この作品の作者は
BARIGANEsenshaさんでした!
予想結果: eagle-yuki, 1NAR1×2
かつて、お姉ちゃんはとんでもない人見知りだった。学校への往復以外で外出することなど決して無く、世界のほぼ全てを自分の天敵だと妄想し、シェルターの内に籠りっきりでいた。だけど、家族だけはその内側に入れてくれた。私にとっては、宇宙でたったひとりの優しいお姉ちゃんだった。
大人気ギタリストは今、超満員御礼の武道館の中心で絶叫と熱狂を全身に浴びながらギターソロを謳歌している。誰もが夢見る、典型的でお手本のような成功者だ。ロッカーらしくもない。ここにいる人達は皆お姉ちゃんのことが大好きで、そんな人達のことがお姉ちゃんは大好きなんだろう。実の妹として自分事のように嬉しくて誇らしい。はずなのに。
ギターは私からお姉ちゃんを奪った。勉強も運動も出来ない、気も弱けりゃ友達もいない。けれど、すごく優しい。干支一回り近くも離れた私とだけはいつも優しくお喋りしてくれた、そんな、優しいだけのお姉ちゃんを。
お姉ちゃんにはギターの才能があった。自分の才能と勇気と努力で、この舞台まで駆け上がってきた。そのスターダムに至るまでに必要だったのは味方でいてくれる存在であって、それはきっと私でなくてもよかったのだ。ならば私はお姉ちゃんに私だけのお姉ちゃんでいて欲しかったのか?そんなことはない、はずなのに。
宴の終わりを告げるドラムロールの最中、涙越しに、最ッ高の笑顔が小さく見えた。私は笑っていた。ああ、よかった。私はお姉ちゃんが幸せを掴んだことが嬉しくて、今もお姉ちゃんのことが大好きなんだ。でもやっぱり、ガラスの靴も魔法使いもクソ食らえだ。
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taiyousunさんでした!
予想結果: CRC-601, ShinoguN, Fireflyer
玄関のドアを開けた瞬間、天井に張り付いたそれと目が合う。肋が浮き出、涎と呪詛を垂れ流している、それを一瞥し、リビングへと向かう。
視界の端の、風呂場の扉にへばりついた髪の毛が見えた。見なかったことにする。後ろから喘ぎとも叫びとも取れるような声が聞こえるが無視する。
リビングの大きな窓の向こうには、人の顔をした百足が大量にへばりつき蠢いている。見るのも不快なのでカーテンで遮る。ぎちゃぎちゃ、という音がまだ聞こえる。
冷蔵庫を開き、飲み物を物色する。食べ物飲み物の騒乱の中に交じる、嬰児の頭も、人の形をした影も、怨念の絡まりあった歪な屑も、俺には関係ない。飲み物を諦めてテレビを見に行く。
テレビをつける。画面には黒と白がうねり、ノイズを上げている。その黒と白が纏まっていき長髪の女になる。女はこっちを見ている。電源を落とす。
全部諦めて、椅子に体を落とす。不細工な音を立てながらもそれは俺を受け止める。もう、奴等の声は聞こえない。
おもむろに、ドアの開く音がする。
ああ、やっと、帰ってきた。俺はベットから体を起こし、彼女の方に向かい、叫びに近い形で言う。
「おかえり!」
……彼女は俺を通り抜けてリビングの方へ向かった。
そして、膝を折り曲げ、手を合わせ、写真に収められた俺に言う。
「ただいま」
ドッ、っと音が湧き出る。あるものは手を叩き、あるものはガタガタ震えて、あるものは奇声を上げながら。
あいつらは笑っていた。
「ふざけるな」
かろうじて口から言葉を押し出す。
「俺はお前らとは違う。お前らの仲間じゃない」
「……俺は幽霊なんかじゃない」
右眼球が融解し、床にへばりつく。
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roneatosuさんでした!
予想結果: BARIGANEsensha, roneatosu, Nanasi1074
「ヒュウッ、いい手札が来た!」
「あ? それ、ブラフか?」
「Oops! 口が滑った。忘れてくれ」
はぁ。少し前に注がれたせいで、炭酸の抜けたソーダに手を伸ばす。コップに手をやるのは手札を全部伏せてから。手札情報は重要なアドバンテージだ。だが、あいつは飲み物を飲む時にも手に持ったまま。タダで勝ちを落としてるようなもんだ。
手札を見直す。数字を並べてペアを作るだけのゲームにも戦術はある。あいつの手にあるのはクローバーの1を含む5枚。1はこのゲームで最も弱い数字で、最も強い13に勝るのはどの数字にもなれるジョーカーだけ。手札を捨てなかったということは他に強いカード……例えばジョーカーが手札にあるってことだ。
だが、こっちもジョーカーで5枚ペア。同じ数のペアならより強い数字のペアが勝つ。こっちの手にある最も弱い数字は6。1を含むならたとえあいつが5枚のペアを揃えていたとしても勝てる。
「勝負」
手札が場へと躍り出た。瞬間、思考にひずみが走る。あいつの手札に1がない。
「はっ……!?」
「2人とも5枚のペアか。だが、アタシのペアの最低値は8、そっちは6。アタシの勝ちだな!」
「ありえねえ! 仕組んだろ!」
「おいおい、なんでそんなことを言うんだ? ……もしや、私の手札を盗み見てた、とか? だとしたら仕組んでたのはそっちじゃないか」
困惑するあなたの後ろで、彼女と目が合った。周りで飲み物を注いでいる時にカードをすり替えるのは案外難しくない。ゲームの外側ならば、何のカードが必要かも一目瞭然だ。
彼女がウィンクする。ごめんね、こんな悪戯に協力してしまって。でも今日はあなたじゃなくて仲間の味方をしたいんだ。
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Nanasi1074さんでした!
予想結果: BARIGANEsensha, Matcha tiramisu, watazakana
思うに彼女は、星だった。
活気のある街並みから外れた路地裏。
そこで私は不良共に襲われていた。私の身なりから、金目の物を持っていると思われたのだろう。
「さっさとくたばりな」
繰り返し、腹部に強い衝撃を受けて倒れ込む。自身の無力さが悔しくて、もうダメかと思った時だった。
「何やら騒がしいと思えば、こんな悪事を!そこの方!この正義の使徒である私がやってきたのですから、もう大丈夫です!」
艶やかな髪を靡かせて、彼女は私を庇うように現れた。そしてその勢いのままに不良共を相手取った。
結論から言うと、圧倒的だった。
人数差を感じさせない実力で不良を叩きのめした彼女は、どこまでも明るく眩しかった。
「ふーっ、無事ですか?」
差し伸べられた手を取って何とか立ち上がる。お礼を告げると「当然のことをしたまでです!」と返された。
「それでは、私はここいらで失礼します!」
そう言って立ち去った彼女の背中を、私は無言で見送った。
それから私は何度か"意図的に"不良に襲われ、彼女に助けられ続けた。果てなき妄執が私を突き動かしていた。
そんなある日、街中で彼女を見かけた。
視界に映る彼女はとても幸せそうに、一緒に歩く4人の女子と喋っていた。
そこで漸く私は境界線の存在に気づいたのだ。
私は、星のような彼女の隣に立てる人間になりたかった。パートナーになりたかった。
でも、違った。彼女にはもう足りているんだ。
感情が渦を巻いて、醜さに溺れてしまいそうで、酷く寒かった。
思わず彼女の方へと手を伸ばし、下げた。
もう私の孤独で彼女を汚したくはない。
最後にと彼女の姿を目に焼き付けて、その場を後にする。
……ああ、でも。
「名前くらいは、聞けば良かったな」
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Matcha tiramisuさんでした!
予想結果: taiyousun×2, Matcha tiramisu
「何のマネだ?」
右頬を掠めた銃弾、その元凶、廊下の先、アベルは言葉を付け加える。
「ジャック・ブライト……」
金髪の研究助手、の身体を借りた彼、ジャック・ブライトは拳銃を下ろし、嫌味らしい笑顔で叫ぶ。
「オーケィ、ヘッドショット! やはり、射撃はイイもの――」
鉄の棒が胸ポケットを貫く。
アベルは勢いづいた手をゆっくり戻す……
「グッジョブ、ナイスエイムだ。そこに首飾りがあれば、キミの勝ちだったろう。」
アベルは振り向く。収容エリア25b、廊下の反対側、その奥。
中年の収容担当、を借りた彼が首飾りを手にかけて笑う。
「無論、首飾りは私が持っているのだが。さて、収容違反する悪いコには……」
アベルが壁面を破壊、鉄の骨組みを外す。
そして、投げる。3秒の出来事。
「くらえ!」
ブライトは楕円物を投げる。これが何なのか、残念ながら、彼自身も記憶に無い。
鉄の棒がブライトに迫る、と同時に楕円物は爆発。
アベルの石火は散らばった瓦礫と共に、天井に貼りつく。
「反重力、思えばそんなのもあったな。……ラッキー。」
アベルは動かない。
出方を窺っているのか、感情を抑えているのか、いたぶり殺す手順の思案か……
「アベル、ひとつ提案がある。」
アベルは動かない。
「ここまでエリアをボロボロにしたんだ。」
アベルは動かない。
「どうせなら、2人きりで戦わないか?倒れたら負けの真っ向勝負だ。好きだろ?」
アベルは口を開く。
「ひとつ、質問がある。」
ブライトは少し目を見開いた、が、すぐに傾聴する。
「一体、何のマネだ?」
「おっと、答えてなかったかね?」
わざとらしい咳払い。
「君も私も、財団の問題児だからさ。」
アベルは微笑する。
そして、ブレードが構えられた。
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Kuronohanahanaさんでした!
予想結果: Kuronohanahana×2, CRC-601
「お前のバトル最悪! 受けル使うなや!」
「TODだって立派な戦術のひとつだろうがよ。対策してないそっちのが悪くねぇ?」
Switchの画面に向かって悪態をつくと、イヤホンの向こうから心底愉快そうな笑い声が聞こえた。それにますますイラついて、凌太は舌打ちする。
「くっそ……そもそも俺はエンジョイ勢なの! エンジョイ相手にそれはないだろって」
「エンジョイ相手にこれ使うのがいっちばん楽しいからなぁ」
「うっぜぇー! くそっ、急所当たれ!」
凌太の苛立ちなどものともせず、幸介は楽しそうにくつくつと笑う。
「24分の1はそうそう当たらん……あぁ!?」
「っしゃあ!!」
幸介が声を荒げるのと、凌太がガッツポーズをしたのは同時だった。
「……まっじかよお前……」
「いやー最高。ありがとな、めっちゃ楽しいわこのゲーム」
「んはは、うっざぁ」
呆れたように、でもやっぱり心底楽しそうに幸介が笑う。少しノイズ音がして、それから再び声が聞こえてくる。
「あっちい。今布団出た」
「布団の中でやってたのかよ」
「朝っぱらからポケモン誘ってくるお前がおかしいんだよ。もう少し寝てたかったわ……」
くぁ、と気の抜けた欠伸が聞こえてきて、凌太もつられて欠伸をする。
「お前の欠伸うつった……あ、今度はステロ欠伸のポケモン作ろっかな」
「良いね。挑発オーロンゲ作って待ってるわ」
「おい!」
あはは、と気の抜けた笑い声がイヤホンから聞こえてくる。凌太もそれにつられて少し笑って、それから立ち上がった。
「わり、ちょっと飯食ってくる」
「うぃ、いってら。ちなみに朝飯何?」
「ピカチュウのトリプルチョコパン」
「おもろ」
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Gokipoさんでした!
予想結果: roneatosu, Gokipo, Something_funya2
「京都6レースの4番、飛ぶよ」
通話に入るや否や、神村が言い放った。咄嗟に手元のアプリから出馬表を開く。
「前走は着差離してるけどタイムランクがEで、テン乗り外国人の単勝1.9倍……お決まりのパターンだ」
神村が狙うレースの傾向は大抵わかっている。1頭が過剰人気になっている中で、隠れた実力馬を探す。俺たちの間では常套手段だ。
「で、何を買うの?」
「1番。こいつは面白い」
神村が指した馬は14頭中6番人気。オッズも15倍程度でなかなかの穴馬だ。
「こいつの昇級はタイムランクCでなかなか良い。前走は外を回されたせいで伸びきれなかったが、内枠に入ればキックバックを嫌がるタイプでもないし十分勝ち負けになる」
確かに、それだけ聞けばなかなか面白そうだ。でも……
「鞍上、橋本だぜ?」
神村はレース分析担当、俺はデータ分析担当だ。騎手や血統の妙味に関しては、俺ができる限り情報を集めることにしている。
そしてこの橋本という騎手、とにかく京都ダート中距離の妙味がない。人気馬でも勝ちきれないし、穴馬を持ってくることもそうそうない。
「そら、データ班は嫌うだろうな。お前はどうせ11番だろ?」
もう一度アプリに目を通す。鞍上が松井でシアトルスルー系……確かに良さそうだ。2番人気だが単勝5.5倍なら十分だ。
「ご名答。ちょっと枠が外すぎるけどね」
社会人になり互いに見知らぬ土地へ旅立って数ヶ月。1つの新聞を2人で読むことも、1レースからずっと張り付くことも無くなった。それでも、競馬は2人を繋ぎ止めてくれている。
ファンファーレが鳴る。俺たちの週末が始まる。
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rokurouruさんでした!
予想結果: roneatosu, rokurouru×2
コヨーテ。狼の仲間、形態も似るが小型。狼には勝てず、犬鷲には喰われ、人間には駆除される。薄暮れに遠吠える様は正しく負け犬だ。
「痛い痛ッがあぁクッソ痛えなあ!!」
顔面血塗れでゴミ袋の山に突っ込んだ。路地裏、男は呻き声を上げる俺を軽く一瞥してから堂々と煙草を咥える。十中八九これから俺の剥がれた生皮は、野犬にでも貪られる事になる。俺が奴等のカモ共を斡旋してやってんのになんて仕打ちだ。
『やらかしたなあお前、人の取り分は奪っちゃ駄目なんだぜ』
「正当な対価を得ようとしただけだ。お前らが狼だか何だか名乗ってるかは知らんがなぁ、ハイエナの間違いなんじゃねえの?」
言い終える間もなく折れた左腕を容赦なく蹴られる。男は路地に唾を吐いてから、幾度目か分からない俺の銃を眺めた。パーツを無理矢理繋ぎ合わせた露悪品。牙にするには些か無様な代物。弾がない事を確認してから嘲りと共に投げつけられる。靴底に隠したコカインすらも没収された今、俺は絵に描いた様な敗北者なのだろう。
男は俺を舐めていた。完全に己が上に立ったと思っていた。
事実そうだが、油断は神をも殺す事を忘れていた。
コヨーテ。上位種に敗れ続ける負け犬。故に生息地を追われて、故に適応力を武器にした。泥を啜ろうが雪に埋もれようが、絶対に生き抜いてみせる。それは紛れもない誉れである。
密かに口の中に仕込んだ銃弾を静かに吐き出す。小さくて粗雑、故に隠し通せた物。男は無様に背後を向いている。折れた左腕も酷使する。無駄なくリロードし、震える手で照準を合わせた。
その牙を舐めた報いを、目に物見せてやれ。
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eagle-yukiさんでした!
予想結果: Kuronohanahana, eagle-yuki, CRC-601
よーっす、来たぜ~。調子どうよ?
ん~?随分シケた面してんじゃ……あ?何?彼女に逃げられた?
あ~、だから言ったじゃねえか。あの女はやめとけって!アイツ、飲みの金一回も払った事ないだろ?懐が寒い女は心が狭いんだよ。ったく、今度会ったら俺がガツンと言って……ん?いやお前、そこで「やめろ」って言えちゃうのが良くねえ所だよ。ま、俺はお前のそういうとこ嫌いじゃねえけどな。まぁなんだ、任せとけって。
そうだ。前に、「彼女の誕生日に渡したい」とか言って大金はたいて買ったバッグ、あれどうなった?
あ、結局渡し損ねたのか。ならよ、俺にくれないか?……バッカ、勘違いすんなよ?俺が欲しいんじゃねえ。こういうの、高く売れるトコ知ってんだよ。お前の払った分、取り戻してやる。もし相当高く売れたら、俺にも少し分けてくれよ?なっ!
気にすんなって!俺たちゃ、持ちつ持たれつのナカマだろうが。
おう、今度またサシで飲もうぜ?慰安会だ慰安会。この前、いい店教えてもらったからよ!もちろん金は全部俺が持つ。なんたって慰安会なんだからな!
へっ、そんな畏まるなよ。な~に、また“商売”の手伝いしてくれればいいんだ。
──え?もう手伝いは無理?
……ふ~む。や、俺は全然大丈夫だぜ?ずっとお前に頼り切りだったの、悪ぃと思ってるし。一人ぐらい欠けてもどうにかなるしな。
でもさ、俺の仲間がなんて言うか分かんねえんよな。ほら、前に紹介したじゃん?俺と違って、イカにもって感じだろ?逃げ出す奴がいると怖えんじゃねえかな~って。ほら、お前の元カノの住所、アレも抑えられてるんだぜ?
お?やっぱ考え直してくれる?サンキュ~!今後も末長~くよろしく頼むぜ?
この作品の作者は
watazakanaさんでした!
予想結果: watazakana, Snowy-Yukinko, ShinoguN
端的に言おう。俺は肝試し中にガチの怪異に遭遇して逃げた。
勝てるはずのない怪物だった。壁をぶち破ってのぞかせた大口は直接食っているわけでもないのに咀嚼の動作をするだけで、隣にいたヤツが足から砕けていった。……咀嚼に合わせて。そんな仲間を見捨ててでも逃げだしたのは、本能として正しい判断だったと思いたい。
自分を正当化する理由はいくらでも思いつけた。見捨てなきゃ俺が死んでいた。そもそも隣のやつはネットで知り合っただけで、友達でもなんでもない赤の他人。「肝試しがしたい」という軽い気持ちで徒党を組んだだけ。どれだけ大げさに言っても利害の一致が精々の関係だった。人が死ぬとは思ってなかったし、本当に人が死ぬくらいの脅威に遭遇したら逃げるのは当然の反応だ。
結局その日は皆がむしゃらに逃げて、各々逃げ切ったらしい。DMで生存確認をして、夢だと思いたいという願望を代償に主催としての責任感を満たした。
もう二度と、肝試しなんてするものか。
次会うことは無いものだろうと思った。
しかし、数日後。その肝試しのメンバーから連絡があった。
「話したいことがあります」
主催した手前、責任を感じていたこともあり、断るという選択肢はなかった。
「人が死んだのだから、ちゃんと弔うべきです」
そのメンバーは、寺で僧侶をしていたのだった。弔いたい、そしてあの怪異を放っておくと報われない命が増えるばかりだと。
「……なんでそんなことを?」
訊けば、こう返って来た。
「仲間、でしたから」
この作品の作者は
CRC-601さんでした!
予想結果: BARIGANEsensha, Nanasi1074, eagle-yuki
「……俺たち、仲間だよな?」
目を見てそう言われた時、俺は率直に「そうか?」と思った。
「仲間」って言葉から連想されるのはやっぱりチームの意味だ。スポーツなら仲間にパスを出したりするし、仲間からのバトンを受け取ったりする。「受験は団体戦」って言ったりするときも、仲間同士で勉強を教えあったりして皆で合格しよう、って意味で使われてる。そこには敵に勝利するみたいな、共通の目標だったり協力すべき理由があったりする。
もうひとつは「同じ立場」って意味の仲間。クラスメートや同じ学校ってだけじゃない。議論する立場だったり抱えてる思想だったり。趣味とか、生い立ちとか、コンプレックスとか。共通点がお互いにある時、しばしば俺たちは「仲間」になる気がする。目標とかはないんだけど、「俺たちお互いのことわかってるよな」ってことで、協力したり、仲間に何かがあった時助け合ったりしている。それが仲間。
「友達」とはまた違う。友達はそんな直接的な繋がりとか関係なくて、気がついたら仲良しになってるみたいな、そんな感覚だから。
そいつとは「友達」だったかもしれないけど、「仲間」だったのか?確かにそいつのことは嫌いじゃなかったし、なんとなく話しやすくて、俺もそいつの話を聞くのが楽しかった。
でも俺たちには共通の趣味も、一緒に達成する目標も、協力して倒さなきゃいけない敵もないはずだ。
立場だって違う。椅子を倒されて給食を全身に浴びてるそいつと、笑うクラスメートの後ろから覗き込んでる俺。一体お前の「仲間」なんて、どこにいるんだろうか。
中3の冬。追い打ちに牛乳を浴びせられたそいつが過呼吸になってる間も、俺はそれだけが引っかかっていた。
この作品の作者は
Snowy-Yukinkoさんでした!
予想結果: Snowy-Yukinko×2, ShinoguN
彼はその病院のB1階、突当りの部屋にいた。自分の姿を認めるや否や、点滴に繋がれた手をお構いなしに振ってきた。頭に巻かれた包帯の赤黒さが痛々しい。
最近の心労でおかしくなったのでしょう 彼は語り始めた。
初めて幻聴を聞いたのは、確か、2ヶ月前だったような気がします。最初は、自分を呼ぶ声を聞いて、振り返ったら誰もいない、ということがありました。やがて幻聴は単語の羅列から文章になり、しまいには私は長い時間彼らと話しているようになりました。
そのうち、声だけでなく姿も視界の端に見えるようになりました。最初はぼやっとした人の影だったそれは、時間が経つにつれはっきりとした人の形をとるようになったのです。私は、目の前にいる人が果たして他の人にも見えているのか、自分が作った単なる虚像なのかが区別し得なくなったのです。私が彼らと交流するのを気味悪く感じたのでしょう、周りの人の私への接し方も変わりました。
最近まで連絡をしなかったのもそのためです。ずっと家にいましたから…ともあれ、久しぶりに外に出たら、知り合いが自分を呼んでいました。近づこうとして…車に轢かれたんです。そうしてサイレンが近づいてきて初めて気づくのです。なんだ、タダの幻じゃあないか、と。
でも、私はあの人たちに存在していて欲しかったのです。あの人たちだけは私を責めない、私の胸ぐらを掴んだりしない。私を壁に叩きつけることも、あいつらと違って…失礼、抑制剤を。自分はこんな人間じゃなかったはずです…
そう言って目の前のボタンを押し、そのまま横たわった。深い眠りのあと、やがて目覚めるだろう。彼一人の他に、ここには誰もいない。
この作品の作者は
tateitoさんでした!
予想結果: Gokipo, tateito×2
ここは冒険者達が集う酒場。彼等はこの酒場で仲間を集めパーティを組み、そして長い旅へと出かける……
「なんで?」
勇者の血筋を継ぐ少年が魔法使いの女性に尋ねている。
「なんでってなにが?」
「なんで仲間を集めるのに酒場でしなきゃならないの?」
「そりゃ酒のあるところには人も集まってるからよ」
魔法使いは既に顔を真っ赤にして酔っぱらっていた。
「いやもっとまともなところないの?こんなところで人材採用しても酔っ払いしかいないでしょ」
「冒険者なんて酔っ払いしかいないよ。あ、ビールもう1ジョッキと、あと枝豆も追加で」
「え?この世界枝豆とかあるの?」
「あったら悪い?」
「いいけど」
周りを見渡すと誰も何も話しかけてないのに大声で笑い続ける巨体の戦士や聞き取ることのできない喚き声で唾を飛ばして叫び散らかす女僧侶、延々と愚痴を漏らしながら泣き続ける商人、半開きの口で虚空を見つめている盗賊、ものすごい勢いで嘔吐している忍者、などが蠢いていた。
「地獄だ」
「ちなみに全員レベル1だから好みで選んでね」
「レベルってなんだよ」
「知らないってことは無いでしょ」
「いや知ってるけどそういうことじゃなくて」
少年は少年であるからして当然未成年である。当然素面でここにいる。少年は勇者として魔王を倒して世界を平和にもたらすという崇高な使命を帯びてここにいる。しかしそもそもこの世界救う価値があるのか?酒のみしかいないし、世界観も適当だぞ?
「えー、じゃあ魔法使いと戦士と僧侶、来い」
「大人に対して礼儀がなってないぞ」
「うるさいレベル1ども」
……
次の日。
「うう、アルコールが足りなくて手が震える」
少年は一人で旅立った。
この作品の作者は
1NAR1さんでした!
予想結果: rokurouru, 1NAR1, Something_funya2
「君が隣で良かった。本当にそう思うよ」
吹奏楽コンクールの県大会会場。とっくに閉館した市民ホールの前。警備員に煙たそうな視線を向けられながら、同じパート、同じ学年の相棒がそう言った。涙はとっくに枯れていて、掌の中のペットボトルは空っぽだ。午後の紅茶。ずっと今日の午後が終わらないと良いのに。
「皆にそう言ってるだろ、君」
同級だった戦友は、のちに第二次世界大戦と呼ばれる戦いの只中、その塹壕で泥に飲まれつつそう嘯いた。彼の軍服のポケットの中には家族の写真がある。戦争が終わったら妹と結婚すると良い。彼奴はいつもそう言っていた。
「正解だ。前のやつにもそう言ってたし次のやつにもそう言う。今は休もう」
SNSで明らかに精神的に失調している発言が目立つ知人に告げる。かつて彼ないし彼女の作品は僕を何度も救った。そう言うとあなたはありがとう、とだけ返事をした。あなたが心安らかでありますように。
「君は誰」
市民ホールの前、警備員が第二次世界大戦当時の軍服でこちらを睨んでいる。
「僕は君の相棒だよ。もう目を瞑ろう」
塹壕の只中。彼奴はスマートフォンを大事そうに抱えている。
「君が友人で良かった」
スマートフォンから目を上げた、吹奏楽部員の学友、あるいは二次大戦を共に駆けた同級の戦友。あるいはイラクで戦死した入隊同期。あるいは蜻蛉を共に追った名も知らぬ隣家の子供。兄弟。姉妹あるいは親子。その他すべての関係性。それらと視線を交わす。
「僕は君の友人じゃないよ」
答えは無い。あるいはそういう返答なのかもしれない。
「なあ」
答えは無い。
「僕たちは仲間だったんだ」
仲間。同じもの。生まれや在り方、所属を同じくするもの。
この作品の作者は
Something_funya2さんでした!
予想結果: Gokipo, tateito, Something_funya2
誰もが仲間を持っている。虹の中では赤と橙がよろしくやってるし、タンパク質の中じゃニトロ基とカルボニル基が浮気してる。仲間が居ないぼっちなのは俺だけ。なのでタルパを作ることにした。ちなみにタルパとは思考するイマジナリーフレンドのことだ。紹介しよう、俺のタルパことプブリウス・アエリウス・トラヤヌス・ハドリアヌス陛下を。
「お前は見るに堪えん、実家に帰らせてもらう」
お前の実家は俺の大脳皮質だ。ちくしょう本当に引っ込みやがった。だがタルパの視界で見れば彼の思考を追いかけることは簡単だ。俺のマインドスケープから逃れられると思うな。
視界をジャックすると、彼は俺を見ていた。俺の部屋の安くて度数の高い缶チューハイで出来たパンテオンを見ていた。ここ5年は掃除機もかけておらず、蟻が這っている万年床を見ていた。だるんだるんの皮で、毛が伸びっぱなしで、筋肉には往年の様子もなく、シミとアザとホクロとニキビだらけの醜い俺の顔を見ていた。
嘔吐した。嘔吐している俺を見るハドリアヌスの視界を通して嘔吐している俺の醜さを見た。ハドリアヌスは目を逸らしてくれない。俺は嘔吐を続けた。もう食べ物は吐き切って、透明な胃液しか出てこなくなっているのに、汚物まみれの俺の醜さを直視してまた吐いた。
「お前は醜い」
はい、そうです。私は自分の醜さに甘えて成長する努力を放棄し醜いまま生にしがみついています。仲間がいる人々に憧れて、つるまないと何もできない連中だと見下しています。
「まあ薬を飲め」
エビリファイ錠を飲んだ。その瞬間に思考が落ち着いた。プラセボだろうが効果はあった。体を清めて寝床に入る。少なくとも体は俺の仲間だ。労わらなければ。
この作品の作者は
EianSakashibaさんでした!
予想結果: EianSakashiba×3
ナキは初めてアウターオーサカのライブハウスに立ちました。ナキは機械です。元居た世界では電子上の生命で、マスターの歌を歌っていました。不慣れな実体で歌おうとして尻込みするナキに、バンドの皆様が半分大丈夫だと言うようにイントロを鳴らしました。もう半分はナキを急遽連れて来たリードギターの後藤様に対する慣れた呆れです。
ナキはどこまで行ってもマスターの入力でしか歌えず、ここに俺の魂はないとマスターに捨てられました。気づいたら実体を持ってO/Oを彷徨い、道端で歌っていた所を後藤様に「自分の代わりに歌ってくれ」と連れられました。
「ダメです。ナキの歌にはマスターの魂がありません」
「曖昧なこと言うね、なかったら何?」
「歌う資格がありません」
「ご主人の魂は確かにさっきの歌になかった。でも別の魂はあった」
「…ナキの?」
「魂を感じれたからバンド仲間に誘ってる。この街の連中は気に入ると思うよ?」
ごめんなさい、ナキにマスターの魂は歌えません。ごめんなさい、それでもナキはマスターの歌を歌いたいです。
拙く不器用で、どうしようもなくこの体に宿ったわたしの21gを。
あなたが紡いだ歌に乗せて、あなたも含めたみんなに届かせたいのです。
「じゃ、これからもよろしく~」
ライブが終わってバンドの皆様は、改めて受け入れてくれました。
「ナキは歌っていいのですか?」
「全員に別々の目標がある。何かを為したい、自分の音楽がしたい、バンドで売れたい。バラバラでも楽器持てばこいつらとじゃなきゃダメだって、そういう奴らの集まりをバンド仲間って呼んでる。歌いたいのがナキの目標ならこれから聴かせてよ」
「ナキの魂、マキナ・ジ・ソングを!」
この作品の作者は
ShinoguNさんでした!
予想結果: taiyousun, Matcha tiramisu, Fireflyer
干からびた蟹。中身をまき散らした栗。腸もろとも尾針を抜き出した蜂。砂に塗れ蠅も寄り付かなくなった糞。砕け散った臼。群れたことに意味など無かった。
泡と毒と血に染まった猿の視界が少しずつ闇へ落ちていく。看取る者はいない。なぜ自分の所には桃太郎は来なかったのか?なぜ団子ではなく握り飯だったのか?なぜ少しだけ、蟹を妬ましく思ってしまった?
合戦に勝者無し。憎しみを満たすためには、穴を二つ掘らねばならないのだろう。
この作品の作者は
Fireflyerさんでした!
予想結果: Nanasi1074, watazakana, Fireflyer
そこで、私が足を止めていたら。
そこで、判断を誤っていなかったなら。
そこで、私がシャベルを差し出していなかったら。
そこで、私が引き金を引いていなかったなら。
滴る雨の音。以前より幾分動きやすくなったとはいえ、キャンプ装備はキャンプ装備だ。雨には弱い。
「おーい! そっちの防水、終わったか?」
都市の夜更け。ビルの光さえも次第に少なくなっているというのに、公園内に存在する彼女らは休むことを知らない。
「はい。私はこんなところにしておこうと思います。排水の方も以前の整備をしっかりしたおかげか、問題無さそうですし」
ヘルメットを被った部隊員はびしょ濡れになりながらしっかり者の小隊長へと微笑む。
「りょうか…いと思ったが、こりゃマズイな」
「サキ、何かあったのですか?」
サキと呼ばれた少女の元に小隊長が駆けつける。大雨の中、長靴で濡れた土を踏みつける軽快な音。
「これは……さすがに無理ですね」
自慢の黄色いテントも、これではどうしようもない。
「まぁ、想像の範囲内ではあるさ」
「それで、どこで寝るんですか?」
雨が打ち付ける中、ヘルメットの中を覗き込む。
「じゃ、小隊長さんの所で寝るとするかな。よろしく」
パッと笑顔に染る。
「全く。こっちには先客もいるんですが…」
ため息はレインコートに打ち付ける雨の音でかき消される。
思えば。学園を追い出されてからというもの、こうして4人で一室を使った事は無かった。
思えば。私達がこうして、雨で蒸させるのも悪いことでは無いのかもしれない。
願わくば、この仲間が永遠ですように――。