第二回:700字文体シャッフル!
投票募集中!
テーマ:火
参加方法:meshiochislashのTwitterかDiscordのdm、wikidotのpmに700字以下の短編を投げる。投稿制限なし。
参加資格:SCP-JPに著者ページもしくは自作taleがあり、AIでなく、作品に最低限の社会性がある。
Q.文体シャッフルって?
A.みんなで匿名で文書いて、それを誰が書いたか当てる企画です!だから何書いたかいうなよ!
Q.期間短くね?
A.ああ!
Q.過去作は?
A.下記リンクから文体シャッフルハブに飛べます!
Q.構文は?
A.by ukwhatn。偉大なる御大に感謝。
Hoojiro_san
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著者ページ
hallwayman
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著作
hannyahara
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著者ページ
Kuronohanahana
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著者ページ
Matcha tiramisu
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著作
meshiochislash
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著者ページ
2MeterScale
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著者ページ
EveningRose
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著者ページ
islandsmaster
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著者ページ
Musibu-wakaru
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著者ページ
stengan774
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著者ページ
景品について
思ったよりみんな当てにきてくれなくて寂しいので、今回最も多く当てた方には景品として僕を批評にこき使える権利を差し上げます。この企画終了後1回まで、DMで言っていただければmeshiochislashの全力批評の手をお貸しします。よろ!
投票締め切り
投票締め切りは8/14の適当な時間です。多分23:00とかそのへん。
No.1:
No.2:
No.3:
No.4:
No.5:
No.6:
No.7:
No.8:
No.9:
No.10:
No.11:
No.12:
No.13:
No.14:
No.15:
No.16:
No.17:
No.18:
No.19:
No.20:
No.21:
No.22:
No.23:
No.24:
投票方法: 上記のテンプレートを使って僕のdmに送ってきてください! 全部埋めなくてもいいです
- No.1
- No.2
- No.3
- No.4
- No.5
- No.6
- No.7
- No.8
- No.9
- No.10
- No.11
- No.12
- No.13
- No.14
- No.15
- No.16
- No.17
- No.18
- No.19
- No.20
- No.21
- No.22
- No.23
- No.24
author:dr_toraya
musibu_wakaru shinogun yanyan1
私はあなたのあなたが肉を入れた鍋を見つめる、あなたを見つめる。
火はちろちろと燃え、鍋はくつくつと煮える。
あなたはあなたは私に、くつくつと煮えるのを待つ、この時間が好きと言ったと笑った。でも私はもっとあなたの私の肉から染み出した油と、ニンニクの香りに満足して笑う顔に笑う顔が好きだった。油が跳ねる。あなたが私をあなたはキッチンを油で汚さないで、と叱ったことを思い出した、私は。私は、今でもキッチンを汚さず使えないが私はあなたが私が掃除をすることで納得あるいはあきらめたようでほっとしていた。
ちろちろと火は燃え、くつくつと鍋は煮える。
私はあなたの鍋をそろそろいいかなと次の鍋に交換する。長い箸でつついてみる。肉は骨がほろりと落ちるほどに柔らかい。あなたの顔は、もはやとろけている。私は、丁寧にその骨を取り出し、砕く。原型をとどめぬほど執拗に、砕いていく。ああ、もはや何の骨だったのかもわかるまい。あなたはもうこのキッチンにいない。
鍋はくつくつとちろちろと燃える火に煮える。
私は火を強め、最後の仕上げに取り掛かる。私は鍋からあなたの肉を取り、野菜とともに皿へバランスよく盛り付けた。
私はカウンター越しに言った、テーブルにつくのが早いよ。もう待ちきれなくて、と言い、あなたはワインを開けた。テーブルにチキンのアヒージョとパンを並べる。骨出汁スープは明日のお楽しみだ。あなたはうひひと笑い、続けて、キッチンで酒飲みながら日記を口述筆記するのはやめろと、私に言った。
オッケーグーグル、記録終了。
author:islandsmaster
islandsmaster×2 Owlcat
大晦日である。夜陰は広く、冷たく締まっている。
鎮守の森に月光は届かない。私は闇に沈む参道を歩く。不意に視界が茜色に開け、音と気配とが私を叩く。
大鳥居の向こうに篝火が聳えている。組木はとうに崩れ落ち、積み薪は既に腰ほどの高さ。それでも炎は背高く伸び上がり、森の中でそこだけが開けた空に、橙の吐息を吹き出している。
それはひどく崇高なものに思え、私は暫し呆然と炎を眺めた。意を決して近づけば、熱風が私の頬を弾く。櫓番の老人が手で合図し、私は持参した包みを投げ入れる。私の細腕では力が足りず、包みは穴の縁に落ち、煙が小さく立ち上った。
櫓番がゆっくりと近づいてくる。
「何投げた?」
「達磨とお守りを」
「なんか叶ったかよ」
「娘が生まれました」
「そぉーか」
頷きと共に差し出された竹棒を受け取ると、老人が餅を刺していく。青竹の先に角餅が3つ。
「食わせろ。風邪引かんぞ」
「まだ食べられませんよ」
「嫁に2人分だよ」
来年は皆で来い、と皺だらけの顔に笑みが浮かぶ。私は当惑して頭を掻く。礼を言おうと視線を戻したときには、老人は踵を返している。
首を振り、それから腰を下ろして、私は餅を篝火にかざした。じりじりと餅が膨れ、私の顔も熱されていく。堪らず私は目を閉じる。
数秒後にはばきりと音がし、竹の穂先が燃え始めた。私は慌てて棒を引き、手水場の水に焦げた餅を浸す。篝火はいっそう吠え猛り、天に届けとばかりに火の粉を吹き上げる。
一年の終わりを告げる炎。神事など絶えて久しい社に、人々が集まる唯一の日。
それに感慨を覚えるより先に、遠方より除夜の鐘が厳かに響き、夜の深まりを私に告げる。
大晦日である。餅はまだ暖かい。
私は慌てて帰途につく。
author:k-cal
k-cal×2 shinogun
手持ち花火の束から一本を取り出して火をつける。一瞬鮮やかに輝いたそれに目を細めて、その輝きを、水でいっぱいのバケツに沈めた。
兄が消えてもう長い時間が経った。家族も彼の死を受け入れられるほどに。それでも私は、この季節になると兄を思い出す。
少し靄がかった日の夕暮れだった。祖母の家を訪れていた私と兄は、近くの河原で祖母からもらった花火をしようとしていた。道中の荷物はすべて彼が持ってくれた。
私が蝋燭の準備をしているとき、あっ、と声が聞こえた。振り返ると、兄が川に流されていくところだった。バケツに水を汲もうとして、足を滑らせたようだった。幼い私は何もできず、兄は靄の向こうに薄れていった。
結局、兄は数週間後まで見つからなかった。その遺体も、私は見ていない。子供に見せられる姿ではなかったのだろう。
流れていく兄の姿を思い出しながら、また花火を取り出して、火をつけ、水に沈める。
水に沈められた瞬間、花火は急速に色彩を失って、代わりにぶくぶくと、激しく無数の泡を吐き出しはじめる。苦痛を訴えるように。助けを求めるように。
その泡が弾けるたびに、水面には煙が溜まっていき、やがて小さな光は隠されてしまう。そうしてすぐに、音も消えた。
兄も、きっとこうやって消えていった。一人、誰にも見つけてもらえずに。だから私は、せめてこうして、兄の最後を知ろうとする。そうして、兄の死に寄り添おうとしている。
だけども、今年もわからないままだった。私は未だに無力で、それなのに何かしたくて、また花火をバケツに沈める。
沈める。沈める。花火の束がなくなる。
煙の晴れたバケツの水底には、無数の兄の死体。
author:musibu_wakaru
shinogun hannyahara ashimine
親父はみっともない男だった。
家にろくすっぽ金も入れず、毎日毎日どこかをふらつき、帰ってきたと思えば悪態をつきながら酒をあおる。俺は幼かったが、それでも「あれにはなりたくない」、そう心の底から思っていた。
いつだったか、その親父が俺に言ってきたことがある。あの時の親父はやけに機嫌がよかった。
「俺ァ火が嫌いだ……火を見るとな、昔を思い出すんだ、昔をよ……昔はな、バイクで夜中に走り回ったり、大声で笑って。それだけで楽しかった……俺ァな、タバコを一人で吸ったことがなかった。俺がタバコを咥えりゃァな、そん時付き合ってた女が火ィつけてくれたんだ……今ァ……違ぇ。俺に火ィ、くれる奴なんて、いねぇんだ。だから火は嫌いだ……だがな、俺ァタバコを吸うために火を使わなきゃいけねえ。分かるかぁ?なァ、火ィつける時の俺の気持ちがよォ……」
半ば泣き言のような親父のその言葉は、親父が初めて発した自慢話のように聞こえた。
これは自嘲に見せた、武勇伝だ。そう思った。
俺は親父みたいな、自分の息子に薄汚れた自慢をするような人間にだけはなりたくなくて、そうならないように勉強も、スポーツも、バイトも必死こいてやってきた。
そんで、親父が死んだ。
親父が死んだら、なぜか自分の中に居座っていた親父も霧のように消えた。
親父がいなくなった心には、何も残っていなかった。
「なりたくないもの」ばかり見ていた俺には、「なりたいもの」なんてなかった。
あんなに頑張ったアレコレは、俺の心を燃やす燃料にならなかった。
ガスコンロの火で吸うタバコってのは不味いもんだ。
親父、俺も火が嫌いだよ。親父の顔、どんなだっけ。
author:matcha tiramisu
matcha tiramisu hoojiro_san dr_toraya
人気VTuber桃栗 柿八 Voyage!契約解除
大麻取締法違反、大麻栽培で懲役3年
💬73 8/11(木) 22:17配信
人気バーチャルYouTuber(VTuber)グループ「Voyage!」所属のVTuber「桃栗 柿八(ももくり かきや)」について11日、同タレントが大麻取締法違反により逮捕された事を運営会社が発表した。
チャンネル登録者数85万人超えの…[続きを読む]
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💬コメント 73件
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〔:-)〕guest user
信者湧いてて草
⇩返信3件 👍2 👎0
−−−−−
〔:-)〕guest user
どうせ転生して再犯するでしょ
⇩返信0件 👍13 👎6
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〔:-)〕guest user
かきやんを助ける署名を行います。
署名をお願いします。
⇩『かきやんを助ける会』署名ページ
__http://www.kakiyan.jq/gumi/help.html__
柿八組のみんなで、かきやんを救います。
かきやんが犯罪を犯すわけがないです。
かきやんはもっと柿八組を頼ってもいいんだよ?
柿八組はかきやんのためにあるんだから。
もう事務所も信じれません。
もう警察も信じれません。
柿八組がかきやんを救います。
僕たちがかきやんを救います。
もう我慢できないです。
⇩返信10件 👍15 👎36
−−−−−
〔:-)〕guest user
かきやん好きだったのになぁ
⇩返信0件 👍20 👎0
author:Owlcat
AKQJ10 hoojiro_san hannyahara
山田は学校一のバカで、変人だった。
ある日俺が通学路を歩いていると、山田が道で何かを見つめていた。
視線の先にはカエルの死骸。
そして山田はおもむろに手を動かし始める。
何をしているのかと声をかけようとしたその時、パッと赤い火が放たれた。
一瞬で燃え上がるカエルの死骸。山田はぼうっとしゃがむだけだった。
後から聞いた話では、その日は山田が初めて「火葬」を知った日だったらしい。
なんでも山田の祖母の葬式があったらしく、そこで「死体は燃やすもの」という学びを得たのだろう。
……とまあ、こんな感じの変人エピソードを山田は無数に持っているのだ。
だから山田を逮捕した時も何ら驚きは無かった。
裁判所の被告人席に座る山田は、やはりぼうっとしていた。
「主文。被告人を死刑に処す。」
途端に涙を流す被害者遺族に皆の視線が集中する中、俺はそっと山田の顔を覗き見ていた。
虚空を見つめているが、どこか満足げな山田。
あ、カエル燃やしてる時と一緒や。
ふと、得体のしれない感傷が俺の胸を刺した。
author:hallwayman
hallwayman tateito ashimine
海外での怖い話ではよくあるんですがね?
例えばヒンドゥー教徒がイスラム教徒の墓を荒らしたら祟りで呪われ、アラビア語を話すようになった、って感じの宗教的な背景を持つ話を怖がる人も海外ではいる訳です。
今から話す話はその類なんですが、ちょっと違くて。
わざとではなかったそうです。
アラブ系イスラエル人、イニシャルからA、と呼びます、は仕事で遅くなり猛スピードで街の裏路地を走らせていたそうです。
ですが無茶な運転のせいかエンストしてしまい、その場で立ち往生してしまったそうです。
そんな感じでストレスが溜まったAはタバコを吸いながら辺りを散策したんですが、ふと躓いて転んでしまったそうです。
軽い怪我をした手でスマホのライトを持ち当たりを見合すと、粉々に砕けた大きな板と箱の残骸らしき物に躓いてしまったと気が付いたそうです。
そしてそれがユダヤ教徒の墓石であると。自分のタバコが転んだ拍子で墓の中に入ってしまい、煙を上げていることも。
A個人は咄嗟にしまった、失礼な事をしたと思い慌てたものの、事前に頼んでいたレッカー車が近くまで来ていたのを見て一旦車を何とかして貰ったそうです。後日何とかしようと。
ですがその後になってその近辺を見渡しても墓らしき物は探し出せなかったそうで、代わりにこんな事になっていました。
كانت אֵשׁ صغ
يرة حقًا. أنت لا אֵשׁ تعتقد أن هذا سيحد ، أليسكذل אֵשׁ ك؟ يبدو أنه لا אֵשׁ يمكن فعل أي شيء بغض النظر כְּאֵב عمن تتحدث إليه. لا أس אֵשׁ تطيع أن أساعد חַם نفسي. يرجى אֵשׁ نفعل شيئا חַם حيا לָמוּת ل ذلك. يس אֵשׁ אֵשׁ אֵשׁ אֵשׁ אֵשׁ אֵשׁ اعد.
「本当に些細なこと火だったんだ。こんな事にな火るなんて思火わないだろ火?誰に相談火しても何も出来痛いないらしいんだ。自分で火も抑えら熱いれ無いんだ。何燃えとかして死ぬくれよ。助け火火火火火火て。」
author:kata_men
yanyan1×2 musibu_wakaru
もう5年前になるのかな、2つ下の妹を亡くしたんですよ。出かけている途中に大型車に撥ねられまして。
葬式の途中、棺の中の妹の顔を見たんですけど、とても綺麗だったんですよね。後から知ったんですけどエンバーマーでしたっけ?そういった職業の方が妹の体を綺麗にして下さったそうなんです。
あいつこんなにも綺麗なのに彼氏もろくにできないままなんで、とか色々考えてる内に火葬場に着いたんです。
妹の入った棺を火葬炉に運ぶ途中、そこのスタッフなのかな、小太りの男性が案内してくれたんです。ただ……なんと言いますか、妹の入った棺をよろしくない目で見ているというか、とにかく気持ちが悪かったんですよね。
色々思う所もありましたが納め式も終わり、妹が炉の中に入っていきまして。父が点火の釦を押す時間になったんです。
その時、ですかね。私炉の近くに居たんですけど、扉の中から「ぐふっ」と低い男性の声が聴こえたんです。
聞き間違いかなとは思ったんです。実際家族はそんな声知らないと言っていましたし。でも、それにしては嫌という程に頭に残ってしまいまして。
……その後は骨を拾い骨壷に入れました、今は家の墓に入っているはずです。
こんな事を言うのはおかしいかもしれません。私のいかれた妄想であってほしいのですが、あの骨壷に入っている骨、あれは本当に妹なんでしょうか?妹は何処に居るんでしょうか?
author:hasuma_S
hasuma_S matcha tiramisu
暗闇を背景に、パチパチと火の粉が跳ねる。跳ねた火の粉は、不規則に飛び、土に落ちる。落ちて、消える。私と彼女は、そこにいた。私は、目を伏せていた。彼女は、見つめていた。
私が彼女を見つけた頃には、既に日が沈みかけていた。私はしがない旅人であり、親切な村を出てきたばかりだった。──親切と言えば聞こえはいいが、貼り付けたような笑顔、客人向けの豪勢な食事、そして隅に追いやられ、見えなくなった何か。私は別にそれをどうにかしたいわけではない。だから、親切を親切のまま享受した。心以外の休息を取ったのだ。その帰路。地面に倒れた少女を見つけたのはその時だった。
彼女は、足枷と印を付けられていた。印は、見なくていいと言われた扉と同じ。汚れた衣服と、痩せ細り、傷だらけの身体。気づくと私は、見ずにいたはずのそれに手を差し伸べていた。彼女は何も喋らなかったが、私の言っていることはわかっているようだった。でも、私の複雑な笑みの意味はわからないようだった。
揺らめく灯が彼女の顔を橙に照らす。彼女の目は、意志は鈍く光っている。そろそろ、私は聞かなくてはならない。彼女の言葉を。
「貴女はどうしたい?生きたい?」
私は問う。彼女は小さく震え、衣服を強く掴む。そして、すぐに震えが止まり、彼女の目が私の方へ向く。瞳が揺れない火を映す。
「いきる。いきて、みんなを、たすける」
拙い言葉は、確かな意志を示した。木が崩れ、彼女の側に勢いを増した火が寄り添う。私がすることは一つ。荷物の中から、長く使っていなかった銃を取り出す。一度拾ったのなら、最後までやらなければならない。彼女の両手を取り、優しく、強く握る。私は火を見つめ直した。
author:shinogun
stengan774×3
ここまでのあらすじ
長江の向こうに美人の双子姉妹がいると聞いた曹操が大軍を率いて迫ってきた。劉備のよこした軍師・孔明からそれを聞いた周瑜、実は姉妹の片方を娶っていたので大慌て。ビビる孫権を説き伏せ軍を出し、なんか都合よく吹いてきた東南からの風に乗じて曹操軍の船団に火をつけた。大軍を運ぶ為に密集していた船同士であっという間に火が燃え広がり…
こちら見えますでしょうか?今、曹操軍の船団から激しい火と風が立ち上っていますね。もうしばらくすると将兵の魂が風に乗って天に召されていきますのでね、それまで一晩焼き続けてください。
その間に手薄になった荊州を攻め落とします。今回は収録なのであらかじめ攻め落としてありますが、皆さんはご自分でやっていただきますのでご注意を。こちらが攻め落とした地から帰順してきた黄忠と魏延になります。魏延は放っておくとその内反乱を起こしますのでこちらも気を付けて下さいー。
締めに巴蜀の地に侵攻して劉璋を降伏させれば完成となります。鳳雛が命を落とすことはあらかじめご確認ください。また、漢中から馬超が攻めてきますが、説得して味方に引き入れると非常に楽になります。
後は呂蒙が関羽を倒してこの均衡を崩さない内にお召し上がりくださいね。以上、天下三分の計でした。
レシピ(番組公式twitterでもご覧いただけます)
- 桃園の誓い - 一度
- 英雄 - 二人(曹操又は劉備。箸を落とさない様に気をつけて下さい)
- 関所 - 五か所
- 曹操の部下 - 六将
- 礼 - 三顧
- 長坂橋 - 張飛一人に対し曹操軍数千
- 矢 - 十万本
- 東南の風 - 一日
「魚の天下取りに潤いを。諸葛孔明の提供でお送りしました」
author:kuronohanahana
kuronohanahana×2 eveningrose
冬に初めて手を繋いだ時、少しひんやりしているな、と思ったのをよく覚えている。末端冷え性だという君の手は、確かに私の手と比べたら冷たくて、それが何だか寂しくて。温かくなるまでその手をゆっくり揉んであげた。
『手が冷たい人は心が温かい』なんてよく言うけれど、友人曰く私は手がめちゃくちゃ温かいらしくて、『じゃあ心が冷たいね!』なんて笑いあったりしたことがある。私は心が冷たいなんてことはないと思うし、そもそも手の温かさと心の温かさが関係あるわけもない。
でも、冷たい手の君は確かに温かい心を持っていることを、私はよく知っていて。その手が愛しかった。
最近君は煙草を吸うらしい。
ねぇ、煙草を吸うと血管が収縮して冷え性になるって、保健の授業で習ったことがあるよ。それ以上冷え性になってどうすんのさ。
とは言いつつも、私も最近煙草を吸うようになったのだけれど。
煙草に火を付けるとさ、ほら、なんだっけ。マッチ売りの少女みたいにさ、幻覚が見える気がするんだよね。私が今吸っているこの煙の向こう側に、君がいるような錯覚を覚えてしまうんだよ。そんなことないのにね。
確か、マッチ売りの少女は火の中に見た幻覚の中で死んでしまうんだよね。真冬の街の中で、身体を凍えさせて……。そこまで考えた時に、また君の冷え性が心配になった。ねぇ、やっぱり煙草やめない?
ううん。やっぱり、私が煙草やめようかな。君の手は私が温めるからさ。私が冷え性になったら意味無いものね。
最後にひと吸いして、私は携帯灰皿にまだ燻る火を押し付けた。
もう吸わないよ。多分ね。
author:ashimine
meshiochislash matcha tiramisu kata_men
ゴミ捨て場から拾ってきた水あめの缶の中で、着火剤に焚き付けられた火はいとも容易く燃え上がった。祐介は頃合いを見計らって、そこに紙の束を投げ入れる。
それは彼が書いた小説だ。もっとも世間一般では、その小説が「祐介によって書かれた」とは認知されていない。
彼はかつて小説家を目指していた。ペンネームは付けず「赤坂祐介」という自身の本名でウェブサイトに作品を投稿し、その名が知れ渡る日を待っていた。魂を削って書き並べた彼の物語に日が当たる時は、しかしいつまで経っても来なかった。「祐介」の小説はウェブサイトの読者の目に留まることはなく、評価の言葉が寄せられることもほぼなかった。
ある日祐介は気分転換に、「村雨馨」という名義で同サイトに小説を投稿してみた。現役女子高生が書いた(ことになってる)その小説は、多くの読者の注目を浴びた。作品を投稿する度「彼女」の元に読み切れない程の賛辞が寄せられ、やがて「馨」の名はサイトを代表する小説家として世間に知れ渡ることとなった。
彼が今やっているのは、「馨」の葬式だった。サイトに残る彼女の作品に何ら影響を与えることのない、まるで自己満足な行為。
Twitterを開く。「村雨馨」が「個人的な事情」で「引退を宣言した」旨の抒情的な発表が表示される。そこには万を超える反応が届いていた。
アカウントを切り替える。「赤坂祐介」が「末期癌」で「間も無く死を迎える」旨の淡々とした報告が表示された。そこにはごく少数の「いいね」と、「今までありがとう」「小説面白かったです」という、もっと少数のリプライが続いた。
「祐介」は目を閉じる。「馨」の小説は、既に灰となり缶の中で縮れていた。
author:eveningrose
eveningrose 2meterscale×2 Owlcat hallwayman
全ては火から始まった。
昼夜の界もない時の果て、母なる久遠の混沌より、一塊の火が立ち現れた。明転、そして酩酊ののち、煙を吐き、星を吐き、そして陽を吐き、地を吐いた。
百三十八億年の時を超え、その火は未だ全てに宿り衰えを知らぬ。皆を目覚めさせるのは何だ。あの薔薇を赤く染めたのは何だ。君の心臓を動かすのは何だ。全ては火であり、原初の慈愛である。
地は巡り昼夜を成し、血は巡り生命いのちとなる。生命は巡り地に還り、地はまた新たな君を育む。
生命危ぶまれどもなお、人は火を求める。かつて人造の天使は陽によって羽を失い地に抱かれた。陽の御者もまたそうである。竈門より盗まれた火を賜り、陽の無い刻を第二の昼としたのもまた人であった。火は眠りを忘れさせ、また求めさせもする。
この奇妙なフラクタルは何者をも捉えて離さない。知らないか、或いは忘れてしまっただけで、氷も影も音も鉄もまた火より生まれた。火より逃れる方法もまた火に宿る。眠りを求めた人々がみな冷たい火に身を委ねれば、生命は地を発たち混沌へ至る。
安寧、そして暗転ののち、全ては血となり終わるだろう。
author:mishary
mishary×3 tateito
今は昔の事だが、宣という国の宰相で閻利徳という人が居た。閻君は享楽にふけり、政を顧みず宴会ばかりしていた。庶民の困窮をよそに私腹を肥やし、その邸宅の園庭の華美絢爛たることは東西に比類なかったので、人々は紂王の沙丘に例え嘆いていた。
ある時癸某という者が出て、西方に伝わる舞衣の製法を知っていると言った。閻君は常に新たな趣向を欲していたから、癸に金を与えてこれを数十作らせた。
数月ほど経って癸の献上した舞衣を観れば、五色の絹が羽衣のようにあしらわれている。その上に金属の小札が数多吊られ、すり合う音は鳳声の如き雅情である。
ただ舞わせるだけでも華麗であるが、癸の言うところによれば、それでは舞衣の美しさを十分に発揮できてはいない。ではどうすれば良いのかと問うと、衣に火を付けるのだと言う。
試しに火にくべてみれば、焔が五色鮮やかに色を変える。では踊る舞姫を火にかけてみると、火の熱さに身を燻らせるから、炎の衣もさまざまに姿を変え、色と形が同じになることはない。天女の装束もかほど美しくはないだろうと閻君は多いに喜び、癸に金子を与えた。
それから閻君は毎夜この火の舞衣を用いて踊らせた。雨が降ると火が消えてしまうので、屋根付きの宴台を設けてそこで舞わせた。一人舞わせるよりも多数舞わせる方が様々な炎衣を観られるので、一度に舞う人数は毎夜増えていった。
ある夜、数十ばかりの舞姫に踊らせていると、風が吹いて炎衣が舞った。炎衣は宴台の屋根に掛かってこれを燃やし、瞬く間に広がって閻君らを焼いた。数日ばかり、閻邸は虹の如く燃え続けたという。世の人は閻君の享楽極まって閻君を焼いたと噂した。
author:AMADAI
AMADAI×2 santou
火が好きだ。落ち着くから。パチパチと物が弾ける音、揺らめく灯りを見ていると、悩んでいた事がどうでも良くなっていく。何千年も前からこうして、火は人の心を照らしていたんだな──
そんなことを考える暇すら与えてくれないほど、俺の家は激しく燃えていた。どうしよう。全く落ち着かない。むしろかなり焦ってる。これ大丈夫か?いや全然大丈夫じゃないよな。取り敢えず通帳と判子は持ってきたけど……
全焼。原因は放火だった。何らかの苛立ちで火を放ったのか?いやそうならその原因に火を放ってくれ。なんで俺の家なんだ。そうじゃないとしたら……いや、罪を犯した人の気持ちなんて分からない。分かりたくもない──前の家よりも遥かに小さくなったアパートの一室で、男は嘆いていた。
ある日のニュース。男の家以外にも近隣の家数軒を焼いた火事は、ニュースで取り上げられた。犯人の供述はこうだった。
『火を見てると心が落ち着くから、近くの家に火を放ちました』
author:yanyan1
AKQJ10 kuronohanahana dr_toraya
燃えている。今、彼女の体は燃えているのだ。それは比喩でもなければ何かの暗喩でもない。正に、嘗てはその美貌で多くの異性を誑かし、その光景を目の当たりにしている彼すらをも翻弄していたあの美しかった肢体は、オレンジと紅色の混ざりあうグラデーションを持つ揺らぎの中で直立し、あの白く艶やかだった肌も炭とただれ崩れ落ちていくだけの死滅細胞へと置換されていく。
薬の入った瓶が割れ、中の液体が辺り一面に飛散したあの瞬間に、それらは瞬く間に薄い水色を纏いながら床を走り、見る見ると彼女の体に纏わりついていった。
彼女と幾度となく体を重ねた彼である。その紅蓮の広がり方はまるで、あの日の夜に行使した彼の手の平その物だ。そっと指をなぞる毎に、彼女はその身を仰け反らせた。嬌声が部屋に木霊し、あの鈴のような声は今でも記憶に新しい。
ああ、何という事だ。私は何という事をしてしまったのだ。
男は突如膝から崩れ落ち、その後悔の念に苛まれながらもただただ、今も煌々とした烈火につつまれて尚、かの出で立ちそのままに立ち尽くす彼女を見つめている。
彼女の匂いが鼻腔を擽る。しかし、それはあの夜に嗅いだ香水と入浴剤の混じった物とは異なり、やはり煤と肉の焼ける、彼の快楽に満ちていた記憶を上書きしていくのに十分な「食欲」による侵略を可能にしている。ああ、そうか。そうなのか。君は今も、その気高い心と美を体現する振る舞いで、この様な私の犯してしまった罪に覆われてしまったとしても、そんなにも変わらぬ形で立ち続けているのか。
彼は、燃える彼女の姿に心を打たれながら暖かい涙を流し、真の意味での感動を覚えたのだ。
窓ガラスが弾け、柱も崩れる。今、終わる。
author:hoojiro_san
kata_men hallwayman tateito
『火葬:ヒト(学名 : Homo sapiens)の死体を焼却する工程に意義を見出した儀式』
火葬に関する知識は、それ以上でもそれ以下でも無い。自我や感情は単語の意味を深めないから。
感情の読み取れない主人の隣で過ごす時間は、ひどく退屈であった。超高温の燃焼反応すら無音の中で、無機質な静寂だけが時間を腐らせる。
体毛、皮膚、筋肉、内臓、骨骼、血液。なにもかも手付かずのまま。リサイクルさえされず、綺麗にされて燃やされるだけ。勿体ない。無駄。
「死体を燃やす事にどんな意味があるのでしょうか?」
マネキンを思わせる無表情を崩さない彼に問う。遠くを見つめたまま、どこかを見据えて。
「逆に君は死体を燃やす意味って何だと思う?」
「体積の大幅な減少に伴う保管の利便化でしょうか」
「そうだね。君と違って人間を燃やしても数十キロの金属塊も残らないし、有毒ガスも多くは出ない。残るのはリンとカルシウムが2~3キロで実にクリーンだ」
意気揚々と知識を綻ばせる姿に普段の面影を思い出す。すべて既存の情報でも関係なく音声記録装置は稼働する。
「でも主な理由じゃない。残った灰を見て、死を受容れるんだ」
それですべてが終わるんだ。ゆっくり骨壺を抱え、空いた左手の絡む力は普段の68%だった。
author:AKQJ10
AMADAI meshiochislash Owlcat
息苦しい。動悸がする。吐き気がする。夢見たはずの甲子園のマウンドを、俺は降りたくてたまらなかった。
本来ならここに立っているのは清水のはずだった。清水はうちのエースで、優れた制球力とスライダーが武器。そのプレイスタイルと、何があっても滅多に表情を変えることがないところから「精密機械」なんて渾名で呼ばれることもあった。
あいつがいる限り俺は常に2番手だったから、「清水なんていなければよかった」とか思うことも多々あった。だが、俺が3年間腐らずに野球を続けられたのは、身近に清水というライバルがいたからだ。いつか清水から実力でエースの座を奪い取るのだと、俺はずっと思っていた。
しかし、清水の肘は知らず知らずのうちに限界を迎えていた。
こんな形でエースの座に就くことに対する葛藤が、投げる球にも映し出されていた。一回表なのに、気付けば無死満塁。
ふと、一塁側の自陣ベンチへ目を遣る。心配そうにこちらを見るチームメイトや監督。そして、一番悔しいはずなのに、いつもと変わらぬ表情の清水。
ああ、そうだよな。
淀んだ流れをリセットするべく、大きく深呼吸。蒸し暑い空気が肺を満たすと、さっきまで感じていた息苦しさが引いていった。
そこで見てろよ、清水。お前がいなくてもやれるところを見せつけてやる。
そんな思いで放った渾身のスライダーは、果たしてキャッチャーミットへ収まることはなかった。
甲高い音が、澄んだ青空へ白い軌跡を描いて飛んで行った。角度も勢いも完璧だ。俺は申し訳ない思いで左側へ目を向ける。
……精密機械が笑えるぜ、清水。泣きたいのはこっちだよ。甲子園にコールドは無いのによ。
ほんと、清水なんて、いなければよかったのに。
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2meterscale×3 k-cal
「あなたは、どうしてこんなところに?」
足元には死体が一つ転がっている。ぼくが作ったものだ。片手に弾のこもった銃を持ったまま、ぼくは目の前の男に問いかけた。ハワイから直接このテキサスの端っこまで来たような風体の男だ。緑の目が腐った海めいて気味が悪い。
男はぼくが一仕事終えたあと、なんの脈絡もなく、このメキシコとの国境も近いサルーンにやってきた。そして煙草を咥え、体中を漁っていた。ぼくはライターなどもちろん持っている。しかし、頼まれるまで貸す気にはなれなかった。
「お前が今日ここに来るって知ってたからさ」
「それは、ちょっと面倒なことになるかも知れませんね」
重さで残弾数を探る。バレたものは仕方ないので、まずはこの男を消す必要がある。ぼくは男に手を向け、一息に引き金を引いた。瞬間、男は顔を少しずらし、息を大きく吸って、吐いた。狭いバーカウンターに煙草の香りが充満する。人をコケにするような安っぽい香りだった。
「物騒なことするねえ。話くらい聞いたって良いでしょ」
「じゃあ聞きます。なんでぼくを殺らないんですか」
男は緑の瞳を燃えているタバコの先に向けた。どこか強く見られているという感覚が消えることはなかった。
「絶やしちゃイカンのさ。お前も、おれも。その技術は表に出しちゃ駄目だが、いつか使う日が来る。だから継いでいく必要がある。だれかが寝ずに焚き火を守るのと同じようにな」
煙草の灰が男の露出した太ももに落ち、彼は「あちっ」と言った。火の消えた煙草とぼくをしばらく見比べたあと、彼は口を開いた。
「続きを話す前にさ。火、貸してもらえる? あと、キウイモヒートを一杯」
ぼくはライターを彼に投げ、黙って店を出た。
author:meshiochislash
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居酒屋の喫煙室で、長い縁の友人は安いガスライターを点けた。弱々しい炎に出所のわからない安心を感じながら、その熱源をぼんやりと眺める。
「お前は」その火に何故か、いつかの昔彼に言われたことを想起する。「あんまり、本気にならないよな」
そんなことはない。人並みに負けるのは嫌いだし、好きなことだってそれなりにある。お前が本気すぎるんだと、俺は揶揄い混じりに返して、それで終わったはずの会話。
小指と薬指で挟んだメビウス・ワンに火を点けると、相変わらず軽い煙草吸ってるな、なんて揶揄が飛んでくる。別にいいだろ。重さのない火を点けて、俺はその煙に満足する。
熱量が足りないことには、とうに気付いている。生きる人は皆、何かに燃えている。明日劇場に立つらしい酔っ払いの自慢話を聞き流す。適当な相槌を打つだけの俺には無い炎は、少し眩しい。
熱、と煙草を取り落とす。不注意で指を焼いたらしい。煙草の火にも勝てないのかな、と自虐的な笑いが漏れる。拾い直し、灰皿に煙草を落とす。これだけ。たったこれだけで、小さな音だけ残して簡単に火は消えていく。
そろそろ席に戻ろうと彼に言う。二本目のピアニッシモを取り出した彼は、紅潮した呆れ顔で言う。
「もうちょい頑張れよ、お前」
出ようとしていた足を止める。残り火種だけが灰皿の上で燻り続け、煙は天井まで登り続けている。紙箱とライターごとポケットに突っ込んだ右手を再度取り出し、どちらからでもなく笑う。
もう少し頑張ろうと、俺が思った。
author:stengan774
santou
エルサレムで五旬節が祝われる頃のことであった。ペテロは己を含む12人の使徒――暫く前に磔刑となったイエス・キリスト、その弟子たち――で、一堂に集まった。彼らの心には皆一様に偉大なる指導者を失った一抹の寂しさと、焦燥があった。主の語られた来るべき時、イエスの証人として使徒に聖霊の力が降り注ぐ日が、いまだ来なかったからである。重苦しい空気の中で、ペテロは口を開こうとした。「我々は――」
その時、烈しい風の吹き荒ぶような轟音が天から降り起こり、12人が座す家に満ち響いた。そして火の塊が舌のような形をとって12人の頭上に宿ったのだ。ペテロは直感に理解した。これこそが聖霊の力であり、主の教えをメソポタミヤ、ユダヤ、カパドキヤ、ポント、アジヤ、エジプトに至るまで諸国遍く広めるため、異邦の言にて語る力を主は我々に授けられたのだ!ペテロは期待を膨らませ街路に飛び出でて、道行く人々へ声高に叫ぶ。
『ユダヤの人々および凡てエルサレムに住める者よ、汝等わが言に耳を傾けて、この事を知れ』
使徒行伝第二章より抜粋
author:hannyahara
ashimine eveningrose musibu_wakaru
「すまんが火を貸してくれんかね」
一仕事終えた後に赤マルを取り出しながら相棒に尋ねる。いつも持ち歩いていたジッポは宿に忘れてきたようだ。
「もってきてねえのかよ、全く」
悪態をつきながらブックマッチが投げられた。珍しいものを持っているな。懐かしい気持ちになりながら少しぎこちなくタバコに火をつける。
「なあ、火は人類最初の発明と言えるだろうけど、火をつける道具も次々と発明されていったわけだ」
紫煙をくゆらせながらどうでもいい話を投げかける。ニコチンを一吸いすると脳が急速にクールダウンするのを感じる。
「ブックマッチももう無くなるんだってな、たまたま持ってたがちと寂しくなる」
「火打石がマッチに取って代わった時に同じように思った人もいるんだろうか」
「さあな、もはやタバコすら火を使わなくなりつつあるんだし、火をつける習慣自体が時代遅れになるんじゃねーのか」
どうなんだろうな、電子タバコはどうも好きになれない。
「火を使わなくなるね…確かに飯作るのも暖を取るのも火を使わなくなって久しいもんだ、人類最初の発明が陳腐化するのも時間の問題ってことかね」
「はっ、今このタイミングでそれを言うのか」
確かに一番不適切なタイミングだったな。さて、そろそろ行くか。
心拍数が平常値に戻るまでの間に長さを失ったタバコを指で弾く。
ツンと鼻をつく揮発油に引火した火種がパチパチと音を立てながら広がる。
火は炎となり、黙した人の塊と共に俺たちの仕事の痕跡をじわじわと消し去っていった。
「死体と証拠を焼く仕事だけはいつまでも火が適任だな」
author:tateito
tateito santou hoojiro_san
永遠の炎というものは存在しない。
無論、如何なるものも諸行無常の理に従い、同じ状態にとどまり続けることは無い。しかし火の象徴するものは変化である。火はモノを消費し、破壊し、変化させ、昇華させ、温め、照らし、動かし、そして消える。それは太陽の灯火であっても同様である。
…… であるのに、あるいはであるからこそ?ヒトは火に対して不変の性質を与えることを強く望む。
私は今、イラン・イスラム共和国のヤズド州に来ている。イランは名前からしてイスラム教が国教で、ほとんどの国民がイスラム教徒ではあるのだが、イスラム教が生まれる以前に信奉されていたのは拝火教、ゾロアスター教である。
ヤズド州はイランの数少ないゾロアスター教徒の中心地である。私はその地の拝火神殿に招かれた。拝火神殿には神話時代の昔から継がれてきた聖火が崇められている。
聖火を見た。
ただの火である。
確かにリオデジャネイロのキリスト像や奈良東大寺の盧舎那仏像、あるいは大神神社の神体たる三輪山と同じと言えばそうである。
だが火を崇めるのにただ火を継ぐというのは不自然であるように思えた。
煮炊きをするわけでもなく、灯りとするわけでもなく、体を温めるわけでもなく、焼畑をするわけでもなく、粘土を固めるわけでもなく、鉄を溶かすわけでもなく、電気を作る訳でもなく、人をいじめ殺す訳でもない。
イラン・ゾロアスター教神殿の聖火に、病院で薬漬けの延命を続ける老人を感じ、哀れを感じた。
author:santou
hannyahara hasuma_s AKQJ10
「チンチロリンで」
君は何を飲むか聞かれて、食い気味にそう答えた。
「もちろん、同じだよね?」
君は1ゾロを出していた。初めて見た。
「うわっー、自分も初めて見たよ。でもまぁ、36分の1だもんね?」
なんでもジョッキが一杯無料。
「うわ、どうしよう。一番高いのはコレだけど、ジンってやっぱりあの味がしないとダメじゃない?」
結局君は普通のハイボールを注文した。どんな目が出たとしても、お金を出すのはおれだから、君にとっては関係ないんだろう。
「店員さ〜ん、そうだな、まずはハラミと、タンと、ホルモンと……」
君は慣れたように注文を行なっていく。最初に来た頃は、俺に注文を任せていたっていうのに。
「夏場の焼肉はやっぱり熱いね」
君は机の上に置かれた七輪を前にして、マスクを外して俺に笑いかける。
「それじゃあ、乾杯」
君は牛脂を網の上に滑らせてから、肉をいくらか並べていく。
「最初はホルモンが一番好きだったけど、おかげさまでタンが一番になったよ」
君は口にタンを放り込んで、口元を緩ませる。
「それはそれとして、ホルモンは好きだけどね」
君はホルモンを皿から滑らせるようにして網の上に並べていく。油が網から垂れて、火が強く上がる。熱で君と俺の間が歪む。
「おっと」
君はジョッキから氷を端で掴み七輪に乗せる。水蒸気が上がり、火は小さくなっていく。店員が氷を持ってくる前には、事が済んでいた。
「じゃあ、行こっか」
トイレから帰ってくると、君はそう言った。席を立って会計に向かおうとすると、店員が出口の戸を開ける。君の方を見ても、君が振り返ることはなかった。
結果発表
目利き部門 一位
k-cal 7pt.
二位
hasuma_s 6pt.
文体部門 一位
2meterscale mishary 3pt.