この作品の作者は
NorthPole さんでした!
予想結果: NorthPole, Gokipo, Nanasi1074, CRC-601, Rivi-era, tateito
↓
その一言と共に全てが終わった。
「ざまあみろ」
最初から分かっていたはずなのだけど。
これが罪というものなのか。
これが咎というものなのか。
とうに抜け落ちたナイフを眺め、静かに唇から言葉を漏らす。
血溜まりと彼女を見つめて生まれる声は脳裏に浮かぶ言葉そのまま。
「なんで、こうなっちゃったかなあ」
痴情のもつれなんて言葉で片付けてほしくはないけれど、蓋を開ければどうやらそういう結末らしい。
悪かったのは思うに私の二股か、あるいは彼女の三股か。
いくら考えてみようとも結論は何も変わりはしない。
そんなのただの言い訳で、どう取り繕おうと同じ事でしかないのだろう。
「悪気があった訳じゃ、ないんです。あなたの事は大切だった。信じてください。本当です。それだけは絶対に、本当、なんです」
宥めるための言葉なんてもはや意味を持たないのに、まるで言い訳でもするかのように言葉は口からまろび出る。
それは正当化のためだったのだろうか。同意を求めた故なのだろうか。どうしようもなく虚しいのだけど、動く唇が止まらない。
「でも、これで、良かった。そう思います」
一人はただただ立ち尽くし、一人はただただ床に臥す。こんな結末を望んだわけではなかったけれど。
だけど、まあ、過ぎ去ってしまった事なのだ。
無益な言葉が口をつく。間違っていたのは私なのか、彼女なのか。思い返せば分からないままに全てが終わりへと向かっていった。
「さようなら」
結局のところべっとりと血に濡れた掌、貴方が綺麗だと言った白い肌は、きっと最初から貴方が言うほど綺麗なものではなかったのだ。
↑
この作品の作者は
usubaorigekiさんでした!
予想結果: usubaorigeki×6
置いてあったんだよ、ジャングルジムの上に。
石が。
大きさは結構あって、でも大きすぎなくて。丸くて重い、そんな感じ。乗せようと思わないと絶対そうはならない。わざわざ、やったんだ誰かが。
その時は少し年の離れた弟と二人っきりで遊んでて、一緒に登ったんだよ。外側を一瞬でかけ登る。当然だ。当時の自分には、既にジャングルジムは幼稚で、小さな遊具になりつつあった。
でも弟にとっては違った。あえて内側を潜って潜って一番上へ、よいしょ、よいしょと。幼い弟にとっては高くそびえ立つ、やりがいたっぷり面白遊具なのだから。
凄いはしゃいで、汗びっしょりで遂に登頂した弟と何かを話した。内容は覚えてない。ただ、覚えてるのは、
「このいし、なに?」
と聞かれ、俺はこう答えたんだ。
「さぁ。邪魔だから、落としちゃえよ。」
弟は片手でぐ~っと押す、丸っこい石は落ちていく。
下は、見てない。
ドスンと石が落ちるのと同時、下を見る。石の横、子供が居た。登ろうとしている。弟よりも、幼い子供が。
怒声。その子の父親。萎縮しきってすぐ降りた。細かい状況は覚えてない。
ただ自分は必死に謝った。自分が背負うべき物を、全て幼い弟が悪い事にして。
家に帰って報告して、弟は厳しく叱られた。それをきっかけに、両親は弟に対して少しだけ躾が厳しくなった…気もする。どうだろ、いや、関係ないな。
20年以上経った今も、石を見ただけで思い出す。そして鮮明に思い出す。去年、自ら落ちた弟の割れた頭、折れた首。
こんな昔の出来事、何にも関係ない、関係ないのにな。
この作品の作者は
Dr_Knottyさんでした!
予想結果: Gokipo×2, Nanasi1074×2, tateito, Musibu-wakaru
お聞きください、神様。私は罪を犯しました。私は解放されたかったのです。あの、付き纏う視線の寒々しさから自由になりたかった。それで、私は、ああ。
私はお爺様を殺しました。この手で毒を盛りました。あの冷たい目が、嗄れて籠った声が途方もなく怖かったのです。静寂が欲しかった。だから毒を盛りました。そして望みを手に入れました。
骸となったお爺さまを見下ろした時、静かな喜びが胸を満たしました。静かな朝の光の中で、心から嬉しかった。でも長くは続かなかった。顔を上げたとき、窓の外から子供がこちらを覗き込んでいるのが見えました。それで、咄嗟に……ああ。気づけば私は血まみれの石を握りしめていて、並ぶ骸が二つに増えていました。
それからは悪夢の連続でした。殺人に気づいたものを一人また一人と殺めました。私を責め苛む目が日毎に増えました。いつでも彼らは私を人殺しと呼び、罵り、嘲るのです。自室の壁に彼らの社会が染み込んで私を見つめていたとき、もう何処にも逃げ場はないのだと知りました。
明日、少年が私の家を訪れます。私が殺したうちの一人の女の弟です。きっと、彼の手は私の血に染まる。彼の部屋にもあの眼が染み付くことでしょう。私にはそれが怖ろしく、哀れでならない。未来ある少年にこんなものを押し付けることになることが。これほどの罪がありますか。
許しが欲しくて告白しているのではありません。ただ……聞いてほしかったのです。人を殺めさせるという罪を。
おや神父様、いらしたのですか。殺めること……? 不思議な事を仰る。身を守ることの何が罪なのですか?
この作品の作者は
Gokipoさんでした!
予想結果: Dr_Knotty, CRC-601, eagle-yuki×4
深夜1時。宴のピークは過ぎ、終電はとうの昔になくなっていた。これが大学生活最後の飲み会になるだろう。語り尽くせぬこともあったが、流石にみんな疲れてきたようだ。
さてどうやって帰ろうかと頭を悩ませていたところ、隼人が名乗りを上げた。
「帰る方向一緒だろ? 2ケツで送ってくよ」
飲みの席に自転車で来る大学生はいるが、いつは片道5km近くの道を乗って来ながら、生2杯とジンジャーハイを飲み干していた。俺も相変わらず後先考えないやつだと感心していたが、酔いは冷めてきているようだったし、タクシー代もケチりたかったので、俺はその提案に乗って若干のスリルを味わうことにした。
静まり返った川端通りを、帷を切り裂くように走る。隼人の運転は酒気帯びとは思えないほど安定していた。この空気を浴びるのもあと数ヶ月。夜風がやけに冷たい。
しかし、案の定四条で警察に見つかった。できるだけ人通りの少ない道を選んでくれたはずだったが、無駄骨に終わった。酔いは冷めてきてるとはいえ、こんな状態で捕まったら逃げ道などないはずだった。
「こんな時間に何してるの?酒?」
「いえ、バイトです」
その間コンマ1秒もない、隼人の返事。1ミリも疑わせる隙を見せなかった。甘めに判断してくれたのかもしれないが、おかげで二人乗りの減点を喰らっただけで済んだのである。やはり常習犯なのかとは思ったが、この時ばかりは犯罪者の背中が頼もしく見えた。
結局その後は自転車を降り、二人で電灯の残る道を歩いていった。じきに離ればなれになる。夜風が暖かくなったように思った。
この作品の作者は
Nanasi1074さんでした!
予想結果: NorthPole×2, Gokipo, Nanasi1074, CRC-601×2
ずっと、後悔していること。今だから口に出せる過ちだ。
俺とお前は1つの想いを共有する間柄だった。
馴れ初めは高校1年の図書委員会。一緒の当番だった俺たちは簡素な自己紹介だけして仕事をこなしていた。最初は無愛想な奴だと思っていたが、いつの日だったか、本を読んでいる姿に目を奪われた。文字を夢中で追う瞳はとても純粋で、茶色の虹彩は物語に耽っており魅惑的だった。
委員会が変わる前に、俺は思い切って告白した。お前は、美しい瞳を細くして笑い「こちらこそ」と言った。
告白は交際へ、交際は同棲へ、高校を卒業した俺たちは着実に関係を深めて、互いの好きと嫌いを確かめあって過ごしていった。
だが、全てが順調に進むはずもなく、ある日俺たちは喧嘩をした。きっかけはもう思い出せない。それほどに些細なことだった。
口論の末にお前は家を飛び出した。もちろん、俺もすぐに後を追った。
俺に追いつかれまいと走るお前はそのことにばかり意識を向けていて、横断用信号の警告に気がつかなかった。
けれど、俺は気づけた。お前と衝突するであろう鉄の塊を視界に収めて、全力で走った。火事場の馬鹿力というべきか、俺はお前を突き飛ばすことに成功し、意識を手放した。
そうして気づけば見知った家で、こんなふわふわとした存在になっていた。
何が起きたのか、澱んだ瞳に涙を滲ませて俺の写真を眺めるお前の姿を見て理解した。
「俺は、あの時どうすれば良かったんだろうな」
俺の声はお前の泣き声にかき消されて届くことはない。その事実が、ひたすらに苦しい。
だからもう、前に進んでくれ。愚かな俺を赦してくれ。お前がそんなに泣くから、俺はいつまでもお前の隣に憑いてしまうんだ。
この作品の作者は
CRC-601さんでした!
予想結果: NorthPole×2, Dr_Knotty, Nanasi1074, CRC-601, tateito
その村人が心惹かれたのは同性の男であった。抱えきれない恋心とタブーを犯す背徳感に悩み村人は、その村一番の賢人と言われた男のもとを訪れ、教えを乞いた。
村人は、己の罪を己の話として打ち明ける勇気がなかった。あくまで"知人"の話だが、と前置きし、賢人に向かって話し始めた。
賢人は、神の御前において、生物としての使命に背く「同性愛」という行為は許されないことだと、その男の普段の態度と変わらない、村人の思った通りの事を言った。
私の"知人"は、今にもその相手に心中を打ち明けたい衝動が抑えられないのだそうだ。日々の仕事は手につかず、村の女達にも心惹かれず、誰と話すにも上の空。どうすればいいのか、と続けて尋ねれば、賢人はこう答えた。
そんな愛欲も許される時代がじきに訪れる。
それは、神ではなく、人が人を裁く時代だ。
神は許さないだろうが、私は許そう。と、彼は指を立てた。
耳を疑った。誰もが憧れる村の賢人が、まるで支配者のようなことを宣うなんて。神の教えに背こうとすること自体が罪なのだ。絶対である神に代わって人を裁くなど、誰にもできるはずがない。
村人は幻滅した。同時に、この男が恐ろしくなった。人一倍神に忠義だと思っていた、物腰柔らかな賢人が、内心ではそんなことを考えていたこと。この悪人と同じように堕ちる所だったのだと良心の呵責を感じていた。立ち去ろうとする村人を、賢人は呼び止めて告げた。
その"知人"を、私の元に連れてきてみろ。
村人は、内心ひどく狼狽した。
神に叛逆しようとする怖いもの知らずの顔が見てみたい。さぞ私と気が合うだろう。と、賢人は続ける。
村人は振り返ることも行くこともできず、立ち尽くした。
この作品の作者は
EianSakashibaさんでした!
予想結果: CRC-601, EianSakashiba×5
ギャングのアダムは禁断の果実を口にして全裸は恥ずかしいと認識した。原罪である。
表通りで生きられない奴らの価値観では手当たり次第に搔っ攫う行為はヒーローに見える。アダムもそうだった。耳障りなエンジン音のバギーをかっ飛ばし「元」持ち主の返り血が付いたアルマーニを愛用する。ある夜12年物のワイルドターキーに合いそうだと果実を肴にして、その途端に羞恥心が芽生えた。
「よォアダマス…服なんか着てどうした」
ギャングには女の相棒がいた。愛称で彼を呼ぶその女はリビングにいた。
「お、おいイブ、俺ァあの青林檎食ってからおかしいんだ」
「寒気すんなら医者行け医者。かっぱらったトパーズ売りゃあ薬代も間に合う」
「違えんだ。なんか、今までの俺が恥ずかしいって思えて」
「…あ?」
イブは相棒の男を睨む。
「やってきた事を後悔してんのか?」
「今見えてるモンがおかしいんだ」
「愛を凌辱して地球を救うって息巻いてたのはてめぇだろ」
「取り下げる気はねえ。ただ…自分騙して掲げる美学は美しくねえからお前に打ち明けたんだ」
赤い顔で「相棒の、お前に」と呟く男にイブは神妙な顔をした。後ろの壁に貼られたのはジョーイ・ギャロのポスター。
「アダマス、今俺の悪口10言えるか?」
「100言える」
「チャームポイントは?」
「1個、心から言える」
「フーン…」
正気なら仕方ないという顔で女は、相棒の手から禁断の果実を奪った。
「いいぜ、お前と一緒に足洗うのも悪くねえ。ギャングは恥ずかしいんだろ?」
「え、いや恥ずかしいのは」
言い終わる前にイブは咀嚼を終えて喉を鳴らし、目をぱちくりさせてアダムを見る。
「あー、これは確かに、恥ずいな…」
そう言って女は股と胸を両手で隠した。
この作品の作者は
Rivi-eraさんでした!
予想結果: NorthPole, Dr_Knotty, EianSakashiba, Rivi-era×3
「知らなかったんだ」
それは大それた責任転嫁とありふれた現実逃避。全ての咎につながる言葉、それだけのこと。
水底に沈みかけたボルトと、それだけを照らした月明かりの反射が網膜を焼いて、焦げた記憶が脳を焼く。ポケットに隠した右手の震えは止まらず、ただ軋むような音がする。込み上げた吐き気は暗い淀みを足元に広げ、私が罪の証を引きずることを余儀なくさせる。いずれこの轍が、私を殺すのだろう。
型は違えど共に生まれ、同じ時間をそれぞれの針で刻んできた。歯車は、一つ狂えば全てが止まることなど判っていたはずなのに。
君が誰から好かれ、誰と共に歩もうと、私には私の道があり気にかけたことなど無かった。ただ月に一度、君と語り合えるだけの時間を待っていたはずだ。共に生まれた時から刻む、違えど同じ小さな音が、やがて脳から体に響き、私の全てのメトロノームへと。
君が私と共に生まれ、兄弟と慕い過ごしたその日々のように、私たちが共鳴していた証が欲しかった。ただそれだけだった。君に戯けたように頼んだその願いが聞き入れられ、私の掌に握らせたあのボルトが、私に使われている物のと唯一同じ型番だったことなど私は知らない。
ただ願いが聞き入れられた喜びだけを胸に、後日動かなくなった君を見たのだ。全ては足りているはずなのに、彼が動かない理由は主治医でさえ分からない。もう聞こえない彼の刻む駆動音が、私が立ち去る理由だった。
同種の恋慕も、くだらない情動も、全てがこの世界ではタブーであって。さっきまで手に握られていたボルトの型は、もう製造が止まっていて。
知らぬまま、逃げる。初めから背負っていた闇の中へ。
この作品の作者は
tateitoさんでした!
予想結果: Gokipo, tateito×3, Musibu-wakaru, eagle-yuki
「後生だ、お願いだよ、許してくれよ、反省してるんだ、償いの為にだったらなんだってやる、どうか、許してくれ、許してください、どうか、どうか」
跪いて哀れに許しを請う被告人に対して裁判官と検察、傍聴人達は冷たい目で睨め付ける。弁護人は義務の為だけにその場にいる。
「ちょっとガキ共を10万人程度を奴隷にして、その家族を殺させて、面白半分に拷問して、死体を街中にぶちまけただけじゃねえか、それでその罰はあんまりってもんじゃねえか、どうか、どうか」
裁判長は判決を下そうと口を開く。被告人は最後の言葉を振り絞る。
「どうか俺を死刑で済ませてくれ!」
「被告人を大統領就任刑に処す」
「大統領、お時間です」
「ああ、わかってる」
この国で行われるサミット、主要国首脳会議でホスト役を務める私はいよいよ他国の首相・大統領たちと直接会談することとなった。お互いに笑顔で握手しハグしあう。自分と同じ立場にある人と会う機会は少ない。ある首脳は笑いながら泣いていた。ああ、その気持ちはわかる。
「では大統領」
「ああ、わかってる、わかってるさ」
ああ、頼むから、今からでも私を殺してくれ。どんな残酷な殺し方でもいい。それか、地獄にでも落として永遠の業火で炙り続けてくれ。
こんなことになると知っていれば誰も殺していなかった、こんなことになる可能性があるとわかっていればなるべく早く自殺していた、こんなことがあると思いついてさえいればこの世に生まれてこなかった。
やめてくれ、やめてくれ、やめてくれ、やめてくれ、やめてくれ。
大統領達は世界的な気候変動対策のための条約に署名した。彼らは歴史に残る偉業を成し遂げた。
この作品の作者は
Musibu-wakaruさんでした!
予想結果: NorthPole, Rivi-era, Musibu-wakaru×4
なぜか大事なことばっか忘れちまったような気がして
頭ん中の色んな記憶が
溶けて引っ付いて歪なひとつのボールになって
朝か夜かも分からねえ
なんか道路のことだって忘れちまったような気がして
砂利や煉瓦や色んな道が
溶けて引っ付いて歪なひとつのボールになって
前も後ろも分からねえ
足元ではとろとろのなんかが寝そべって
きちゃねえなあなんて見ていたら
伸びて縮んで這いずって
一本の道が生えていた
俺は仕事に行こうと思って
ただ一本のその道をずんずんずんと進んでく
なぜか仕事のことだって忘れちまったような気がして
鞄の中の色んな書類が
溶けて引っ付いて歪なひとつのボールになって
スウツを着るかも分からねえ
なんか昨日のことだって忘れちまったような気がして
外の太陽と色んな夕日が
溶けて引っ付いて歪なひとつのボールになって
夢も現も分からねえ
耳元ではいつかの思い出が囁いて
うるせえなあなんて聞いていたら
伸びて縮んで這いずって
一本のニューロンが繋がった
俺はあんなに優しい友を置き去りにして逃げ出して
ただ一枚のその扉をずんずんずんと閉めてしまった
俺はあんなに優しい友を置き去りにして逃げ出して
ただ一人だけシェルターにずんずんずんと篭ってしまった
俺は友に会おうと思って
ただ一本のあの道をずんずんずんと戻ってく
なぜか自分のことばっか忘れちまったような気がして
悪事や悪意や謝罪の心も
溶けて引っ付いて歪なひとつのボールになって
ごめんの言い方も分からねえ
なんか明日のことだって忘れちまったような気がして
友の笑顔と珈琲の湯気が
溶けて引っ付いて歪なひとつのボールになって
俺の右足と左の腕が
溶けて引っ付いていつしかひとつのとろとろになって
とろけた先で交わった
この作品の作者は
eagle-yukiさんでした!
予想結果: Dr_Knotty×3, Gokipo, Nanasi1074, eagle-yuki
本当に、本当に失礼いたしました!
そこでドブ臭い血を吐いて転がっている旦那様が今夜、畏れ多くも魔女様を手にかけようとしていたこと、心よりお詫びいたします!
……あっ。私、私のことを覚えていらっしゃいますか?昨年、旦那様が魔女様の下にお伺いした時……ハイ!そうです!その時の端女です!
あの日、瞳の色を褒めていただけた時から……いえ、貴女様の御姿を拝見した瞬間から!私は魔女様の虜でした!
旦那様が魔女様と結ばれれば、私も魔女様の御側にいられる。そう信じこの一年、お二人の恋路を応援しておりました、が!先月、あの男は使用人達の前でこう言い放ったのです!「魔女を殺し、その地位と財産を全て奪う」、と!しかも私以外の使用人は皆、あの男を讃えるばかり。正気だったのは私のみでした……。
それから私は手元の財産と右の瞳を売って得た資金を全部使い、いかなる術式にも反応しない毒薬を昨日、ようやく手に入れたのです。本当に、間に合って良かった……!
「初めてだったんだ。千年生きて初めて出会えた、私を殺し得る男だったのに。あの男になら総てを委ね、殺されても良かったのに」
いいえ、そんな悲しいことを仰らないでください!魔女様は一時、ほんの一時、あの男に誑かされていただけなのです!悠久の時を生きる魔女様は、この世全ての命から永久に愛され続けるべきなのです!
「黙れ。真の愛も知らない癖に……!」
その光……私を殺すのですね。いえ、罪で穢れたこの命。その御手で終えられるというのなら本望です。贖いを終えるまで……私が来世を迎えるまで、魔女様がお変わりなく過ごせる事を願っております。
「──死ねぇッ!」
では。魔女様、またお会いしましょう!