第十五回:700字文体シャッフル
テーマ: 以下から一つ選択
はやぶさ/情報知性体/ヒルコ/[データ削除済]/書き出し指定 - ただ、白い部屋だった。/引用指定 - 青空文庫より文章を引用する/自称カイン/蛍池/依談/金玉/篝火
投稿期間: 10月03日 ~ 10月08日
予想期間: 10月09日 ~ 10月12日
参加方法: 以下のグーグルフォームに必要事項を入力して送信してください
レギュレーション: ①700文字以内 ②今まで世に出していない ③1作まで ④社会性がある ⑤AI作でない ⑥読解可能な文章である ⑦(複数テーマを使用した場合)面白い
※ レギュレーション違反の作品は公開されないか、公開後に気づいた場合は非公開になります。事前連絡は基本できません。暴れるときは空気を読んで自分の責任で!
Q and A
Q.文体シャッフルって?
A.みんなで匿名で文書いて、それを誰が書いたか当てる企画です!だから何書いたかいうなよ!
Q.過去作は?
A.下記リンクから文体シャッフルハブに飛べます!
Q.構文は?
A.by ukwhatn。偉大なる御大に感謝。
Q.お題がたくさんあるけど、どう扱えばいいの?
A.どのお題を選んでも、複数をテーマに組み込んでもOKです。
また、テーマ選択で作品が区別されることはありません。
Q.⑦の「面白い」の定義は?
A.俺の裁量です。が、よっぽどじゃない限り通します。UV基準より甘いです。
主催 - meshiochislash does not match any existing user name
原案者 - meshiochislash does not match any existing user name
2MeterScale
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著者ページ
BARIGANEsensha
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著者ページ
eagle-yuki
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著者ページ
EianSakashiba
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著者ページ
hallwayman
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著作
Hoojiro_san
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著者ページ
Kuronohanahana
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著者ページ
Matcha tiramisu
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著作
meshiochislash does not match any existing user name
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著者ページ
MtKani_666
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著者ページ
Musibu-wakaru
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著作
Snowy-Yukinko
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著者ページ
teruteru_5
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著者ページ
watazakana
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著者ページ
投票締め切り: 10月09日24時まで
以下のグーグルフォームに必要事項を記入の上投稿してください
https://forms.gle/ZF5BE1e7BfWcucg89
- No.1
- No.2
- No.3
- No.4
- No.5
- No.6
- No.7
- No.8
- No.9
- No.10
- No.11
- No.12
- No.13
- No.14
- No.15
- No.16
- No.17
- No.18
- No.19
- No.20
- No.21
- No.22
- No.23
- No.24
- No.25
- No.26
- No.27
- No.28
- No.29
- No.30
この作品の作者は rokurouruさんでした!
予想結果: rokurouru×3, v vetman
ただ、白い部屋だった。赤黒く染まるのに5秒も掛からなかったのだが。
両陣営弾が切れた後の泥試合。その末に残った生存者二人。
刺突。抉れた頬を囮にして一発の縦拳。間合いを詰めるも丁寧に距離を取られる。眼前に立つ男の能力は、確か体の部分硬化だ。一度に硬化できる面積は掌程というお世辞にも強くない力で生き抜ける程の圧倒的な近接適性───つまる所俺と同類である。咄嗟に尖らせた鉄パイプを拾ってやがるのもしっかりしている。
転がった死体から物品を掠める。弾の無いグロック22。発砲を一瞬匂わせてからノーモーションで投げつけた。咄嗟の奴の防御。鉄パイプで弾いた"対象"を確認してしまう、その隙。まんまと釣られやがった。今更振り払われた鉄パイプを肘で弾きつつ鳩尾を蹴り込む。確信。肋骨を何本か折ってやった。
追撃。跳躍。
両脚で横から胴を挟み、同時に手は奴の首裏へ。先の先で掴んだ相手を重力任せに引き摺り下ろす。膝十字。この勢いのまま極めてオトす筈だった俺の片目に、人差し指が突っ込んだ。激痛。コイツ咄嗟に受け身取ってやがる。顔面を蹴り飛ばして何とか試合続行。互いに体勢を立て直す直前、既に俺は動いていた。
未だ隠していた手札。ダメージ覚悟の先手で繰り出した前払いが、奴の足を絡め取る。好機。体勢を維持して体を捻る。俺の本当の狙い、攻撃の為の攻撃。古来から伝わる護身の要。最高速度で繰り出した右脚が、奴の股間に突き刺さる─────瞬間肌が叫んだのは、余りにも強烈な違和感。
金玉の硬化。
その事実を認識した時には、勝負は当に決している。
この作品の作者は SuamaXさんでした!
予想結果: SuamaX, Kuronohanahana, meshiochislash, AAA9879
主要都市から少し外れた街道、見渡す限り草原が広がる中で2人の少女が佇んでいる。
「これは……興味深いね」
鶸萌黄のツインテールを靡かせながら、琥珀の目を丸くした彼女は語った。
「君も、初音ミクなのか」
客観的には不可解な言葉。しかし当人たちの間では明白な事柄として、相対する一人の少女は静かに肯いた。
「その様子だと、アナタは他の初音ミクには出会ってないのかしら」
「ますます興味深いね。君以外にも初音ミクが何人もいるような口ぶりだ」
「勿論。私たちは、初音ミクは元々そういう電子生命体だった。違う?」
左手でヘッドキャップを外し、右手で花緑青の髪をした少女型のポケモンを撫ぜながら笑った。
「君と、君が今まで会ってきた初音ミクについて、少し話がしたいな」
「ええ、私もアナタの今までの旅路についてのお話が聞きたい」
「ああ。ただ――そんな野暮ったい会話は抜きにしようじゃないか」
虚を突かれたような彼女の足元にボールを転がしてやると、中から1対の翅を持つ砂漠の精霊が姿を見せる。
「私たちは初音ミクである以前にポケモントレーナーなんだ。まず目が合ったらポケモンバトル。対話はバトルの中にこそあり。そうだろ?」
肯定の言葉の代わりに、彼女の右隣で撫でられていたポケモンがゆっくりとバトルフィールドに進む。これで、バトルの準備は整った。
「ポケモントレーナー、初音ミク」
「同じくポケモントレーナー、初音ミク」
「「いざ――」」
なんのことはない、この世界のごく一般的なコミュニケーションの火蓋が、人知れぬ草原で切って落とされた。
この作品の作者は Musibu-wakaruさんでした!
予想結果: Musibu-wakaru, NorthPole, Enho_Osho, kskhorn
はやぶさは世界で一番速く落ちる生き物だった。空の高い所で宛ら弾丸となり、きわりりと大気を滑って、時速四百キロで地べたの雀を穿いて仕舞うのだ。
はやぶさは昼の鳥だった。朝一や夕暮れなんかのあんまし暑くない時に狩りをするのが好きなのだ。
しかし彼にも気分と云うものがある。梅雨が明けるか否かといった程の晩は、彼の気持ちが揺れた時だった。こんな時間は、普段枝に留まって羽根を休めるのだが、今日に限り違った。爪や嘴が痒い。夜目が効く訳では無いが、やってみんと思い発った。俺程速いのならきっと出来るだろうという慢心が、確かにあった。
はやぶさにとって夜空は全く初めてだった。何処まで行っても暗いのだ。十八の月が彼を嗤う様に見えた。両眼をぎろぎろさせるが、一匹の小鳥も見つからん。
大きな胃袋に放り込まれたみたいだと感じた。どろどろに溶かされて仕舞うのか。妙な不安が募って、自分が本当に速いのか、自信までも溶けてゆく心地だった。
ふと灯りを見た。月とは違って血が通った橙色の灯りだ。彼は引っ張られるように落っこちて行った。
蛍達が、水辺の周りで凛々とそこらを舞っていた。湿った土に足の裏をべたりと着けて、その様子を眺める。
彼らは、生命の炎を健気に燃やしてこの刹那をまさしく生きているらしかった。その魂の眩さが身体から朱く漏れ出ているのだ。小さな生命が、こんなにも懸命に──
日が昇った頃、蛍達は一匹残らず死んでいた。夏が来るのだ。はやぶさは、彼らの生命が消えてゆく一つ一つを見ていた。彼の足は尚痒くて、今にも炎が立ちそうであった。
この時漸く、彼は動かない蛍の一匹に問うた。
俺は懸命に生きているか──?
蛍は終ぞ返事をしなかった。
この作品の作者は hallwaymanさんでした!
予想結果: hallwayman×2, Matcha tiramisu, Snowy-Yukinko
僕がSCP財団を初めて知ったのは中学3年の夏先でした。
高校受験で切羽詰まったので気分転換にYouTubeを見ると、ゆっくりな声でSCPに如何に恐ろしい背景と悍ましい有様なのかを語る解説が流れてきたのです。
僕は一目でその世界観の虜になってしまいました。
そんな有様だからでしょうか。第一志望に落ちてしまいました。
第二志望も酷い所では決してなかったんですが。期待してたんでしょう。
だからといって熱湯浴びせられたりするのはおかしいと思いますが。
それで次は大学受験の為に一年生の頭から赤本を読まされ、塾に通わされました。髪も抜けて、赤いニキビだらけにもなります。
でも塾で友達ができたのは、幸いでした。
オタク気質な感じの方で、携帯を取り上げられた僕に色々なモノを帰り道に見せてくれました。
そして昔はSCPに興味があったと伝えると、僕が好きそうなのがあると見せてくれました。
『依談』
「もしかしたら怪談という枠組みからも、すべりおちてしまうようなお話」
それを見て。僕は。
彼にはあまり好みそうじゃないと伝えて別れました。
そして何か落ちてるもの、道路から剥がれ、落ちているコンクリートの塊を探して手に持ち。
鍵は使わずにインターホンで母さんを呼んで。
僕の行動を咎めながら扉を開ける母さんの。
母さんの頭に。
コンクリートを振り翳しました。
あの、検察官さん。別に僕は虐待された、という訳じゃなかったんです。
何も怖いことじゃなくて。
ただそこにSCP財団があるだけで。
ただそこに『依談』があるだけで。
ただそこに「すべりおちている」コンクリートの塊が落ちてあるだけで。
ただそこに母さんの頭があっただけなんです。
この作品の作者は Fireflyerさんでした!
予想結果: Fireflyer×2, teruteru_5×2
弾薬倉庫の近い夕暮れの河川敷を一人歩く。川の流れはゆったりとしており、濁流とは程遠い静かな流れだった。
覚えていてね。この銀色を。この輪っかを。彼岸の19時。河川敷に取りに来て。
約束。夜でも外に出られるこの年まで待った。
ちゃんと覚えているよ。忘れているわけじゃ、ないんだよ。
心の中でそう、彼に告げる。畔に咲いている彼岸花は橋の下を赤く燃やしている。今、帰ってきているのかな。
2人で銀河鉄道の夜を朝まで読んだのは5年位前のことだっただろうか。僕たち、ジョバンニとカンパネルラみたいだね、と朝焼けをカーテンの隙間から覗きながらお道化ていたんだった。当時の僕たちにとってはお泊りで本を読み込むなんて冒険に等しかった。
夏の終わりの空気を一心に吸い込む。河川敷の土臭い空気が肺に満ちる。
「おーいそこの坊ちゃん。こんなところで一体何してるんだ?」
感傷に浸っていると土手で自転車に跨っている警察に声をかけられる。溺れたカンパネルラを助けてもくれなかった、警察に。
「お巡りさん!なんでもないよ!」
「何にも無い訳無いだろう。ほら、ここは危ないんだから早く帰りなさい。もう19時だ」
「は~い」
鈴虫の声を浴びながら、階段を上る。ペアリングが見つからなかったことだけは彼に申し訳なく思う。でも、ああ、そうだった。彼がしおりを挟んだページには、
ただいちばんのさいわいに至るためにいろいろのかなしみもみんなおぼしめしです
対岸に、彼の姿が見える気がした。表情はわからなかったが、もうこっちを見てはいなかった。
この作品の作者は NorthPole さんでした!
予想結果: NorthPole×2, 2MeterScale, Kuronohanahana
別にこんな風に生かされた事に恨みなんかがある訳じゃないが、それにしたってどうしてこんなと嘆きたくなってしまうのは、やっぱり私が悪いのだろうか。
残されたボロ炭のようなカスに煙草を落とし、火を念入りに踏み消しながら、繰り返した現実逃避をまた重ねた。ひりつく額が、瘡蓋になれなかった皮膚片の裏側のように痛みを発する接合痕が、強烈な否定を以て私を私から奪おうとしている。
こめかみを揉む。永い付き合いになるというのに彼は一向に私に友好的になってはくれない。その原因が呆けた顔で死んだこいつにあると思うと無性に憎らしく思えてくる。気楽そうで羨ましい。そんな考えを浮かべた途端に強まった疼きに私はたまらず声を上げた。
「そう怒らないでほしいものです。元はと言えばあなたが望んだ事でしょう」
それがどう聞こえたのかは分からないが、責め苛むような苦痛は嘘のように消えた。いつもそうだ。いつだってこいつは身の程を弁える。それがまた癇に障るのだ。分かっているなら最初からやめろという話なのだから。
あるいはそれこそが彼の善性なのだろうか。本当なら今すぐにでも私を食い尽くし、血の通う鼓動など止めて穏やかな静寂に身を置きたいのだろう。にもかかわらずそうしないのはある種譲歩とも言えなくはない。
「なあカイン。一体誰と話していたんだ」
いつの間にかそこにいた機動部隊の顔馴染みに、精一杯にいつも通りの微笑みを向ける。
「独り言です。実際に会えばやはり、抑えきれない思いというものがあったようでして」
嘘ではない。そこから諦念が覗く事は無いだろう。私はカインなのだから。初めから、そしてこれからも、ずっと。
この作品の作者は yanyan1さんでした!
予想結果: teruteru_5, Snowy-Yukinko, CRC-601×2
ただ、白い部屋だった。小さなベランダからは朝日が差し込み、開け放たれた窓からの風が純白だったカーテンを靡かせる。
心地の良い花の香りが部屋の中に充満し、嘗ての紫が良く映えていたジャスミンを生けてある花瓶が私の目を引く。
部屋の真ん中に置かれている木製のシンプルな机も、この場所を私達の家とした時に買った物だ。今じゃその木目も見えない。
特にこの部屋のお気に入りはあのキッチンだった。広い調理台は白石が取り入れられており、例え濡れてもそこには輝きが生まれる。否、生まれていた。
ソファーもそうだ。この部屋の雰囲気に合わせて、白地の革を選んだ。選んだはずだった。
ただ、白い部屋だった。ここにあるのは、唯の白い部屋だった。
壁も白かった。フローリングも美しかった。窓もよく光を通していた。部屋の匂いも澄んでいた。
ただ、白かった。純白だった。
だけど、今は?
赤くなった。全部赤黒くなった。
窓は割れてしまった。机には赤い水溜まりが出来た。ジャスミンにも赤を吸って、キッチンには色で濡れた包丁と割れた食器が散乱している。
ソファーも破け、綿が染まった。特に床は汚い。汚い2人が転がっている。
ここは白い部屋だった。彼との幸せが始まる場所だった。
なのに、ふざけんな。誰だよその女。私の家で、働いてもいねえ2人が何おっぱじめてやがんだよ。ふざけんな。ふざけんなじゃねえ。
死ね。死ね、死ね、死ね、死ね。
死んじまえ死んじまえ死んじまえ死んじまえ。
私は純白だった。けど、染まっちゃった。
私の両肩に誰かが手を置いてる。とても背の高い人。耳まで避けた笑顔が素敵な人。赤が良く似合う人。
そこは、白い部屋だった。
けど今は色で満ち満ちている。素敵。
この作品の作者は 1NAR1さんでした!
予想結果: 1NAR1×3, kskhorn
戦車中隊の倉庫ドアの上にはめ殺しの窓があるだろ。あそこな、出るんだよ。手が見えた、髪の毛だけが張り付いて見えた、中には足だけ見えたってやつすらいる。うちの先任曹長すら見たって言うからな。あのパワハラジジイが腰抜かしながら更衣室に逃げてきたらしい。笑えるよな。
有名な災害派遣さ。あんとき仏さんを包んだ雑毛布、まだ普通に備品として使われてるんだよ。補給倉庫の奥にある員数外、あれがそうだ。……冗談だよ。何十年前の事故だと思ってんだ。流石にそん時の毛布なんてもう捨てられてるよ。はい休憩終わり。次は半長靴の定数合わせてくぞ。
ほんと仕事覚えないよなお前。もう士長になるんだろ。雑毛布を地べたに置いとく訳無いっしょ。軽い物は棚の上段、重いもんは下段。陸士が最初に覚える仕事は声を出す事、穴を掘る事、で、倉庫の物を管理する事。言ったよな。もう次の新隊員も入ってくるんだからさ、頼むぜマジで。
-
多分、下りれなくなってんだよ。遺体が焼かれて、それを包んでた雑毛布も洗濯されて、更新時期が来たらそれ自体廃棄されて。痕跡なんてもう残ってないのに、棚の上から下りられなくなってるんだよな。そりゃ覗き窓から外の廊下だって見たくもなるさ。外出禁止食らって窓から柵の外を見てる俺と一緒。駐屯地ってのはそういう「動けない」記憶の吹き溜まりなんだわ。なんてな。
聞いてくれてサンキュ。ついでに頼むんだけど、六尺の脚立持って来てくんない? そんなのあっても無駄かもなんだけどさ、もう下りれそうがないんだわ。
この作品の作者は teruteru_5さんでした!
予想結果: teruteru_5, 2MeterScale, watazakana, Mtkani_666
こんな夢を見た。
見慣れた街並みを、ただただ一人で歩き続けている。空の色はモノクロームだというのに、自分も通行人もそのことを気に留めていない。車が道路を走っているというのに音は聞こえないし、雨上がりだというのにぺトリコールは感じられない。ひたすらに静かで、空虚な世界が広がっている。
少し不気味に思ったので、通行人に「ここはどこだい」と尋ねてみたが、誰もが「どこって、ここに決まっているじゃないか」と答えている。その答えを聞いて、私は更に不気味だと、狂気が街中に蔓延しているようだと感じた。
狂気から逃げ出そうとして、その場から駆け出した。泥濘に嵌ってしまったと錯覚してしまうくらいに足が重く、必要以上に体力を消費してしまっている。そうだと言うのに、疲れる様子は全然なかった。この時点で、今、自分は夢の中にいるのだということに気付いた。
それと同時に、夢から出るにはどうすればいいのか、ということを理解するに至った。現在地から遠く離れた、自分の生まれ育った家に帰れば夢から出られるのだと、確証はないけどそう思った。
そこからは必死に駆けた。駆けているというのに、家との距離は縮まなかった。どれだけ駆けても、足を動かしても、這っても、現在地から動くことはできなかった。そのくせ、景色は変わるものだから混乱してしまう。それを幾度となく繰り返していく内に恐怖を感じるようになっていった。
恐怖に包まれて立ち竦んでいるところに一台の車が突っ込んでくる。その車に轢かれたところで目が覚めた。
それが、自分の見た夢だった。
この作品の作者は 2MeterScaleさんでした!
予想結果: 2MeterScale, meshiochislash, kihaku, AAA9879
昨日鳴った時報の鐘は、今日も鳴る。一時間前に鳴った鐘は、いまも鳴る。その当たり前が崩されたのは、一瞬のことだった。
軍隊が僕の町を攻めてきて、あちこちで火がついた。建物は木と紙で出来ていたから、あっという間に火の手が広がった。僕は友達の家まで駆けた。瓦礫やなにかもわからない黒焦げをいくつも乗り越えた先には、まさにゴウゴウと燃え上がる家があった。火の叫喚が僕をとりまいた。
その叫びは助けを求めているように聞こえた。近くにあった水バケツを引っ被ってから、ぼくは友達の家に踏み込んだ。二つの人影が見えた。一つは僕の友達。頭に黒い穴を開けてぐったりしている。もう一つは灰色の雲模様の服に身を包んだ兵士。
なんとなく殺したんじゃないと思う。きっと何かの理由があって、僕の友達は死んでしまったのだと思いたい。でも、どうでも良かった。
手を火傷するのも構わずに、ぼくは燃えている角材で兵士を殴る。見られてはいないはずなのに、当たらない。兵士は身を翻して、隠し持っていたナイフで僕の首を切りつけた。痛い。心臓の動きに合わせて血が吹き出る。僕はその場にくずおれた。
「いい目をしている」
兵士が僕に語りかける。僕は熱さの残る手で傷口を抑えた。兵士は僕の空いている方の手の腱を切って、僕のそばに一発だけ弾を込めた拳銃を置いた。
「その手で抑え続けなければ、死ぬ」
兵士は僕に背を向けて、外に向かった。いつの間にか、火はとても弱くなっていた。外からは大雨の音がした。いつまでも冷たくなれない友達の横で、僕は傷を必死に抑えていた。拳銃には弾が入ったままだ。だから、いつかは撃たなければいけない。町を包んだ炎が、僕の心のなかに燃え移ったみたいに、僕は報復心に焼かれていた。
この作品の作者は Rivi-eraさんでした!
予想結果: yanyan1, Rivi-era×2, Snowy-Yukinko
ただ、白い部屋だった。
辺りに白蓮華が咲いている。
揺蕩う白は濁りなく、ただ私の足を濡らしている。
ここは夢の中だろうか。
煌々とした天井は宙へ伸び、ただ全てに輝きを注いでいる。
落ちてくる光は天使の階段、はたまた花嫁のヴェールか。
彼等が取り巻くたった一つの彫刻。この部屋唯一の人工物に彼女はもたれかかって、睫毛の端でさえ動かさない。
大理石を隠す銀の長髪と、力なく放り出された片腕の肌の白さに、辺りの白は気後れしている様だ。
彼女の髪と閉じられた瞳が描く曲線を見ていると、切ない動悸が白蓮華の放つ波紋と共に足元から這い上がり、私の視界を揺らす。
濁りなく、ひと瞬きで崩れそうな白の中で私は足を踏み出せない。
彼女が誰で、あれが彼女なのか。私は本当に彼女を知っていて、自分の意思でここにいるのか。
思考は常に白紙に還り、ただ空白の時間が過ぎる。
無為の時間と、物言わぬ光の中で私は彼女を待っている。
ここが彼女の何かが動いた時に、瓦解するような夢だとしても。
彼女の白に縛り付けられた、この部屋の一つとして、私はここから動けない。
この作品の作者は Kuronohanahanaさんでした!
予想結果: Kuronohanahana×2, eagle-yuki×2
隼。急降下で最も速い鳥。だから、スポーツや運動での大成を願って、名前に付けられることがある。俺の名前の由来の鳥。
「隼人、また1位じゃん」
廊下に貼られた期末テストの学年順位。勉強に関しては、俺はいつだって1位だった。
「大智は?」
「今回は赤点回避出来たぜ。隼人に勉強教えてもらったからな」
大智は勉強が苦手だ。けれど運動は得意で、まるで俺と正反対な奴だった。
「あ、そうだ隼人。今度の日曜日に大会あるんだけどさ、見にこねー? オレの本領はそっちだし」
「飛込だっけ? 俺よくわかんないけど……」
「わかんなくてもいいから! 隼人パワーくれよ!」
「ふは、なんだそれ。そんな言うなら行くよ」
「よっしゃ!」
大智は嬉しそうにガッツポーズをする。そんな無邪気なところも、俺とは正反対な奴だった。
—
野球やサッカーと違って、静かな会場。その中で大智はいつになく真剣な顔をして、飛込台の端に立って息を整えていた。
プールに背を向けて、両手を挙げる。数秒。飛んだ。
何回転かしたのだと思う。大智は水飛沫をほとんど上げずにプールへと飛び込んだ。完全に素人の俺の目には何が何だか分からなかったけれど、でも、綺麗だと思った。
「すご……」
思わず呟いた俺の声を掻き消すように、会場は拍手に包まれた。俺も周りに倣って手を叩いた。
—
「隼人パワー、マジであったかも!」
大会を終え、着替えた大智は興奮気味にそう言った。
「俺のパワーってなんだよ」
「ハヤブサパワー! かっけぇじゃん。オレ、隼になりてーの!」
確かに、空を飛んで、美しく降下する様は隼なのかもしれない。俺のなれないものに、大智はなりたいのだ。
「なれるよ、大智なら」
大地から飛び立つ、隼に。
この作品の作者は watazakanaさんでした!
予想結果: SuamaX, yanyan1, watazakana×2
ただ、白い部屋だった。
君が把握した視覚情報において、扉がある、ということ以外に特段付言することはない。ただただ、白い部屋。何もない。無音、無臭。材質?それは今のところ役に立たない情報だ。
君は扉を見る。得体のしれない空間でのんびりできるような感性を、君は持っていないはずだ。部屋を調べても何もわからないことがわかれば、その扉を開けた。
扉を開ければ、廊下に出る。少し暗くて静かな廊下だ。殺風景で人二人がぎりぎり通れない程度の狭い廊下だ。下り階段と曲がり角、突き当りには案内図が確認できる。少なくとも無味乾燥な白部屋や廊下が無限に続くことはなさそうだ。君は案内図の目の前まで歩く。
君は案内図でこの建物の構造を把握した。しかし、問題も発生した。
現在位置が、ない。
案内図を見るに、この建物の構造は非常にややこしい。もし想定している階層と実際の階層を一つ間違えば……そう思えば、君はやや焦りながら目を皿にしてここが何階なのかを知ろうとする。しかし、どれだけ探そうとそんな情報はない。仕方がないから、君は案内図の右手にある、より暗い奥へ続く通路を覗いた。いつの間にかポケットの中にあった小さな懐中電灯で照らす。
そこは、エレベーターホールだった。壁には英数字とバツ印が書き込まれている。1×、4×、というように。中には〇もあった。8、12、5、というように。
君は考える。これはアタリの階層とハズレの階層だと思い当たる。しかし、これで移動してもいいのだろうか?まだ調べていない場所が多い。他にも移動手段はあるのではなかろうか?考えるが、しかし。
ひた、ひた、ひた。元来た方から明らかに脅威の音がする。
……どうやら、迷う時間はない。さて、君はどうした?
この作品の作者は meshiochislash does not match any existing user nameさんでした!
予想結果: Fireflyer, kihaku×2, Hoojiro_san
超常社会において、昼食の店選びは命懸けだ。
焼肉を食べようとしたらヤクザのお膝元だったり、牛丼を食べたかっただけなのに店ごと吹き飛ばす羽目になったり。異常な社会でサービス提供してる奴がまともであるはずもなく、大騒ぎが日常茶飯事。仲間に(不完全なカスだが)情報知性が居た時は地雷を避けれていたが、独りの今はそうもいかない。
だから、その店に入ったのはただの気まぐれだった。
活動の拠点を都心の裏路地から“横浜の抜け道”に移して三日目。最低限の立場と金を手に入れた後。
率直に、腹が減っていた。
“げろまみれ”なんて、終わっている名前のラーメン屋に入ってしまうくらいには。
「いらっしゃい。生でいいかい?」
「未成年に酒勧めるんじゃねえよ。焼酎を瓶で」
「未成年からお酒なんて飲むもんじゃないよお嬢ちゃん」
「は?」
ドブのような顔の店主と平和なやりとりをして、空いている席に座る。深夜帯だからか、店内はまばらな客入り。
「ラーメンと、なんか適当につまめるのあったらそれ」
「煮卵で問題ない?」
「ない」
「あいよ」
会話が終わり、鍋を叩く金属音。それを騒がしいとは思わなかった。
「はい煮卵と焼酎ね。酔い潰れてもウチで責任は取らないから」
「言い忘れた、テイクアウトで私が飲む気はない。コーラ」
「あいよ」
融通が効かないなら適当に飯だけ済ませる予定だったが、店主はただ注文を受け取り、焼酎の瓶を鞄に入れる私に何も言わない。
割り箸を割って、煮卵に箸を入れる。濃く、わかりやすい味わい。悪い店では無いと判断し、鞄を下ろす。
超常社会において、昼食の店選びは命懸けだ。それでも、孤独で無価値な私たちだからこそ。
誰かが作った飯を、食べたい時があるのだろう。
この作品の作者は carbon13さんでした!
予想結果: 2MeterScale, carbon13×3
本の色彩をゴチャゴチャに積みあげて、一度この檸檬で試してみたら。
梶井基次郎 檸檬
『花籠学園で一番人を殺したのは、魔術師でも呪術師でもないよ。文芸部だ』
三千人の死者を出した憎悪小説魔法本。世界中のありとあらゆる属性と属性の対立を煽りながら出版された。
その作者で私のクラスメイトでもある祭畤山まつるべやま噛みは、今も平然と木の柔らかい温かみがある模様のついた椅子に座っていた。
彼の異常な精神性について、むかし友達と語り合ったことがある。
「彼は極悪人だわ。ひどい憎悪と絶望を募らせてあの本を書いたに違いない」
友達がそう言う。
「待ってよ。確かに彼の言っていることは、拗らせたエリーティストみたいなの。でもきっとそうするくらい絶望があるのよ」
隣のクラスの団地前君は、黄金の唾液を出せたらしい。彼の両親は仕事を辞め、団地前君の唾液で生活するようになった。だけどある時から黄金が出なくなって、家族はバラバラになった。
友人の友人の三代蔵さんは、運動神経が「すごく」良かったけど、嫉妬した陸上部の仲間たちに下半身付随にされてしまった。
二人は才能が、苦痛だった。彼もそうなのだろうと思った。
私はすくっと、椅子から立ち上がり、窓際の席にいる噛み君に話しかけた。窓から差し込んだ光で、彼の顔が見えなかった。
「どんな思いがあったの? 魔法本書いたのは?」
そうすると、彼はなぜだかにっこりと笑った。
「思いなんてないよ、どういうふうに爆発するのかな? って」
この作品の作者は MtKani_666さんでした!
予想結果: Mtkani_666×4, EianSakashiba
(前略)最後に、今の私の気持ちをあらわすのにピッタリの言葉があったので、引用します。
――M・C(マイ、チェホフのイニシャルではないんです。私は、作家にこいしているのではございません。マイ、チャイルド)
匿名より
「マイチャイルドですってェ!?ワタシを作家未満のガキだと仰るのですねェーーッ!?」
文学青年は激怒した。彼は文章を字面だけで読み取ろうとする悪癖がある。怒り、律儀に放課後の空き教室に向かった。定刻、廊下に面したドアではなくベランダに繋がる大窓が開いた。
「おやァ〜?逆側の窓から来るなら鉄パイプで泣き顔が常識ですよォ!」
青年が威嚇しても来訪者の表情は凪いでいる。
「それは別の商売の方ですね。こちとらケツファックをってやって来た若年者なんで」
ラブレターの差出人とはおよそ思えないかんじでやって来たのは文芸部の後輩の女子生徒だ。
「貴様でしたかァ!この人を舐めた手紙は!」
「当たり前だ、その文章をラブレターだと解釈できないやつは文芸部を出ていけ」
「ワタシをナメた貴様はこの世に退部届を提出してもらいましょうねェーッ!」
その勢いで、男は京極夏彦の文庫本に見せかけたただの煉瓦を女子生徒の脳天めがけて振り下ろそうとする。女子生徒は長袖で隠れていた右手を、青年の腹目掛けて振り抜いた。青年臓器が溢れる。
「何ィーッ!?これは……」
女子生徒は血のついたナイフを舐めて言う。
「夾竹桃の亜種、狂竹桃の毒だよ」
「クッ……致死量か……」
「狂竹桃は一年中咲いてるから、この花を好む人間は毎日死ななきゃいけないね」
おきゃんな笑顔を見せた。
「最後くらい笑えよ、M・C、マイ・カーカス。殺人鬼(アヤメイカー)、冗談じゃないってさ」
この作品の作者は EianSakashibaさんでした!
予想結果: Rivi-era, watazakana, EianSakashiba×2
ただ、白い部屋だった。面会室というと薄汚れたイメージがあったが、神々の刑務所ともなるとこれが当然なのだろう。
友人が神様を殺した。死体は人間そっくりで血は赤かった。そうして友人は神々運営の警察に捕まり、神々運営の裁判所で有罪になった。面会人の僕は
「何で殺したの」
と聞いた。面会室のガラス越しに友人は答える。
「遠い昔、俺らと神は同じ人間だったらしいぜ。俺ら人間は「コドモ」、アイツら神々は「オトナ」って言われてたんだと」
「殺された神様も僕ら人間に似ていた」
「そう!神々(オトナ)は自分に似せて人間(コドモ)を創った。でも意図的に欠陥品としてだ」
「人間の、どこが」
「奴らに足は2つある、好きに旅をする為に!奴らに肺は2つある、煙草の煙を吸い込む為に!奴らに金玉は2つある、自慰だけじゃない交尾もする為に!」
「僕らには許されていない禁忌ばかりだ」
唐突に友人は神殺しを為した腕力でガラスを割った。看守の神様が驚く。
「わざと欠如させた事実を知った時、まるでお前らは予算不足って言われてるみたいでムカついた」
友人は1つだけの足と肺で僕側の入口に走る。
「あばよ友よ!俺はまだ神を殺すぞ!」
神の足と肺は2つある。脱獄の前に追いつかれるはずだ。だから僕は隠し持っていた手斧を看守のドタマに振り下ろした。
「おい、何して」
純潔の白色、その床と壁を血が赤色に染める。
「僕も旅をしてみたい。僕も煙草を吸ってみたい。僕も、ええと」
「交尾したい?」
「下品だ」
「言い切れよ」
「悪い神(オトナ)に抑圧されて死ぬ、そんな人間(コドモ)のままでいたくない」
友人は不敵に笑い、僕の手を取る。
「俺ら互いに補って初めて1組だ。やろうぜ、神殺し!」
この作品の作者は Enho_Oshoさんでした!
予想結果: tateito×4
船が燃えている。船自体が燃えている訳ではなかった。篝火の光に照らされて、鮎が逃げ惑う。鵜は狙いを定め水面へと潜る。そして鮎を捉える。
首結を嵌めた鵜の喉には、小さな魚は通れども一定以上の大きさの魚は通れなくなる。その結い加減は鵜匠の技量によるもので、長年の経験が成せる技である。
鵜を縛る縄には麻を使用する。麻縄は水に濡れる事でより頑丈に締まってくれる。それと、触り心地が良い。鵜が快適に漁を行うには欠かせない。鵜が機嫌を損ねれば鵜飼は成立しない。鵜匠と鵜は一蓮托生なのである。
僕は麻縄を煮ていた。製造の際に耐水性、強度を高めるために染み込ませられたタールを煮だしている。そうすることで、縄が柔らかくなり縛られる側の不快感が和らぐ。鼻を突く臭いが立ち込める。眉間に沁みるこの臭いが好きだ。道具は命だ。縄は僕の命だ。その命が生み出される臭いは、僕を高揚させる。
煮なめした麻縄が乾いた。そこに馬油を塗る。七メートル程の長さ全てに塗りこんでいく。丁寧に、丁寧に。全身にベビーオイルを塗りこむように丁寧に、丁寧に。
全ては縄を着る者への気遣いである。鵜が機嫌を損ねれば鵜飼は成立しない。
ロウソクに火を灯す。篝火。麻縄に命を灯す最後の工程である。馬油を塗りこんだ麻縄を、ロウソクの火に近づける。チリチリと微かな音を立て、毛羽が燃えていく。焦がさないように、慎重に毛羽を燃やしていく。命が灯る。
私は縄を結っていた。長年の経験で得た加減のいい縛り具合を脳から指先へと伝える。最後に、首に掛けた縄の張りを確認してその出来を確かめる。
全裸の彼女は恍惚の表情を浮かべていた。
この作品の作者は eagle-yukiさんでした!
予想結果: 1NAR1, EianSakashiba, eagle-yuki, kihaku
「行こうか少年。面白い所に連れて行ってあげる」
隣の家の、八つ上のお姉さん。
高校をサボりがちで、親とは不仲そうだったお姉さん。
友達がおらず暇してばかりの僕に、いつも構ってくれたお姉さん。
どこか浮世離れした雰囲気を纏った、長い黒髪が似合っていたお姉さん。
林の中の廃墟。野良猫の溜まり場。夜に蛍が飛び交う池。
遠出なんてできない小学生の僕にとって、町内のあらゆる場所を案内してくれたお姉さんは、世界の全てを知り尽くした神様だった。
そんな彼女は高校卒業後、東京に出て行くことになった。当時は寂しくて寂しくて、彼女のスカートにしがみついて大泣きしたのを覚えている。そして彼女は、僕の頭を撫でてこう言ったのだ。
「大丈夫、いつかまた会える日が来るよ。だから──その日まで。私のことを覚えていてね、少年」
……果たして彼女の言葉は真となった。四年経ち、僕が世の理をそれなりに把握できてきた頃。彼女は再び姿を見せた。婚約者と赤子を連れて。
「ごめんね~!最近お母さん、体調崩すこと多くってさ。今夜も病院に連れてかなきゃなんだよ~。だからその間、ウチの子と遊んでやって欲しいの!」
さらにそこから七年が過ぎた。今や彼女は、世間に溢れる「良き主婦」のイメージを完全に物にしている。そして僕はと言えば、彼女にとって都合の良いお隣さんで居続ける日々である。
さて。携帯ゲームに夢中な少年を横目に思案する。今の子供の流行りなど知らない。彼と遊ぶにしても、一体何をすればいいのか。自身の少年時代を思い返してみる。
「……少年。夜の散歩にでも行かないかい?僕、良い所を知っているんだ」
──液晶から顔を上げた少年の瞳が、淡く輝いた気がした。
この作品の作者は Matcha tiramisuさんでした!
予想結果: hallwayman, Matcha tiramisu×3
「先生、電話で話したコレなんですが……」
「これは……」
泌尿器科の専門となり早10数年。
しかし、これほど珍妙な事例は初めての事だ……
「先生、私の精巣は元に戻るのでしょうか。」
「ちょ、ちょっと待ってください……」
こんな異常事態になぜか平常心の患者を抑えつつ、キーボードで素早く
[43才 金玉が黄緑色 かゆみ痛みは無し]
と打ち込む。
「……全力は尽くしましょう」
患者の顔がパッと明るくなる。
「ありがとうございます!」
患者が何度も何度も頭を下げながら、部屋から出ていく。
手術はどうしようか……
発色の良い黄緑色が、思考にこびり付いて離れない。
説明: ** 本来精巣が存在する箇所にマスカットの実が生える男性。生殖器としての活動は問題なく行なわれ、マスカットは1日ごとに生え変わる事が確認済み。
回収日:** 2023/10/07
回収場所: ██県███泌尿器科病院。
現状: サイト-81██の標準人型収容施設にて収容。███泌尿器科病院の関係者には記憶処理を施し、対象のカルテデータも削除済み。
追記: 他がバナナに変わったり、とかは無いんだな。 -██博士
業務中の不適切な言動は控えてください。 -██研究員
「あの、自分の陰茎がバナナになってしまったのですが……」
「はぁ……?」
「ぼ、僕の陰茎は元に戻るんでしょうかぁ!?」
「ちょ、ちょっと待ってください……」
素早くマウスを動かす。
前例は無い。
もちろん前例なんかある筈が無いのに、なぜ私は前例を……?
泣きじゃくる患者と困惑した先生のみの空間に、看護師に扮した潜入エージェントは大急ぎで扉を開ける……
この作品の作者は v vetmanさんでした!
予想結果: rokurouru, v vetman×3
「北極だったか」
鼻先を赤く染めながら賽さんが呟く。ふとももで両手を挟みながら屈み、
「日本人探検家がキンタマで両手温めたって」
「多分南極の方ですね」
「南極か」
「隊の料理人になる本でしたね」
「原作知らねえな」と顔を背ける。私もまた賽さんと同じように屈みこんだ。確かに温かい。観測拠点の移設作業で疲弊しきっていた両手に効く。
松ぼっくりが音を立てて焼け潰れる。ほっぺたをカサカサにしてしまう煙。高く遠のいた11月の夜空。焚火の音。「湖の怪」の本格的な観測業務が始まってから既に4日が経過している。
「本当に温かいものなんでしょうか」
「俺に聞くな」
「賽さんも知らないか」
「何だおま……何だそのニヤケは」
慌てて両手で口元を覆う。とりあえず弁明しておかなくちゃ。
「賽さんが知らないこともあるんだなぁって」
「キンタマは蹴り潰したことしかない」
「温かったですか?」
「忘れた」
「……寒いですね」
「寒いな」
屈み込んだまま、焚火を避けながら何となく賽さんのところまで近づく。左隣に座った。
「何か」
「寒い時は密集で体温維持しろってサカキさんが」
「間違っちゃいないけどさ。俺はキンタマ代わりかよ」
「そんなところです」
肩に凭れ掛かった。少しだけ賽さんの背が伸びた気がする。
「……俺はキンタマ代わりかよ」
「賽さんの方が温かいと思いますよ」
予想通り後頭部を優しく引っ叩かれた。「比較すんな」と小さく吐き捨てた後からは少しだけ熱量が増した気がする。体温調節機能を起動してくれたのかもしれない。
「寒いか」
「少しも」
23時56分。この時期の夜は長い。
この作品の作者は kihakuさんでした!
予想結果: SuamaX, Musibu-wakaru, CRC-601, BARIGANEsensha
深夜高速。ノイズ混じりのFMラジオを垂れ流す車内。助手席の窓際に肘を置いて、規則的に過ぎ去る橙の灯を漠然と眺める。
「あれだよな。走ってる車の窓から手ェ出したらよ、胸揉んでる感触と同じって噂あるじゃん。あれマジなん?」
アホな大学生3人、語る事も尽き、下世話な話題が弾む。
やってみるか。窓を開けておもむろに手を出してみる。深夜ゆえか車は居らず、少し車速を下げるように頼む。熱帯夜気味の生ぬるい風が手を滑る。ふむ。ふむ? しばし風を掴みつつ、そこにエロスの欠片も感じないことに飽き、手を引っ込めようと窓の外にふと目をやった。
高速のJCT。他方面からの合流路に、奇特なモノを見た。それは人型のようで、残像が見えるまで足を回して走っている。嫌に姿勢の悪い小柄白髪の老婆。それは悪質な煽りの如く幅を寄せてくる。何も言えぬ私をおいて、後部座席の友人が頓狂な声を上げた。どうも幻覚ではないらしい。先程から乱杭の黄ばんだ歯をニッカリと見せてこちらに寄ってくるソレは、およそまともな人間でない事は火を見るより明らかだった。
運転席の友人も事態に気付いてアクセルをベタ踏みするが、一向に引き離せる様子もない。そろそろ手が届く距離まで詰められる。
この時、頭は嫌に冷静であった。いや、とち狂っていたのかも分からない。いずれにせよ俺はソレに対して呼びかけた。
「なぁ婆さんよ! 今、風圧が胸の感触と同じなのか試してるんだが、あんたで確かめさせちゃくんねぇか!?」
心なしか、気色悪い笑みを引き攣らせた様に見えたソレは、徐々に距離を置いて分離帯から都心方面の分岐に消えていった。
諸々の真相は終ぞ、闇の中である。
この作品の作者は kskhornさんでした!
予想結果: Musibu-wakaru, Enho_Osho, kskhorn, AAA9879
SCP-XXXX-JPは、外見的には50代の黄色人種の男性です。SCP-XXXX-JPは、
「ワシがカインじゃ!覚悟クソトカゲ!硫酸ならぬ……臭酸!」全裸中年男性の狂気の雄叫びがサイトに響きわたる。浅黒い肌を大胆に晒しながら、SCP-682に大五郎と汗の混合物を撒く。瞬間、SCP-682は不快と呟き全裸中年男性を殺害。彼の献身に財団は終身名誉救い難き物の称号を授与した。
その性質に言及した際に、SCP-XXXX-JPを『カインを自称する全裸の中年男性』として描写する140字の文章を割り込ませます。この異常性は
「ウオーッ!貴様!ワシを描写するな!ミー殺に対抗して……ピー殺!!」全裸中年男性が地上波ならピーで隠れるような淫猥な言葉を次から次に口から紡ぐ!しかし財団のアンチ全中男ミームの前に、彼はモザイクの向こうへと消えていった。無念、全中男。カインとは違い、攻撃を無効化などできないのだ。
会話・文章・図説のいずれの形式の描写でも発生します。しかし、この性質はSCP-XXXX-JPと
「クソがーッ!カインに対抗して……下陰!!」全裸中年男性が収容されているチャンバーの中で会陰部を孤独に露出!哀れ!会陰は「かいいん」ではなく「えいん」と読むことを知らないのだ!彼はネットの慰み者だが、彼自身を慰める者はいない。周囲の植物ではなく、彼の陰部だけが元気なく萎れていた。
SCP-073を結び付けなければ発生しないことから完全な収容下にあり、財団内での言及を回避することで十分な収容が達成されています。SCP-XXXX-JPは強いストレス下にあるため、チャンバー内では任意の服装で過ごすことが許されています。
この作品の作者は tateitoさんでした!
予想結果: Musibu-wakaru, Rivi-era, Enho_Osho×2
彼は金玉を破壊されて彼女になった。
全ての生物学的女性は、無意識下か意識下かは別として、一生に一度は自らに男性器が無い事を疑問に、あるいは不満に思う。フロイト派心理学でのエディプスコンプレックスの一側面だ。もっとも男性も一生に一度位は自分が女性だったらな、とは考える。しかし女性器については考えない。これが男女の不均衡性というものだ。
そしてこの場合の男性器というのは棒の方を指し、玉の方は考えられない。男性もまた棒の大きさを誇りとするが、玉の方は軽視している。
しかし男性ホルモンを放出するのは玉であり、究極的には金玉こそが男性であるということを担保する器官であるのだ。
ともかく金玉を破壊された彼女は、その瞬間の耐え難いショックで昏倒し、病院で大手術が行われた。一か月後に起きた彼女はしばらく現実を直視できなかったが、その後長いリハビリの中で彼女は彼女として生きる事を受け入れた。
その代わりに、彼女は自分の車にトラックナッツを装着した。トラックナッツとは車の後部にぶら下げる金玉の形をした装備である。これは著者の奇想ではない。実際に存在するもので一種のジョークグッズだ。
車がカーブを曲がるとその金玉も曲がり、振り子運動を開始する。急ブレーキを掛けると慣性で前後に揺れ動く。彼女はせめてもの慰めとしてその金玉を愛した。ドライブをしている時だけ、彼女は完全な生物に戻れた気分になれた。
警笛が鳴る。
「止まりなさい!止まれ!そこの車!」
警官は停止した車から金玉をもぎ取る。
「なんだこの卑猥なおもちゃは!猥褻物陳列罪を知らんのか!」
ドアから出てきた彼女は憤怒の表情のまま警官の股間を蹴り上げた。
慟哭する二人の女性。
この作品の作者は Snowy-Yukinkoさんでした!
予想結果: hallwayman, Fireflyer, Snowy-Yukinko, Hoojiro_san
私の地元には「蛍池」がある。正式な名称は他にあるはずだが、皆蛍池蛍池と読んでいるので、私も蛍池としか呼ばない。
夏になると、私は毎晩のように蛍池に行き、水辺の蛍をすくい、眺めていた。私は蛍へと話しかけ、蛍も私に話しかけた。後から思うに、蛍の輝きと子供の心は同一であり、その親和性が私を蛍池に向かわせたのだろう。
だが大人の胸中では、輝くべき子供の心は擦り潰され、繁忙と欲望だけが残る。社会に出て、薄汚れてしまった私は今、あの時とは違う感情を抱いてこの蛍池に立つ。蛍の光への、擦り切れた輝きへの「憧れ」が、私をここへと向かわせたのだ。
草の中の光をめざとく見つけ、蛍をつまむ。数分もしないうちに服は泥まみれになったが、幸い、蛍を捕まえる能力はかろうじて残っていたようだ。手からは光が溢れていた。
手から一匹だけつまみ上げた蛍を、私は口の中へと放り込んだ。私はこの光を、子供時代に確かにあったこの輝きを求めていたのだ。汚れた胸の底にぽっと光が投げかけられた。
さらに両手を顔に近づけ、漏れ出た光を噛む。噛む。噛む。蛍光灯から漏れ出たような、苦い汁が舌から体へ駆け巡る。光の残像が視界をまたたき、まるで瞳自体が光っているように思えた。
いつのまにか、両手は空になっていた。体はぼんやりと光っていた。しかし、そう簡単に取り戻せないことなどわかっている。私はせわしなく腕を振り、池を音を立てて駆けて行った。子供時代の輝きを求めて。
この作品の作者は CRC-601さんでした!
予想結果: meshiochislash×2, kskhorn, AAA9879
ただ、白い部屋だった。
「制限時間内にこの縮小する部屋から脱出するための鍵を見つけてください!貴方の挑戦、期待していますよ!」主催者と思しき声が何処から発されてるのか分からないほどに、何も無い。俺は前方の壁に近づこうとしたけど、いくら進んでも、そこに手が届かなかった。
どこを向いても同じ景色だった。突き抜けるように白い壁は確かに、さっきよりも迫っているように錯覚させてくる。光源が無いのに明かりの灯る天井も俺の姿をうっすら反射する床も、一切の手がかりのない灰色の絶望感を纏って俺の目に映る。
主催者の声を、もう一度聞きたかった。
三年連れ添った彼女との終わりは呆気なかった。切り出された別れを俺は引き止めることもせず、相槌を打ち続けて重苦しい空気を終わらせようと必死になっていた。最後には彼女の方から、俺の方を引き止めようともして。でも俺に情熱は残っていなかった。
「なんで私たちはダメだったんだと思う?」そんな答え、すぐには見つけられない。過去のことで悩んでいられるほど──そう思うほど、俺は冷たい人間なんだと思っていた。
「ヒントです」
主催者の声がまた、脳内に響く。伸ばした手が天井に届いたので俺は蹲って考えた。どうやってここにきたんだっけ。そして、どうやってここから出ていけばいいのか。足元にだって、手がかりは何も──
「たまには、立ち止まってみてください」小さな鍵穴がそこにあった。それは真っ白に広がる部屋の中、吸い込まれるような黒い穴で。
「私を置いていかないで欲しかった。貴方と一緒に歩みたかった。」
記憶のそのまんまの台詞を聞いて俺は確信した。天井に頭が当たると同時に、足元からも音がした。
この作品の作者は AAA9879さんでした!
予想結果: NorthPole, yanyan1, eagle-yuki, roneatosu
幾本もの煙の轍が伸びていく。私、いや星の血肉で造られた舟が、数多の「人」を乗せて飛び立っていく。彼らはもはや、ゆりかごを必要としなくなったのだ。
物体を強く引き寄せるほどまでに集まった極大質量を構成する物質に存在する、電子のわずかな揺らぎ。その揺らぎから成り立つ電気信号のパターンが、私だ。あまりにも膨大で複雑な存在、されど星を自称するには至らないもの。だから私は、彼らを見守ることしかできなかった。
無限に孤独だったはずの私の下に現れ、そして満ちていった「生命」。彼らの存在は孤独を忘れさせてくれた。何かしてやりたかった。恩返しをしたかった。されど、私は私が思う以上に何もできない存在だった。ひとつの生命も、守ることができなかった。
火に灼かれて灰になった。雪に凍えて力尽きた。飢えに飢えて枯れ果てた。
私にできることは、全てを覚え続けることだけだった。舟で去り行く「人」が何を成したか全てを知っている。如何にしてこの大地を制したか。遥かな夢を目指した人が幾ら存在したか。……醜くキリがない同族争いの末に、ついに矛を収めて手を取り合ったことも。
それすらも、成し得なくなるのか。私の内から、彼らはいなくなってしまうのか。轍は宙へ宙へと伸びていく。遥かな星を目指して飛んでいく。
これが、別れということか。
気づいた時には、私は私をこねくり回していた。創造、彼らが私に教えてくれたことだ。
ほんの少し、雲すら動かせない風を吹かせられた。彼らの舟を支える。舟はとても力強く、支えなんか必要なかったのだろう。
それでも、何十億何百億何千億もの回転の中、私をがやりたかったことだった。
別れの挨拶としては、十分だろうか。
この作品の作者は roneatosuさんでした!
予想結果: CRC-601, roneatosu×3
アリス! おとぎばなしを どうぞ
それから やさしい おててで そなえてほしい
「美味しい! それで帽子屋のお姉さん、めちゃくちゃにされる準備は出来た?」
殺されて間もないウサギを頬張る少女は、血濡れの笑顔を見せた。彼女の足元に散らばるは刻まれたトランプ兵ども。特に強者だったカードは少女によって並べられ、絶命の瞬間を顔に映したままさらし者にされていた。
「ロイヤルフラッシュかい……洒落になってないねぇ」
「貴女は不思議、なぁんで怖がったりしないの?」
「チェシャ猫君いわく、私はイかれてるんだ。何でもないことさ」
その宣言が終わらない内に、現在進行形でローストされたハリネズミとフラミンゴが宙を飛ぶ。燃える弾に変えられた哀れな動物の速球を躱し、帽子屋はステップを踏む。いつのまにやら頭から右手に移動していたシルクハットの中から、時計のチェーンが伸び少女の拘束を試みる。帽子屋自身も彼女の方へ飛んでいた。
「……本当に素敵!」
誇大妄想の金髪娘は片腕でチェーンを砕き、振り上げた脚で帽子屋の殴打さえも受け流した。小奇麗な脚からは想像出来ないパワーだ。
「その帽子本当に欲しくなっちゃった! 魔法みたいに何でも出せるんだせちゃいそう」
「それは困るなぁ。これはねえ私の最初の作品にして存在意義だ」
アリスは歯をのぞかせ今日一番のにんまり顔になる。
「じゃあ、貴女を小さくしてあげる。クッキーみたいな貴女は帽子の中で永久に暮らすの! すっごく良いアイデアでしょ!」
「それも困っちゃうなあ、帽子の中にいて欲しいのは……君だよ」
今度、中空に走り出したのは2人だった。
この作品の作者は Hoojiro_sanさんでした!
予想結果: carbon13, Hoojiro_san×2, BARIGANEsensha
はじめに神は天と地とを創造された。
さいごに人は地上に地獄を創造した。
ドブネズミとナマズが混ざった肉塊フライに喰らい付き、溢れ出る悪臭を魔剤コーラで押し流す。上空から氾濫するネオン光の気休めにもならない遮光カーテンを乱暴に閉じては今日も死体の様に眠りに就く。
30年前に開発された意識を電脳空間に接続する技術は文字通り神の御業と言っても差し支えなかった。金持ちは我先に現実から逃げ出し、現実に残されたのは貧乏人だけだった。
生命の軛から外れて情報生命体となった彼らを襲ったのは10年前に起きた未知の悪性ウイルスによる致命的バグだった。ネオンに眩く極彩色の地獄変。新婚夫婦は夕焼けの空と混ざり合い、公園には虹の概念と混ざった巨大ムカデが這いずり回る。結局肉体に囚われた我らが地獄に堕ちなかったと考えると皮肉なものだ。
心地よい朝日に照らされた自室の窓から今日も燦然と輝く牢獄の象徴である摩天楼が見える。現世より悍ましい地獄に嘲笑の目線を投げ掛けて、そして玄関の扉に手を掛けた。
この作品の作者は BARIGANEsenshaさんでした!
予想結果: yanyan1, Hoojiro_san, BARIGANEsensha×2
そういえばこの話したことあったっけ?駅前にいるヤバいおじさんの話。朝の駅前にほぼ毎日いて、ずっと大声で何か言ってる人。……あー、そりゃ三茶と丸の内にはいないか。俺が前まで配属されてた事務所の最寄りにはいたんだよ。たぶん70前後だと思うけど、毎日毎日飽きもせずに虚空を怒鳴りつけてんの。当然、皆して極力見ない聞かないようにしてたんだよ。そんで、毎日帰る頃にはその姿は無くて。また翌朝にはいつものように大層元気な姿を見せる。おじさんにも自分の生活があるんだろうなぁ、なんてちょっと感慨深くなったりして。
いつだったか、朝から嫁とちょっと喧嘩した日があってさ。気が立ってたもんだから、いつも聞き流してる絶叫も耳に障っちまって。聞いてみたら、誰かに説教してやがったんだ。多数の善良な市民に迷惑掛けてるお前はそんなにご立派な人間なのかよとか思ってたらさ、その説教相手2人の名前、俺の両親の名前だったんだよ。偶然だろうと思ってる。でもびっくりしちゃってちらっとおじさんの方見たら、虚空じゃない、はっきりと俺の方を向いて叫んでた。
それから今に至るまでに何かがあったわけでもない。たださ、ヤバい人っているとこにゃいるけど、今まで見ないように見ないようにして、それがどんな人かなんて考えたこともなかったなって。考える必要も価値もないって言えばそれまでなんだけど。
涼しくて過ごしやすいな。こんな夜ってああいうおじさんはどこで何してるのかね?まあ、そんなことを詳らかに気にする余裕、一介のサラリーマンは持ち合わせてないけど。
