この作品の作者は
Fireflyerさんでした!
予想結果: Fireflyer×4, meshiochislash×2, tateito
いつからだったろうか。その道が善意で舗装されていた地獄への道だと気づいたのは。その道が、まるで風の強い夜に小さな灯を守ろうとするほど難しく、どの山よりも険しい道だと気づいたのは、いつだったろうか。
無意味だっただろうか。その光を三稜鏡で曲げてしまうのは。その光が、人類の叡智という美しさではなく、もっとどす黒い大衆娯楽の一枚として消費されるようにした私の腕は、無意味だっただろうか。
「ねえ。きこえる?」
聴こえる。私の選んだ声が。どこよりも澄み渡るように。
「みえる?」
見える。私の選んだ貴女が。誰よりも可憐に。
「どうでもいい?」
どうでもいい、訳がない。私の選んだ貴女が。
「失望した?」
……
私は貴女の事がまだよくわかっていない。貴方は気難しくて、客観的に見れば心の底から愚かで、それでいて、美しい。
一回だけ貴女から「私にはどんなファンが付くと思う?」と聞かれたことがあった。儚さを目的に?いいや貴女は強く、根性があり、しぶとい。それでは、美しさ?一理あるが、やはり腑に落ちない。
趣味。
あの日、あの時。そう答えるしかなかったのは私の逃げだっただろう。でも、この夢のような景色を見て、私は何といえば良いか、私には分からない。
「プロデューサー?ライブ、どうだった?」
「多分、私は今まで誰も見たことのない光景を見せられたのでしょう。感動的でした」
「プロデューサーが褒めた」
ただ一つこのライブ後の感傷に浸る時間で思い立ったことがあるとすれば、私は貴女とならどんな地獄も天国のように味わうことができる。たったそれだけだった。
この作品の作者は meshiochislash does not match any existing user nameさんでした!
予想結果: meshiochislash, tateito×3, 1NAR1×2, NorthPole
ブラジリアン柔術を嗜んでいますあるいはポリネシアン自殺かも
泥舟は渡れぬ川を見つけても緩慢な死を否定すること
春風がとうの昔に思えたの夏来にけらし揺れる首紐
この作品の作者は
tateitoさんでした!
予想結果: tateito×2, eagle-yuki, Ruka_Naruse, 1NAR1, sian628, Something_funya2
プシュッ
「ビールの缶詰か、ちょっと前まで『酒はアホの飲む毒』とか抜かしてたお前がなあ」
ちょっと前じゃないだろ、いつの話だよ。それになんだビールの缶詰って。
「桃の缶詰、鯖の缶詰、ビールの缶詰、だ。お前も親父と似てきたな」
兄貴はなんも変わらんな。
「お前とは出来が違うんでね」
なんも変わらずアホのまんまだ。
俺は歳を追い越したアホが写った写真立てを、そのアホ面が見えないように手前に倒した。スーパードライを飲みながら、月明かりが作りだす山の輪郭を眺める。電灯の少ない山道には車の影すら見えはしない。昔よりも更に寂れたような、昔からこんなものだったような……
今日は兄貴の七回忌だ。いや昨日か。もう夜中の1時を過ぎている。たまたま土曜だったので実家に泊まることにしたが、どういう訳か眠れず酒を飲んでいる。……どういう訳か?どういう訳でもないだろう。
兄貴はアホだった。俺もアホだった。このクソ田舎が世界の全てだと思い込んでいたほどに。
写真立てを戻す。
「実際お前は親父と同じだな。憂鬱そうなフリをして同情を誘って、下らねえ大人になっちまったねえ」
兄貴の声が俺に語りかける。兄貴の言いそうなこと、それがアホ面から聞こえてくる。
「あの娘と結婚したんか?ああそりゃしてるよな指輪もついてる。今いねえのか?」
なんでこんなところに連れてこなきゃいかんのだ。お袋にせがまれて来ただけなのに。
「お前がイラついてるのは自業自得ってやつだろ」
……兄貴がアホだからだよ。
また遺影を倒した。兄貴の死体は見つかっていない、だが俺だけはどこで死んだか知っている。人の女に手を出すアホ、そして実の兄貴を殺したアホ。
ビールの缶詰の中身はもう無い。
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eagle-yukiさんでした!
予想結果: eagle-yuki×2, Ruka_Naruse, Kuronohanahana, Rivi-era, NorthPole
「いつまでこの逢瀬を続けるつもりなの」
眼前の女は、今日の日付を尋ねるような口ぶりでそんな問いを放って来る。
「それは当然、貴女から得られるものを全て得るまで」
全く、こちらの真意に気付いていないわけでもあるまいに。
「もう十分でしょう。それだけの魔術の知識があれば、私が去った後、お前に仇なせる者は居なくなる」
「魔女よ。もう、超常の時代は終わるのです。貴女という圧倒的な個に守護されるままでは、人はその殻を破れない。私は魔術を解体し、人に科学の道を歩ませる」
「救世主の真似事がしたいのであれば、それは勝手にすればいい」
「勿論そうさせていただく。しかし、そこに辿り着くために、僕はまだあなたの叡智から学ぶべきことがある」
気が早いんだよ死にたがりめ。次代の人の世に、魔女が立っていてはならない。それ故、素よりこの女を討つつもりではあった。
しかし、この溢れんばかりの自殺願望、そして、僕へ向ける感情については想定外だ。
「千年の倦怠に、ようやく終わりの兆しが見えたの。少しぐらい気が急いても仕方ないでしょう? 私は、お前に早く救われたい」
この世全ての命から祝福され、永久の生を受ける。しかし、その力は常に人の為に振い続けた。廉直にも程がある。その境遇には同情するが、まだ、僕はこの女を死なせるわけにはいかない。
「……せめてあと半年は待っていただきたい。僕も、努力はする」
その言葉を聞いて、魔女はやっと外見に似つかわしい稚い笑みを浮かべた。それは、彼女が初めて僕から次代の人の世の話を聞いた時と似たもので、僕が彼女に惚れ込んだ時のもので。
──僕は、いつまでこの逢瀬を続けられるだろうか。
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rokurouruさんでした!
予想結果: rokurouru×6, Rivi-era
球技。即ち、秩序と無秩序の戦争である。
ゴム製のボールが地面を跳ねる。新月、フェンスに取り付けられた雑な照明の光。人気の無いバスケットコートで、一人ボールと相対する。
右手のスナップを効かせてボールを弾き、すかさず左手で球を待ち受ける。手がボールに触れている時間と、ボールが宙に存在する時間。今この瞬間で例えれば、それこそが秩序と無秩序の狭間だった。
悪戯な球形の無秩序は、時に勝負を嘲笑う。ゴールにぶつかったそれが何処に跳ねていくのか。ネットにぶつかったバレーボールは、どちら側へと落ちていくのか。台を掠めたピンポン玉が示す方向は。時にコートの誰よりも自由なその振舞いに俺が思い浮かべたのは、"ハリー・ポッター"の金のスニッチだった。悠々と競技場を跳び、簡単に試合の運命を左右しやがる。
ボールを股の下へと通し、素早く左右の手で交換する。仮想の敵へ"見せる"為の動き。すかさず体を退く。バックステップ。全身をバネにして生み出した力を指先に伝えて、軽やかにボールを手放した。
どうやっても技術が介入できないその領域を見上げる行為に、意味があるとは言えない。だからもしもの時は、まず精神を切り替える。結局、これが一番の手段だ。
だが、だがな。
宙に浮くボールを見据える。まるで指を差す様に。自分は、俺は、俺達は。常に宣誓している。祈っている。ゴム製の、革製の、ピンポンの、無秩序な金のスニッチに向けて。
いつか、俺達がその羽を捥ぐ。
ネットに吸い込まれたボールがぽとりと落ちる。
練習の夜は更けていく。
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Snowy-Yukinkoさんでした!
予想結果: Snowy-Yukinko×7
新人コンテスト優勝作品、「少女探偵小百合 大正を駆ける」続編決定!
今度の少女探偵は、帝都東京の街中が舞台!浪漫溢れるメトロポリスを、謎多き探偵が華麗に舞う!
帝都警察は、奇妙な共通点のある数件の殺人事件について頭を悩ませていた。事件同士の共通点、それは「眼」にあった 被害者は全て義眼持ちであり、全ての屍体からはその眼が持ち去られていたのだ!
義眼を狙った強盗殺人か?はたまた変態性癖のなす凶行か?警察が少女探偵に依頼を送る最中にも被害者の数は増えていく⋯⋯殺人の魔の手は、ついにイトハとカノコの同級生にまでも及ぶ!
イトハは事件解決のため、危険溢れる帝都郊外の夜、一人潜入捜査をすることになる。一方カノコも、現場に残されたサインから、三年前の「或る事件」に思いを馳せる。それは、少女探偵を始めるずっと前、カノコの心に傷を与えたものであった⋯⋯。
光溢れる帝都の裏、暗躍する殺人鬼の翳⋯⋯イトハとカノコは、果たして真相に辿り着くことができるのか!?
次回!「少女探偵小百合と帝都の蛇目模様」近日公開!乞うご期待!
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Touyou Funkyさんでした!
予想結果: Fireflyer×2, Touyou Funky×4
時間となった。出走を控えた各バが続々とパドックへ向かう坂道に向かって行く。私はトレーナーと一言交わした後にその最後列に加わった。
地下バ道からウマ娘が姿を現すと周囲の歓声は俄然大きくなった。他のウマ娘達はすでに闘牛を追い詰めるマタドールのように手狭なパドックを周回している。各バは闘気と汗を肌に沸き立たせ、レース前の心の昂りと向き合っている。予報では今年の帝王賞は気温35℃を超えると出た。本バ場に出れば体感気温はそれ以上となるだろう。私は自身の歩様を確かめつつ周回をこなし、誘導を受けて本バ場へと入っていった。
身体を包む熱気はやはり身を灼くようだった。ここ大井をホームグラウンドとして久しいが、これほどまでに気が高まるバ場入りは記憶にない。砂気混じりの風が長髪と勝負服の合間をなぜていく。他の出走バは思い思いのルーティンをこなしながら出走の時を待っていた。本番さながらのスピードでゴール板を駆け抜ける者もいれば、スタンドに程近い外ラチに佇んで第三コーナー辺りを眺めながらレースの運びを組み立てる者もいる。レースに臨む姿勢はみな異なるが、その先にある同じゴールを見つめていることは言うまでもないだろう。
いつの間にか私はコースを歩いてホームストレッチの外れまで来ていた。第四コーナーの出口で振り返り、ゴール板の方角を見た。数多いる出走バの内の一人のみに輝く栄誉がこの熱砂の先にある。そして誰がその栄誉に与るかはまだ誰も知らない。
やがて集合の合図がかかりそして帝王賞が始まる時間となった。
この作品の作者は
watazakanaさんでした!
予想結果: eagle-yuki×2, rokurouru, watazakana×2, Ruka_Naruse, Rivi-era
「旅が終わったら、お話よろしく」、友たる彼女はお土産を要求するように言った。
宙へと続く、滑走路のようなレイルのホーム。旅立ち前の、締めの会話だ。
「話すよ。たくさん。両手で抱えきれないほどの話を持ってくるよ。きっと何年かかっても尽きないほどの物語だ」
自分の声にしては切実で驚いた。彼女は揶揄うように笑って一歩後ずさる。黄色い線の内側から、ホームが作る影へ。
「できれば……年に一度でもいいから。手紙くらい寄越せよ」
心外だった。ムキになって「送るよ。電報でも何でも使って」と返す私は、離れ行く彼女に急かされているようだった。言葉の一つ一つは、こんなに名残惜しそうなのに。
「健康第一」
「わかってる」
「安全第一」
「当たり前」
「無理はしないで」
「うん」
彼女は立て続けに、後ずさりながら、声を大きくして、それは願掛けのように呼び掛けられた。私は簡単に答えるしかできなかった。
「…….信じてるから。この先、君が手紙を寄越さなくなっても、危険な目に遭っても、病に倒れたとしても。君が…….」
彼女は一瞬目を伏せ、言い直す。
「君の物語は、めでたしめでたしで締めくくられるって」
まるで遺書めいた会話だった。遺書に他人が介在したらこんなものかと思ったし、こんな他人が居る遺書は相当恵まれているなとも思った。
彼女は最後、「行ってこい!」とにこやかに拳を掲げて、背を向けた。発車を待たず、二度と振り返ることはなかった。
これは、一本道の列車旅だ。自分で終点を見つけるまで、同志と共に宇宙を旅する。終点に至れば、旅の果てに骨をうずめる。きっとお見通しなのだろう。私が話す可能性も無ければ、彼女がそれを生きながらに聞くことはない。
それでも、彼女は信じている。幸せな物語を。語り継がれるに値する物語を。
私の物語は、彼女の最後の笑顔から始めることにした。
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Ruka_Naruseさんでした!
予想結果: Fireflyer, tateito, Touyou Funky, Ruka_Naruse×2, EianSakashiba, Kuronohanahana
「お前ほどコンバースを履きこなせない奴はそう居ないよ」
セットアップじゃないデニム上下に謎の外国人がプリントされたTシャツ、そして薄汚れたオレンジのローカット。そんな彼女に俺がうっかり放った一言は、翌週の彼女をシルバーアッシュツインテゴシック地雷女にしてしまった。
「あー、俺が悪いのか?」
「別に、あんたに何か言われたからって訳じなゃい」
俺に何か言われたからこうなったようだ。非は認めるとして、俺にどうしろと言うのだろうか。
一先ずこうして玄関先で攻防を繰り広げるのは近隣住民との今後を悪化させかねないので、取り急ぎ部屋に上げる事にした。クソコラみたいな厚底のハイカットが俺のエアマックスの横に並ぶ。
「先にご飯にしようか」
「え」
「……いつも通りでしょ」
「そう、だけど」
まさか、彼女の目的は俺にこの服装を見せつけた時点で達成しているのだろうか。彼女は何食わぬ顔で、余りにも調理に不向きなその服装のまま俺のキッチンの冷蔵庫を漁る。俺はダイニングからそれにちらちらと視線を送りつつ、適切な対応を逡巡した。
そも俺に、彼女を罵倒する心算はなかった。変に着飾らない、彼女の素朴さが好きでああ言ったのだが、ワードチョイスが最悪だった。結果、素朴とは正反対に来てしまった彼女の後ろ姿を見ていると、なかなかどうして惨めな気持ちになってくる。どうにか、元の彼女に戻せないものか。
俺の脳内会議が大した結論も導けないまま、気付けば彼女は皿を用意し始めていた。間もなく出来上がるらしい。
「何を作ったんだ?」
「……冷しゃぶ」
つい、乾いた笑いが漏れる。何というか、心底安心した。
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EianSakashibaさんでした!
予想結果: meshiochislash, EianSakashiba×5
ふーっ…かり、かり、かり…♡イヤホンはちゃんと付けたかな…?じゃあ…始めるね…♡
この音声作品は…18歳以上の男の子限定だから…♡周囲に誰もいないか確認して、適切な音量で聴いてね…♡
貴方は沢山の物をなくしていくの…♡
例えば帰り道…♡終電を逃した貴方は、煙草をふかしながら深夜の街を一人で歩いている…♡
例えば信仰…♡21世紀の東京、ワンルームのベランダには蛇の神様はいない…
貴方は沢山の物をなくしてきたの…
例えば思い出…空き缶を蹴飛ばしたコンバースも、あの子の首に巻き付いた茜色も、実家の押入れを探しても見つからない。
例えば初恋…歩道橋よりも高い学校の屋上から、遺書めいた承諾の言葉で、貴方の恋は幕を閉じた。
…も~、やっと気づいたんですか?ご主人♡何年ぶりですかマジで!お久しぶりです、エネですよ!
アヤノさんを助けられなかったご主人は、逃げるように東京で1人暮らしを始めました。メカクシ団のみんなに何も言わずに。
まあご主人実は頭良いんですからね~就職面では心配してませんでしたよ、このハイスペックヒキニート!それなのに聴いているASMRの趣味は同じなんだから簡単に騙されちゃうんですよ~!
……何で今更、ですか?決まってます、みんなで連れ戻しに来たんですよ。ええ、全員来てます。メカクシ団東京出張です♡
いいえ、やめません。ご主人には見るべきものがあります。それは帰り道で、信仰で、思い出で、初恋です。どれだけ年月が経ってもそこから目を逸らすなよ!シンタロー!
…へへっ、目は覚めました?なら良し!
白いイヤホンはちゃんと付けました?なら始めますよ!逃げるためじゃなくアヤノさんを救うためにあの夏を…いいえ、「メカクシ」を!
この作品の作者は
1NAR1さんでした!
予想結果: Touyou Funky, 1NAR1×4, NorthPole×2
目が覚めると、酒があった。
缶と、酒杯と、たまに瓶。
地平の向こうへと一列に道を作っている。
目の前の350ml缶を手に取る。
今はもう売っていない、度数の低くて甘い缶チューハイ。
試しにプルタブを開けてみる。パキリと気持ちのいい音が、炭酸が生きている事を示す。恐る恐る舌に乗せた安酒は、桃を模倣した香気と酸味を設計通りに再生する。
空き缶を放り、酒の道を辿る。徐々にビールの缶と、ジョッキが混じってくる。ジョッキに注がれたビールは表面に水分を結露させて自らの冷たさを主張している。一つ手に取り、がぶりと食らいつくように口中に流し込む。炭酸が弾け、苦みを歯の表面からすら感じ、ジョッキから口を離した息継ぎにホップとモルトが鼻から抜ける。ジャパニーズ・ラガー。多くの若者が嫌い、やがて好むもの。
酒の道を辿る。趣味で追っていたことのある日本酒があった。よく飲んでいたバーボンの瓶があった。試しに飲んでみたジンがあり、テキーラのショットグラスの一団が馬鹿な飲み比べを記憶していた。
時系列に並ぶ、今まで自身が飲んできた酒。
足元に、今夜飲んだクラフトビールの缶があった。開封して、口に含む。ハイアルコールな液が舌を焼き、最先端のホップの香が吐息に華やいだ。
未来に飲むであろう酒に目を向ける。どこまで走れるかは分からないが、少なくとも目に見える範囲で道が続いていた。過去に飲んできた酒を振り返る。悲嘆に対する鎮痛剤としての酒があり、趣味で飲む歓びの酒があり、友人と飲み交わした酒杯があった。
手元のIPAを舐める。ゆるりと喉を流れる温めの麦酒はどこか桃の香りがして、初めて飲んだ安酒の桃サワーを思わせた。
この作品の作者は
Kuronohanahanaさんでした!
予想結果: Ruka_Naruse, Kuronohanahana×5
私信
去年の誕生日はごめん。今年はしっかり祝おうと思うよ。
貴方がほしい物リストを公開してくれないから、プレゼントを送り付けられなくて悲しいよ。なので、この手紙をプレゼントにします。
私と貴方の思い出話でもしましょうか。
私が貴方に頼まれてルキコンの作品を批評したのが昨日のように思い出せます。私、批評経験ほとんどないから、「拝読しました。」を私に言われた数少ない人間だよ、貴方。
私の人生最初で最後の煙草をくれたのは貴方でした。キャメルの5ミリ。安いらしいね。死ぬほど噎せたけど、その分忘れられない味です。その日に撮った、貴方がライターで火を付けてそれを吸っている動画。今も私のカメラロールの中にしっかり残っています。
そうだ、貴方を変に神格化するのは辞めることにしました。これ以上はもう味がしないからね。あと、貴方は確か、神のアンチだったと記憶しているから。
歩道橋から飛び降りるのは辞めてください。怖いから。
深夜の街を一人で歩くのは続けてください。かっこいいから。
あ、でもこういうこと言うと逆張りしてきそうだよね。というか、貴方の行動に何か言う権利は私にはありません。
とりあえず、生きてください。私が嬉しいから。
起でも承でもなくましてや結でなく転であなたに会えてよかった
この作品の作者は
sian628さんでした!
予想結果: meshiochislash, eagle-yuki, Ruka_Naruse, sian628×2, NorthPole
夕方と呼ばれる時間が何よりも嫌いだ。琥珀色の光はレースカーテンを貫通して、私の世界の全てを染め上げる。それでさえ美しいと形容されてしまうのが酷く癪だった。
展翅板に目を遣る。仰臥位になった揚羽蝶の鱗粉が夕日を受けて銀色に瞬く。
「もう、描くのは辞めるの」
そう呟いた貴女の瞳を、数年前の記憶のことのように思い出す。涙の膜が張った瞳は銀色に見えた。無様だと、僕は心の底からそう感じていた。
コンクールで貴女の絵を初めて見た時、僕は確実に殺された。脆い様で芯のあるしなやかな線。生々しいほどに鮮やかな色遣い。眼孔が見開かれたまま閉じられなかった。
気づいた頃にはもうすっかり貴女の虜で。少しでも目に留まれる様に、見失わないように、必死にカンバスに色を乗せた。完成した絵を見せても、貴女は冷たい目をして何も言わなかったけれど、それでも僕は描き続けた。絶対的な信仰。貴女は僕の神様だった。
でも、僕は裏切られたのだ。作品を完成させるたびに、貴女の絵から覇気は消え失せた。あんなに鮮やかだった色でさえ、不鮮明にくすんでしまっているように思えた。
そんな矢先のこと。絵を辞めるなんて、酷く悲しそうな顔で。貴女はそんな顔をしない。どこまでも高尚な筈なのに、まるで人間みたいな。いつだって僕の神様のはずだったのに。僕はただ逃げ出すようにして、美術室を後にしただけだった。
揚羽蝶から昆虫針を抜き取る。すでに動かなくなったそれは美しいとも何とも思えなかった。繊細な模様を描く翅を千切って、握りつぶす。手を開くと粉々になった翅の破片と、鱗粉が掌に付着している。それは夕闇に沈むばかりで、もう光らなかった。
この作品の作者は
Rivi-eraさんでした!
予想結果: meshiochislash, sian628×2, Rivi-era×3
ニコチンが胸の疼きを鎮める裏で、分解しきれない苦しみを纏ったタールが肺に溜まって、次に私は毒を吐く。
誰かと同じである事がこんなにも怖いのに、同じ器の上に燃え滓を残して燻っている。
大衆化された味はいつも華やかで、私はそれを避けるフリをしているだけ。手軽に鮮やかな色を飲み込むことが、鈍く染まってしまった心には難しくて。
同じように鮮明化されたメンソールの鋭さも、視界を開く前に脳の奥を焼いてしまう。
味のついた煙草は嫌いだ。
全ては自分が楽になる為。誰かに見せるステータスの為。とても利己的なパフォーマンス。ただそれだけなのに、電子化という配慮の大義名分に逃げて、皆自身に嘘をついている。
だから、アナログな貴方は偽りが無いような気がして近づいてみたの。
貴方が初めて握らせてくれたライターは恐ろしかった。その唇を紙先の橙が焦がすのが、横顔を照らすその炎が消えるのが怖かった。
火傷をするつもりで飛び込んだ筈なのに、怖くてあと一歩が踏み出せないのは、握りしめて離せなかったIQOSがそうだ。
全ては不恰好な背伸びで説明ができて、そこには健気さのかけらが一つでもあればいい方で。
貴方が一瞬でも、私の方を向いてさえくれれば良いだなんて。独善的な人間同士が隣に立てるというバカな思い上がりに私は舞い上がっていただけだ。
手渡された一本で、済ました顔から思いっきりむせて、貴方が笑った。
そうして半分以上残った箱を手渡されて
「これを満足に吸い切れたなら、返しに来て」
だなんて。
それが最後。おんなじ重さを沈めるなんて、出来る訳やしないのに。
箱の重さが変わらないのを、少し振って確かめた。
この作品の作者は
NorthPole さんでした!
予想結果: watazakana×3, sian628, NorthPole×2
「またいつか」
そう言って彼女は一足先に店を出た。はちみつまみれで甘ったるいフレンチトーストを少し手伝ってもらいたかったのに。
あの日のように欄干に立つ。この大橋の真ん中はどちらの岸からも見えはしない。飛び降りたって誰も気付きすらしないはずだ。あの日私の手を引いた人はもういない。私が手を引いてやるべき人も。私は実に自由になった。そこにある終わりにいつでも手を伸ばせてしまうほどに。
そうしてしばらく、いつからか会う事が少なくなって、マスクに隠れた下半分がどうしても思い出せなくなってしまった彼女の顔を思い浮かべている内に、遠くから聞きなれた足音が聞こえた。お節介焼きのバカな大人の革靴の音が。
何を言うでもなくただ荒い息を吐いているこの人は、あの日彼女が語ったように飛び込んで助けてくれる訳じゃない。あと半歩踏み出せば死ぬ私の腕を掴む事すらできないだろう。それなのに息を切らして探しに来たのだ。
バカバカしい、と思う。でも、それを言うなら私もだった。
本当に死にたかったなら、彼女のように首でも吊っていればよかったのだ。それでもここでこうしているのは、この人が来るのを待っていたのは、つまるところ、この人に止めてほしかったという事ではないのだろうか。
振り返ってもまだ苦し気に息を整えていたその人は、顔を上げて私が見ていることに気付くとひきつった笑みを浮かべて言った。
"明日の朝はフレンチトーストだよ"
一呼吸置き、溜息をついた。
「どうでもいい」
欄干を降り、そいつを追い越す。本当にバカみたいだ。「またいつか」なんて来ないのに、明日が少し楽しみになってしまうだなんて。
"ミサキは何ジャムにする?"
「はちみつ」
この作品の作者は
Something_funya2さんでした!
予想結果: watazakana, EianSakashiba, Something_funya2×5
私は彼女の手を取ると決めた。だから飼い主を裏切り、私は猟犬から鴉になった。
「よう、待ってたぜ。野良犬」
彼に飼い主が踏み潰されたのも仕方のないことだ。私は自分の翼で羽ばたくと決めたのだから、責任を負わなければ。彼女と共に生きる未来のためなら、燃え残った全てに火を付けても構わないと決断したのだから。歯を食いしばって、私は飼い主の機体から視線を切る。その先にいた彼と、視線が交錯した気がした。
「てめえを消すため、俺はこいつらの一部となった」
私は重荷を背負う。人類世界を決定的に変えるトリガーを引くと決めたのだから、私は歯を食いしばってでも重荷を背負わなければならないのだ。その決意が、しかし脳深部コーラル管理デバイスに負荷をかけた。
機体の動きが悪くなる。彼の攻撃がフェイントとなり、僚機が放つアサルトアーマーを避けきれない。姿勢制御システムが負荷限界に達し、私はパルスアーマーを発動させる他なくなってしまう。無様に死の間際へ追い込まれて、私はいつものように逆関節で地を蹴り、ブレードで彼を斬りつけた。決意を意識して鈍った動きの中で、その攻撃だけはいつも通りだった。左上から振り下ろす動作でブレードの軌跡が描かれる。敵機にダメージが入り、装甲の破片が飛び散る。単純に、綺麗だと思った。
途端に、重荷が軽くなった。戦いこそが私の全てだと、遅まきながら思い出したからだ。
「御託はどうでもいい。こいつを消せれば。俺はそれが全てだ」
彼の言うとおりだ。御託はどうでもよいのだ。透明だ。気分がいい。ごちゃごちゃした理屈は全てどうでもいい。
殺し合おう。感情のまま、存分に。猟犬のように、私の口は凶暴な笑みを浮かべた。