この作品の作者は
tateitoさんでした!
予想結果: tateito×2, AAA9879, aster_shion, Enho_Osho×2
法改正により白昼に出現する事が許可された妖怪達は瞬く間に人類の半分を喰い散らかした。
人間は闇と同時に光をも恐れるようになった。人間に残された安息の時間は黎明と夕暮の穏やかな薄暗さの中のみであった。その僅かな瞬間さえも妖怪団体のロビー活動により危機的状況に陥っていると巷で噂されている。
「なぜこんな深夜に人間がいる!?」
妖怪企業の社長、輪入道は政権与党に企業献金として尻子玉5000個を送る手続きを済ませたばかりであった。オフィスでは数名の妖怪達が残業で残っていた。
ドアを破って現れた一人の人間はパジャマにナイトキャップを被った男だった。
「昼が妖怪の時間になったならば夜こそが人間の時間だ。そして、妖怪は人間を恐れ、隠れすむようになるのだ!下郎共!」
狂人!輪入道は確かに恐怖を感じた。意味が分からないことに対して妖怪は何を思うべきなのか?笑い飛ばすべきか?恐れ慄くべきなのか?ともかく、狂人が自分に対して罵ってくる際に出来ることは多くない。
「殺せ!殺せ!喰い殺してしまえ!」
部下の泥田坊が制圧しようと駆けだすと、狂人は逆に驚くべき力で泥田坊を持ち上げ、壁に押し付け磔にして、そのまま両の手を振るい正中線上で真っ二つに引き裂いた。他の部下達が恐怖に怯え腰を抜かしている中、狂人は泥田坊の心臓を啜り喰らう!
「さて社長、次はあんたの番だな」
返り血塗れの狂人の表情はしかと確認できない。輪入道はその燃える車輪の中にある青ざめた顔に脂汗を浮かべた。
狂人には話が通じない。
時は今、午前6時。ふと外を見る。太陽光が窓から差し込む。
朝日に照らされた狂人は、煙のように消えてしまった。
「……人間が一番恐ろしい」
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Rivi-eraさんでした!
予想結果: Rivi-era, Tsukajun, eagle-yuki, AAA9879, Ruka_Naruse, Mtkani_666
エンジンの排気音と散らす砂埃が後方へ伸びて行く。
湿度の高く茹だるような大気が、身を切る風に乗って体を撫でる。遠くではヌーが歩きだした。
「ねぇ、眠い?」
「いや」
「本当は?」
「知らない」
相棒の茶かしを適当に誤魔化す。本当は眠い。橙が藍に滲み始める空の下で、雄鶏もやっと仕事をし始める前に出てきたからだ。
「まぁでも、早く出てきて良かったよね」
「うん、ボク達には関係ないことだから」
「そうだねー。報酬はもらったし長居する理由もないしね」
少し大きくなってバランスが少し悪くなった荷物も、この時間だと気にしなきゃいけない。色々と新調した相棒はそんなことはどこ吹く風だ。
「まだ、気にしてる?あの子の事」
「…いや」
「本当は?」
「本当」
長らく一人でいた彼女を、また一人にしてきてしまった事を相棒は言っている。一人で変わらない暮らしをしていた彼女が、初めて踏み出そうとした一歩を断るのが本当に正しかったのか。彼女に黙って出てきた選択が正しいものだったのか。
「きっと、彼女なら大丈夫…だと、思う」
「そう?」
「うん」
彼女の勇気と、あの環境さえあれば、きっと大丈夫だろう。次に会う時は、道の真ん中になるはずだ。相棒の知らない、彼女のくれた手紙の重さをそっとポケットに感じ、轍は明るみ出した地平線へと駆けていく。
砂埃も、残った轍もすっかり消えてしばらく経った頃。一人の旅人が門をくぐり、一つの国が静かに幕を下ろした。
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Tsukajunさんでした!
予想結果: Rivi-era×2, Tsukajun×2, Mtkani_666×2
夜明けをジュースにしたら、きっとブドウ味。そんなくだらない話をしたこともあったね。窓際に置かれた孤独なグラスにはそんな至極色が溶け込んでいて、表層についた雫が君の表情を薄く隠す。僕たちは混ざりあえたように見えたけどそんなの全然勘違いで、ただ自分以外と月を見るのが初めてだったから、まるで生まれ変わったかのように喜んでいただけだった。まぁ、遠目で覗いてた人達からは、それはそれは美味しそうなフロートに映っただろうけど。冷たいグラスからアイスクリームは数刻前に逃げ去っていて、ブドウは今日の死を祝福するかのようにミカンへと転生する。ぐちゃぐちゃだ!涙一滴ドロップした所で何も変わりやしない。得てないくせに失ったような顔をして僕たちは、初めて小指で握手を交わし、形だけでも心中立とうとした。けれども、残念なことに最外層にしか触れられなくて君か人かを判別するのは難しかった。1人と1人と120mgの空間は酷く不親切で暗闇の紡ぎ方も教えてくれなかったから、ただ君の氷った温もりを染み込ませていると、お互いの数少ない共通点が末端冷え性だったことにふと気がついて。相変わらず冷たいねって、そう言おうとしたけれど、いつの間にか君は僕の最外層を空と結びつけていて、そこで漸くあぁ本当に千切れたんだな、と認めることができたんだ。秒針が真上を指差し、カチリ、と厭に響く。森閑は存在しなかった。
さようなら。グラスに残った生ぬるい水道水は、口に入れたとて、これっぽっちも飲み込めやしなかった。
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eagle-yukiさんでした!
予想結果: eagle-yuki×2, CRC-601, Ruka_Naruse, EianSakashiba×2
「お前さァ、早くブッタ切られた方が楽って分かんないワケェ?」
眼前には、バカみたいな大鎌を持った女。そいつがアホ丸出しの得意顔で金のツインテを揺らし、西日を背に嗤っている。
「アタシが教えてあげるけどさ、躱されたの60発。アタシのラブ鎌に弾かれたの28発。脇腹掠ったの2発。そんだけ撃って、お前はまともなダメージいっっっかいも与えられてないの!芋やめて白昼堂々殺りに来たのはイイけどォ……下手な鉄砲は数撃っても当たんねぇんだよ!」
「腹から血ィ出てんじゃん」
「掠り傷は無傷と同義だバァァッカ!」
激昂させてしまったらしい。本日最高速度でカッ跳んで来た。躱し切るのは少しキツイ。仕方なく、銃身を盾にして受け止め──た所で私ごと真っ二つがオチだ。なのでアサルトはこうして奴にぶん投げ、身代わりとする。
さて。これで手元が空になった。ツインテが、是見がしに私の得物の残骸を踏み躙る。そして再度の振り被り。これが最後の一撃と、そう信じ切った弛み顔。
その一振りを待っていた。
間合い取っての銃撃に拘ったのが報われた。その横振りはこれまでで一番大きく、遅い。懐への滑り込みと上体捻りで余裕の回避。分かりやすく油断が見える。ホント可愛いなコイツ。
捻りはそのまま、正拳を放つ力に転換。この特製の籠手こそが私の本命。顔面捕捉。拳と共に弾丸を放つ。愛と火薬をたっぷり詰めたマグナムだ──!
「──アンタ、サイドテールも似合うね」
「ホンットお前……!全力出すの、ダリィってのによぉ……ッ!」
ああ、勿論この程度じゃ仕留められないよな。でもやっとだ。やっとお互い、マジで殺り合い、逝かせ合いができる。夜はまだ浅い。朝チュンまで楽しもうぜ。
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AAA9879さんでした!
予想結果: AAA9879, hallwayman, Dr_Knotty×3, Enho_Osho
ミラーマンを知っているか。
その名はクラスの話題をかっさらうには十分であった。1週間前に誰かが見たと言い、3日前に追いかけられたと佐藤君が必死に訴え、そして今、東斎さんが私に言った。カラスがスマホをミラーマンの住処へ攫った、と。
時は昼休み。所は学校から徒歩5分のボロ屋で、我が家の系列企業の所有不動産だ。
即断即決は我が家の家訓である。
弁当を平らげ、東斎さんを引っ張って向かう。ボロ屋は2階部分の窓が割れており、カラスが出入りしている。この私、覇天絢爛は初めてのピッキングを決意し、白昼堂々即実行。
2人で押し入った内部は、床が腐り蜘蛛の巣が入り乱れていた。幸い階段は腐っておらず、蜘蛛の巣を払いながら2階に辿り着くと、朽ちたドアの隙間から見える床に、きらりとスマホの画面が反射していた。
これ幸いと部屋に入りスマホを拾おうとすると、背後の東斎さんから尋常ならざる悲鳴が上がった。
振り向きざまに懐からスタンガンを投げ放つと、浮遊した市松人形の長い髪が東斎さんの首を絞めている。髪で弾かれたスタンガンを身を回して避け、その回転で時計をサック代わりにした拳を叩き込む。チタン製に敗北し落下した人形を踏み砕く。
しかし背後から首を絞められ、先とは比較にならない素早さで手足を縛られる。市松人形は、2体いた!
身をよじるも振り解けそうにない。足元のスマホを蹴り飛ばす。当然弾かれるが、反射した日光が人形をわずかに焼いた。苦しげな悲鳴と共に締め付ける力が強くなる。万事休すという言葉は嫌いだ。
その時!
割れた窓がさらに割れ、きらめくガラスと共に全身を鏡で包む男が現れた!全身で日光を反射し、市松人形の動きを焼いて封じる!
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hallwaymanさんでした!
予想結果: Tsukajun, hallwayman×4, Mtkani_666
「あれが深夜の人のいない山道で、だとか夕暮れ時の曰く付きの廃墟で、とかならまだ納得したんですがね…。」
その話をしてくれたBさんは、困惑を含ませながらそう呟いていた。
あの日は確か八月の、お昼前だったんじゃないですかね。
そもあの日は、同僚二人と朝から営業であちこちに挨拶しつつ事前の段取りを終えていつも通ってるお店でお昼を食べようとね。
それで通りを歩いていると目の前に人だかりの場所ができてたんです。
「あれが白昼夢だとかなら良かったんですよ?でも同僚も周りの他の人もそれを見てた訳です。」
女の人がうずまって何かを叫んでたんです。
どこにでもいるような、灰色のシャツの若い女の子が、
「誰か助けて」 「背中から離れない」 「引き込まれちゃう」
と嗚咽混じりに。
周りの優しい人達は「大丈夫か?」とか「救急車とか呼びましょうか?」と尋ねているんです。
なんだろう、危ない薬をやった人かと思い、自分たちは脇を通り過ぎようとしたら、自分たちの右隣の人混みに向かって手を広げて覆い被さって。
三人くらいがその子のせいで地面に倒れたんですね。
倒れるだけのはずだったんです。
いきなりその子達が足の膝まで地面に沈んでいって、
「あの」
名札を首から下げた、サラリーマンの、何かを叫ぶ口が地面の舗装に飲み込まれていきました。
あれを見たら、何も言えませんよ。
周りも皆んな静まり返ってました。
だってですよ。肉の体を持った人が、硬い塊の地面に、溺れてしまったんですから。
でも何故か、ふと。
「集魚灯みたいな物だったんだな」
「どんなに太陽が出てたとしても、異様な物は現れるんですねぇ。」
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CRC-601さんでした!
予想結果: Tsukajun, AAA9879, CRC-601×2, Hoojiro_san, Ruka_Naruse
『どうしたんだよ、その頭』
『ふふ。髪の毛、長くしてくれたの。どうかしら?』
『絡まって危なそうだし、電気製品に触れたらショートしそうだ』
『人間みたいで好きだけどなあ。もう、前までのことは考えなくていいのよ?』
長かった戦争が夜明けを迎え、「兵器」だった僕たちはその職を解かれた。損傷が少なく再利用された仲間たちは今や、一般社会に溶け込み人々の為に働いている。戦いの為に生まれたアンドロイドは、平穏と化した世界に順応しありふれた存在になった。今日も、僕たちが終戦後初めて派遣されるその日だ。
『お前は気抜きすぎだよ。仕事の内容とかまだ分かってないんだから。にしても、なんでそっちは人間の女みたいな喋り方までさせられてるわけ?』
『私も違和感ありまくり。男の子と女の子のアンドロイドがご所望だったみたいで、私が女の子役に抜擢されたみたい。性別なんて考えたことなかったけどこれから私、可愛らしく振舞えるかしら』
『それで僕の方は男の子役ってことか。何させられるんだか』
作動音をひそませ、自らの第二のアンドロイド生への想像を膨らませていたその時。僕たちの入っている箱の外が明るくなった。続いて、誰かの足音がどたどたと響いてくる。
『子供かな?』
『そういえば私たちの輸送先は一般家庭だったわね。そこから別の仕事場に連れられるんだと勝手に思ってたけど』
『誰だろうと変わらないよ。僕たちは依頼主の要望に従うだけだ』
『そうね。今日の日付は12/25です。本日の業務も、ご安全に』
『うん。ご安全に。』
乱暴に破かれる包装。僕たち二人はその隙間から部屋中の華やかなオーナメントと、少女の満面の笑顔を感知した。
「お人形さんだぁっ!!」
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Hoojiro_sanさんでした!
予想結果: Hoojiro_san×5, Enho_Osho
もう下半身の感覚がない。そりゃそうだ脚の痺れも無痛になる時間も正座しているのだから。その癖に薄っぺらい座布団の感触がやけに騒がしい。壊れたラジオみたいに雑音の漏れる般若心経が弔う遺影の少女の名前さえ、誰も彼も泣くのに忙しくて教えてくれない。グレースケールの視界に映る気持ち悪いくらいに鮮やかな写真。その顔の輪郭がぼやけてしまっているのが眼鏡のせいじゃない。もうとっくの昔に気が付いてしまっている。大学生の僕が幼稚園の頃に逝去した母さんの膝に座っている違和感にさえ感じなければ。今もなお腐り続ける時間の牢獄に鍵はないようだ。
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Ruka_Naruseさんでした!
予想結果: tateito×2, eagle-yuki, CRC-601, Ruka_Naruse, aster_shion
「刑事さん、そのレシートは何の証拠にもならないと結論が出たじゃないですか」
夕飯時のスーパーで、刑事と主婦がそこに似つかわしくない険悪な空気を醸す。
「レシートに記された時刻は19:04で、貴女の19時頃に買い物をしていたとする供述には一致するものの、犯行時刻と推定される17時前後にここに居たのかを判断する材料にはならないという結論になりましたね」
「そして17時に私が別の場所に居た事を証明する人が居ます」
「一人の証言というのはアリバイとしてやや弱いのですよ、貴女がやったという証拠も現状ない訳ですが」
防犯カメラのない店内おいて不在証明は難しい。現状、主婦のアリバイを支えているのは彼女が赴いていたというマッサージ店の店主の供述と、弁当と緑茶を買ったレシートだけだ。
「つまり"私がやっていない証拠にはならないが、私の供述の裏付けにはなる"という話だった筈です」
「私もそう考えていましたよ。いやはやすっかり見落としていた……さて、そろそろです」
刑事の腕時計が18時を指す。店員がバックヤードから現れ、弁当コーナーへ。導かれるように客も群がっていく……
「貴女の買った"油淋鶏弁当"、私も買いましたがとても美味しかったです。ここの弁当が人気の理由も頷けます、値引きの時間には見ての通り毎日取り合いになる有様だ。店員が割引札を貼った傍から我先にと手に取って、あっという間に売り切れてしまった。
……お解りですか?19時に弁当が定価で売られている事も無ければ、ましてや売れ残っている筈もないんですよ。その弁当を定価で買ったレシートは、"貴女がやった証拠にはならないが、貴女の供述が偽りだった裏付けにはなる"訳です」
この作品の作者は
NorthPole さんでした!
予想結果: Rivi-era, AAA9879, NorthPole×3, EianSakashiba
白昼堂々と行われた凶行はしかし誰にも止められなかった。あるいは単に止める理由が無かったのだろうか。
彼が思うに、この島の中で一本の矢を握りしめてみたところで大した事などできはしない。どうせ皆いやらしい症候群に罹患していて彼を傷つけようとはしないのだし、だからこそ振り下ろされた矢の行き先など誰も気に留めもしなかった。
川岸で俯く後ろ姿に近づいてみて気がついたのは、もはや彼女は長くないという事実だった。右目から突き出た矢はその長さの半分ほどが彼女の顔に埋まっていて、それだけ見れば生きているのが嘘のような状態だった。
「楽になりたくて。私たちは病気、らしいから」
言い訳するように彼女は言った。不用意に触れたが運の尽き。制御を外れたカトブレパスの魔力がすぐさま彼を蝕み始め、手を離す頃には触れた手先から喉の上まで物言わぬ石となっていた。それでも残った左手を伸ばした彼を彼女はしばし無感動な目で見つめた。
「でも、試した方がいい、のかな」
言って彼女は彼の小さな手を掴み、刺さったままの矢を握らせた。彼女はそのままかき混ぜるように手を動かす。何かが削れ、何かが抉れ、やがて彼女の腕は力を失くした。彼にもたれかかりながら彼女は静かに溜息をついた。
「ごめんね。私、ご主人くんのこと、ちゃんと好きみたい」
良かった、良かったと二度呟いて、そして彼女は動かなくなった。常より重い彼女の頭がより重く、冷たい灰色に染まっていく。あまりの重みにたたらを踏んで、そこで水音と共に背中の重さが消え去った。彼はいつまでも彼女の体を抱きしめていた。彼女がすっかり冷たくなっても目を開けたいとは思えなかった。
この作品の作者は
Dr_Knottyさんでした!
予想結果: Tsukajun, eagle-yuki, CRC-601, NorthPole, Dr_Knotty, Enho_Osho
この五分の間に暗闇の中で何度ぎゅっと目を瞑りたくなったか、何度時計を見たか、もう思い出せなかった。この五分の間にずるずるという湿った音が何度近づいて来たかも、何度「終わり」を覚悟したのかもわからなくなっている。ただ確かなのは、「それ」が本格的に始まってまだ五分経っていないということ。そして、夜明けまであと五時間はこれが続くという事だった。
真夜中、二時二十三分。何度となく布団から目だけを覗かせて見つめた暗いデジタルの表示は、ようやく二十四分へと数字を切り替えた。これをあと何回繰り返すのだろう。
夜明けまでこの部屋を出てはならないと祖父は言った。夜明けには必ず迎えに来るから、それまで自分は扉の前にいるから、お前はいい子にして待っているんだぞ、と。少しばかり引き攣った表情で、それでも優しい眼をして笑いかけようとしてくれていた。
その祖父が今、扉を叩きながら呻き声を上げている。悲鳴のようにつぶれかけた声で、「開けてくれ」と「絶対に空けるな」を交互に繰り返している。その合間に扉が叩かれ、その衝撃で床や壁が軋んだ音をたてる。
目は閉ざすことが出来る。見たくないものは見ないでいい。瞼の裏の暗闇は優しいから、ずっとそうやって過ごしてきた。それでも耳は塞げない。どれほど両手で塞いでも、何かが壁に叩きつけられる音は全てを通り越して骨を揺らす。
時計はまだ二十四分。黎明の時まであと五時間。
最も長い暗闇の中で、自分は扉を見つめている。
摺りガラスの向こう、祖父の影らしいものはまだ立っている。
何が聴こえても心を揺らすことなく、自分はそれを見ている。
それを見届けるだけが自分の戦いであると知っているから。
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EianSakashibaさんでした!
予想結果: Rivi-era, CRC-601, Ruka_Naruse, Dr_Knotty, EianSakashiba×2
君は文武両道でクラス委員長もやって真面目な性格で、本当に完璧な人だ。担任の私と恋仲だという点がなければ。
禁断の愛なんて大層なことはしていない。受験期になって部活を辞めた3年生が足早に下校する中、君は委員長の雑務という大義名分で放課後の10分弱、夕暮の教室で私と2人きり。大人の女の真似事で告白したのは私で、君はそんな下手な誘惑に真っ直ぐに返答してくれた。
それから放課後の10分間、夕暮の教室だけが愛の巣だった。授業を聞いている顔や友達と駄弁る顔が橙に照らされている時だけ男の顔になって、その色を知っているのが私だけという事実がチクリとする悦びを感じさせた。似合わない下着を密かに付けてきた時も変わらない。教室の窓から夕暮を見て話すだけ。いじらしく、もっと君の事が愛しく思った。愛しいからこそ、その感情を免罪符にしてしまえば君を将来苦労させるだろうとも思った。
付き合って3ヶ月経っていない夕暮の中、言わなきゃ。
「この関係は今日で終わり。君を苦しませるだけだから。」
「もし、もしね。大学に行って社会人になってそれでも私を愛していたら、夕日を見に行きましょ。教室の中の生徒と先生じゃなくて、教室の外で1人の男と女として。」
ああ、言っちゃった。君はあの時みたいに真っ直ぐ受け止める。オレンジ色の表情は泣きそうな筈なのに、今までで1番男らしく見えた。
ずるいなあ。私はすました顔でファム・ファタールの真似事を最後まで出来なかったのに。楽しみだなあ。君はこれからこんな涙でぐしゃぐしゃの女よりも魅力的な人たちに出会って、今よりもっといい男になっていくんだもんなあ。
それでも、それでも。私のことを好きでいて欲しいなあ。
この作品の作者は
aster_shionさんでした!
予想結果: hallwayman, Dr_Knotty, aster_shion×4
ただ、白い部屋だった。中央に鎮座する大理石の展示台に、淡く発光するボウリングの玉ぐらいの大きさをした光球が浮遊している。扉は見当たらない。壁も天井も床もすべてが白く、継ぎ目はない。閉じ込められたというわけではないのだろう。たぶん私は死んで、ここにいる。
とても眩しい部屋だ。四方は白い壁に覆われ、天井には照明もない。にもかかわらず、目の前に浮かぶ球状の発光体が、私の後ろに黒々とした影を落とす。不思議なところだ。発光体に触れようと手を伸ばす。発光体に触れた指先は痛みもなく消失した。ただ、肉の焦げる匂いだけがここに残る。
目を覚ますと、殺風景なところにいた。僕以外に生きている者のいない、無機質な匣。光源は物体の形をとらず、ただ光っている。声が出ない。床を触ろうとしても、しゃがむことができない。多くの制限がかかっている。本物みたいに感じる光景も、身体を動かす感覚も、それが決して本物でないことを理解させてはくれない。
夢を見ているとすぐに気づいた。自分の身体は自由に動いて、いつもと違うところにいて。いつもより不自由そうで、でもそれが何より自由だった。
この作品の作者は
MtKani_666さんでした!
予想結果: Rivi-era, NorthPole×2, EianSakashiba, Mtkani_666×2
『さびしさはその色としもなかりけり まき立つ山の秋の夕暮れ』
当歌の内実:寂しさ語りしもの、どれかひとつの色彩などと。様々な木々の立つ秋の夕暮れの山は語りき。だいたいはそういう話。
―知りもしない時代の、知りもしない人の話。秋のはなし。
秋。晴れの日の陽射しが軽快な日々。夏という苦労もたかがひと月と、はしただけ。辿り着いた秋の日は優しい慈悲の季。
なれど、物語書きはどうしたものか気もそぞろ。
秋と夕の話は、時代の文字屋が語り尽くしたありきたりな題材。優雅と楚々。歴史の中、愛され続けた。つまり、もはや文字屋の課題の題材だ。
綴り尽くそう、熊とうさぎの果実の宴、流麗な歌が響く森、芸術。藍となびく旗は鮮やかさと透過した。悲痛なまなざしと、鮮やかな白い雲。語り尽さなければいけないと知った。
秋はそう、玻璃。儚いもの。凛々しい空気と枯れかけの葉っぱ、野焼きの香と脆い雲。のろまな夏は露と捌け、秋。夏の呪いの陽射しが光り、飛び急ぐ鳥は高々と。
夕もそう、玻璃。ひた隠した詩のさびしさ。夕暮れとなれば哀愁が揺蕩う。きっとあしたの朝も悲しいのだろうと杞憂し、痴れた者の頭と同化し、悲しくなり泣くのだろう。忙しい頭だ。しかしそれが自由な魂というのだろう。綺麗な、まやかしのない、とうとい魂。夕とは魔物。緋色の夕焼けは、葬送の日のまろやかな歌。もはや失うものも無い、悲しさの怪異。
積もった秋の影は、雪の日の息。白くささやかな光、カナリアの鳴く朝の気配。あなたの持つ悲しさの気配が飛び立つ朝。
この作品の作者は
Enho_Oshoさんでした!
予想結果: tateito×2, eagle-yuki, AAA9879, Ruka_Naruse, Enho_Osho
Q. 『日本の夜明けが近い』は坂本龍馬の残した言葉であるか
A. 誤りです。映画「鞍馬天狗」におけるセリフです。幕末が舞台であるために混同されたと考えられます。
Q. 『散切り頭を叩いてみれば、文明開化の音がする』は福沢諭吉が詠んだ句であるか
A. 誤りです。明治4年に流行した言葉ですが、その作者は不明です。「文明開化」は福沢諭吉が「civilization」を訳した際に用いた語です。
Q. 文明開化の「音」とは何か
A. 時代が江戸から明治に移り変わり、国民の生活様式に変化が生じました。1871年に散髪令が出され、西洋風の髪型が一般に流行し「散切り頭」は文明開化の象徴とされました。その頭を叩いた際に奏でられるメロディは従来の日本には到底無かったもので、明治初期の流行歌となりました。
Q. 音にはどのような効果があるか
A. 緊張を和らげ、幸福感をもたらします。また、鎮静効果も見られます。そのため現在では研究が進み、医療の現場でも活躍しています。しかし、使用頻度や過剰摂取により幻覚、幻聴、妄想などの副作用が現れる場合があります。明治時代にはそれを規制する法律が無かったため、中毒者が多く存在しました。
Q. 散切り頭が解禁される可能性はあるか
A. 現在では難しいとされています。規制の緩和により、多くの中毒者が現れることは目に見えて明らかです。政府はそれを良しとしません。
Q. 丁髷に飽きたので違った髪型を試したいが何があるか
A. 僧侶のように頭を剃り上げる、または後頭部の髪を残して辮髪にするというのはいかがでしょう。
Q. 辮髪は我に似合うか
A. お任せください、格好良く仕上げますよ。