くだらねえと二人が笑った。
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konumatakakiさんでした!
予想結果: KeiShirosaki, konumatakaki×3
「そんな事が、お前にできるのか?」
彼の疑わしげな視線の先には、先ほどまで手元の配線が伸びる通信端末から世界に夢物語を送っていた少女がいた。
「私にはできないよ。その背景にある技術は、複雑で、膨大だ。珪素の高純度化、集積回路の設計、感光薬剤の作成に処理のための環境。この全てを、私だけでやることはできない」
足を組み、不敵に笑みを浮かべる少女の声色は、自信に満ちたものだった。
「じゃあ、何でそんな事を宣言した?」
「理由は三つ」
少女は旧時代の通信端末のひび割れた画面を消して言った。
「一つ。まだこれの時代を知っている人が生きている。電子の網が覆っていた世界をその人たちはまだ覚えている」
「それが求心力になる、あるいはあと数十年すればその言葉が使えなくなる、か」
「その通り。二つ目は別にゼロからじゃないってこと。世界は終わったわけじゃない。数歩戻っただけ」
疑わしげな目を向ける青年を前に、少女は本棚のほうへ視線を動かした。
「残ったものはある、か」
「精密に作られた世界各地の地図と、目指すべき技術へのロードマップがここにある。数十億残った人口も」
「それでも消し飛んだものは膨大だ、イチからではあるだろ。で、最後は?」
そう聞いた青年に、少女が真っ直ぐ、狙うように指先を伸ばした。
「これを一瞬で理解できるほどの頭脳の存在」
青年は少し考え込んだ。そして、彼は一つの事実にたどり着く。
「つまり、世界を巻き込んだ壮大な詐欺に手を貸せと?」
「成功すれば詐欺じゃなくなるよ、現実を作るのは私たちだ」
少女の薄暗い笑顔に、青年は諦めて深い息を吐いた。
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Hasuma_Sさんでした!
予想結果: KeiShirosaki, roneatosu, konumatakaki, Hasuma_S
「マスター、それは何でしょうか」
「これ?缶詰……だったもの。凄い臭い」
「また食べたんですか」
「うん」
荒野に一人と一機。周りに草花すらない廃墟の中で、他愛もない会話をしていた。一人は有り合わせのマントを羽織り、一機は殆ど汚れのない義体に、よく手入れされたエプロンドレスを着ている。
「はあ、貴方は食べなくても平気でしょう、不老不死さん」
「あはは、そうなんだけどね。でも、もしも僕たち以外の誰かを見つけた時に、お土産の一つくらい無いとなって。これはダメだけど」
「それで、居ましたか」
「いいや。そっちも?」
「ええ」
お互い表情は動かない。何故なら二人はこの応答も何度も繰り返しているからだ。
「本当にどこにも誰も、何も居ないんだね。生きているものはまだしも、君みたいなのすらいないとは」
「私だってようやく見つけたのが貴方ですから」
「君が再起動してから何年だっけ」
「542年と幾らかです」
「僕が起きてからは」
「318年」
「そうかあ」
男は空を見上げる。雲一つない空に、眩い太陽の光。それを享受する者が、この世界に一人と一機しかいない。そんな訳がない。その一心で足を動かしてきた。
「まだですか」
「まださ。誰かは居るはずなんだ。そうじゃないのなら」
男は見上げたままの空を指差す。
「この星を諦めた奴らは空にいるんだろう。文句の一つでも言わないと気が済まないさ」
「……そうですか。では次の街に行きましょう。善は急げです」
「さ、流石に休憩しない?おじさん足痛いよ」
「貴方が行くって言ったんでしょう」
「そんなあ」
荒野に一人と一機。彼らの道の傍に、一輪の白い花が咲いていた。砂風に揺られる花びらは待つ。いつか来る春のことを。
この作品の作者は
tateitoさんでした!
予想結果: EianSakashiba, BARIGANEsensha, Something_funya2, v vetman
「おいジジイ」
「なんだガキ」
ある湖の水中、二匹のブラックバスが会話している。一匹は若く小さく傷一つない体、もう一匹は老いて大きく体中に多くの古傷があった。
「ジジイ、あんたが食いつこうとしてるのはどう見ても人間が使うルアーって奴じゃねえか。釣られちまうぞボケてんのか」
「クソガキが。知った上で食おうとしてるのよ、邪魔すんな行っちまったじゃねえか」
ルアーは巻き取られていく。
「なんでルアーなんか食うんだよ、生エサならともかくそもそも食えねえだろ」
「わかってねえな〜ガキは、アレが一番旨えんだよ。おっまた来た」
キャスティングされたルアーが釣り人の操作でバスを誘っている。
「ほらガキ見ろよ、自然界ではありえない不自然な煌めき、くねくねと露骨に魅せつけてくる動き、小魚には絶対見えない前衛的なデザイン、バレバレのテグスが揺らめく様、そして食いついた時のレジン臭さ、到底噛み切れない食感、針の鋭い金属の味と自分の血の味、最後に右や左に無理やり引っ張られ回る快感、あれほど最高なもんは無いんよ。——ああもう辛抱たまらん!」
老バスは見事に釣られていった。そしてリリースされて戻ってきて、
「ああ、最高だぜ!」
「きしょいな~ジジイ~」
また別のルアーが来た。
「おめえも一回食ってみろよ、そうすりゃわかる」
「えー、仕方ねえな」
若バスは小魚もどきの疑似餌を見る。淫靡なまでの動きをする奇妙な樹脂の塊は何故かバスの食欲を掻きたてる。一息に食いつくと明らかに食べ物ではない味がした、と思えば力任せに引っ張られる。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
こうして若バスもルアーにハマった。もう終わりだよこの湖。