第十一回 - 700字文体シャッフル
テーマ: 失敗
投稿期間: 05月06日 ~ 05月08日 13:00
予想期間: 05月08日 13:00 ~ 05月10日 23:59
参加方法: 以下のグーグルフォームに必要事項を入力して送信してください
レギュレーション: ①700文字以内 ②今まで世に出していない ③1作まで ④短歌でない ⑤社会性がある ⑥AI作でない ⑦読解可能な文章である
※ レギュレーション違反の作品は公開されないか、公開後に気づいた場合は非公開になります。事前連絡は基本できません。暴れるときは空気を読んで自分の責任で!
Q and A
Q.文体シャッフルって?
A.みんなで匿名で文書いて、それを誰が書いたか当てる企画です!だから何書いたかいうなよ!
Q.過去作は?
A.下記リンクから文体シャッフルハブに飛べます!
Q.構文は?
A.by ukwhatn。偉大なる御大に感謝。
Q.期間短くね?
A.ショートコンテストと超現0063への配慮です。
主催 - meshiochislash does not match any existing user name
原案者 - meshiochislash does not match any existing user name
EianSakashiba
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著者ページ
GermanesOno
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著者ページ
Jiraku_Mogana
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著者ページ
Kuronohanahana
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著者ページ
souyamisaki014
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著者ページ
watazakana
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著者ページ
BARIGANEsensha
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著者ページ
eagle-yuki
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著者ページ
EveningRose
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著者ページ
Hoojiro_san
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著者ページ
R_IIV does not match any existing user name
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著者ページ
Ruka_Naruse
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著者ページ
SCPopepape
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著者ページ
ShicolorkiNaN
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著者ページ
usubaorigeki
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著者ページ
投票締め切り: 5月10日23:59まで
以下のグーグルフォームに必要事項を記入の上投稿してください
A: https://forms.gle/yzdUq8Zofs9Tnr7Y6
B: https://forms.gle/nFZayerFaEn6v43f7
C: https://forms.gle/qgJzxZzDfcYKfURG9 (選択肢にEiansakashibaさんを誤って紛れ込ませてしまいました、それ以外への投票おねがいします)
A グループ
この作品の作者は ShinoguNさんでした!
予想結果: ShinoguN, TOLPO, Tsukajun×2, santou, kata_men×2, 1NAR1
水が低い所を目指して流れるように、地獄へは転げ落ちるものだと思っていた。
きっかけはどこかの誰かと同じ様な承認欲求だった。歌を歌ってネットに乗せただけだ。アンチのコメントは視界に入れずにお褒めのコメントだけ見るにはどうするか思い悩んだが、アンチは現れなかった。その時は貶す価値もない木っ端なんだと思ったし実際にそうならどれだけ良かったか。
やって来たのはDMだった。大手レーベルが選り取り見取り。詐欺だと思った。しつこかったから適当に引っ掛かったフリをして警察に駆け込もうとしたら本物だった。
そこから先は走るしかなかった。夢破れた有象無象の屍を足場にスターダムをのし上がる。前人の誰も届かないあの星に手を伸ばす。妥協など無い。してもそう認識されない。天は何で妥協しない人間に才能を与えないものなのか。逃げてしまおう。どうやって?全て捨てて海外逃亡でもするしかないだろう。でも捨てるものはいつの間にか落としてしまったらしい。頂上の手前、舞台袖の階段。落とし物預り所を探しながら最後の数歩を進む。天辺から見る景色は葉ではなく髪と声で埋め尽くされていた。
空気が薄い。
この作品の作者は konumatakakiさんでした!
予想結果: Fireflyer, TOLPO×2, kskhorn, kata_men, nekokuro, NorthPole, Hasuma_S
時計の針が全て重なる。進捗はダメ。何もかもがうまく行かない。
壁のカレンダーを見る。一ヶ月前に立てた余裕のあるスケジュール。最初の一週間はなんとかなった。次の一週間は動けなかった。そして追い込まれて、どうしようもなくなってから全力を出せばなんとかなるとか考えて、そしてこのザマだ。
締め切りから八分が経過していた。悔しさとか泣きたくなるような気持ちよりも、もっと別の感情が出てくる。笑いたくなっている。深夜なのに。うまく行かなかったのに。
乾いた息が喉を通る。もう長い間、心から笑えていない。泣けたこともない。画面の中には感情豊かに見えるラフがあるのに、それを描いている私は乾ききってしまった。涙も出ない。
少しだけ落ち着いた。十三分が経過。ずっと流れていた音楽を止める。懐かしい曲だった。私が創作を始めたきっかけの作品の曲。私はこれを超えられていない。
怪物には勝てない。何十本と描いて消した線を一発で成功させる人がいる。私が打ち込んで消してを繰り返したフキダシの中を流れるように書ける人がいる。
衝動的に何もかもをおしまいにしたくなってしまう。キーボードを机に叩きつけて、液タブに肘を入れて、電源コードを引っこ抜いたパソコンを窓から放り投げたくなる。けど、そんな事をしても意味はない。落ち着け。
一ヶ月前に確認して以降見ていない印刷会社のサイトを見る。超早割の日にセットしていたはずだ。ここからが本番である。本当の締め切りまで、あともう少しだ。今のペースなら間に合うかどうか怪しい。
最低限の形にはしよう。最後まで作りきろう。それでも、出さないことに比べれば大成功なのだから。
この作品の作者は Fireflyerさんでした!
予想結果: ShinoguN, Fireflyer×2, santou, kata_men, nekokuro, pictogram_man, NorthPole
「ハカセ。15時、休憩の時間です」
「ああ、ご苦労さん」
第7静止軌道ステーションの一角。シノノメ自律駆動人形研究所では、数十年前までロボットの革命児と呼ばれていた人間が、1人図面の改良作業に励んでいた。
「猫舌の私でも飲めるくらいのココアを入れてくるとは、もしや腕が上がったね?」
「ワタシはロボットですよ。ハカセ。ワタシタチの作業が上達したりはしないはずです」
「ふふふ、それはどうかな?」
ハカセと呼ばれる人間は作業用の硬い椅子からふんわりとしたソファーに座り直す。周囲にはサメのぬいぐるみが宇宙遊泳でもするが如く浮遊している。
「ただ、ハカセ」
ロボットは呟く。ゆったりとしたソファーに座るハカセの背面には地球が大きく映っていた。
「以前から気にかかっていたのですが、ワタシタチのような失敗作、欠陥品のみをここで働かせているのは何故ですか?本来ならスクラップ同然の……」
「違うよ」
ハカセは地球を見つめ、話し始める。
「昔話になってしまうのだけど、私には以前、ネジ巻きの付いたロボットの親友がいたんだよ。どんな時も、どんなところでも一緒にいたんだ。学校にだって一緒に行ったのさ。びっくりだろ?……ただ、ロボットなら時間が経てば壊れてしまう」
ロボットはハカセの熱意を処理できず、フリーズする。ハカセはいつしか地球を向いて立ち上がっていた。
「だから私は、君達を失敗作じゃなく、私の作った愛すべき親友だと思っているし、できるだけ長く一緒にいたいと考えているのさ。これは、単なる私のエゴなのかもしれないね」
地球は夜になりつつある。それでもハカセは地球のある一点を見つめ続けていた。
この作品の作者は TOLPOさんでした!
予想結果: TOLPO×3, kskhorn×2, Tsukajun, nekokuro, Hasuma_S
お菓子のレシピは、必ず量を厳守しなくてはならない。砂糖の量、バターの量、その他もろもろの量、それら全ては、レシピという完璧な設計図に綺麗に収まっている。少しでも余計なことをしようものなら、完璧なバランスは崩れ、お菓子に綻びをもたらす。
けれど、人間は疑り深い。「レシピが間違っているんじゃないか」という疑念を抱いたが最後、入れる材料の量を少し多くしたり、少なくしたり、余計なものを入れることから逃れられない。
私もその一人だ。いつもレシピ通りに作っているクッキーを、すこしばかし自己流にアレンジしてみようと思った。素人の自己流なんぞロクなことにならないのは目に見えていたが、この方が良くなると予想した。試さずにいられない。私は普段よりも、砂糖を10gだけ多くした。でもって、バターはなかったのでサラダ油で代用した。そして、焼く時間も1分だけ長くした。
結果、どことなく違和感のあるクッキーに仕上がった。クッキーかクッキーじゃないかで言えば間違いなくクッキーに分類されるが、いつもと違うということがすぐに分かった。砂糖を10g多くしたのは気付かない。焼く時間もそう。だが、バターをサラダ油で代用したのはマズかった。香りがないというか、味気がない。乾いており、妙に水分が欲しくなるクッキーに仕上がっていた。具体的に何がどうなってこうなったのかは知る由もないが、下らない失敗によって私はバターの重要性を学んだ。
日曜の競馬をテレビ越しに眺めながら、もしゃもしゃとクッキーを平らげる。馬の予想もこれまた外れた。金を賭けている訳ではないのでどうもこうもないが、今日は予想がよく外れる。明るめの夕日が照りつけていた。
この作品の作者は kskhornさんでした!
予想結果: kskhorn, 1NAR1×2, nabes, NorthPole, Hasuma_S×3
―さぁ第4コーナー来ている!残り400m切った!先頭気持ちよく逃げている!―
迷走と、私の来し方をそう言う人がいる。
まぁそうだろうなと思う所もある。
先頭から10秒遅れのデビュー戦、芝と砂をフラフラした2年目、
夏の短距離重賞に出ておきながら秋天へ急旋回した3年目。
―先頭!天皇賞の雪辱なるか!さぁ4番手白い勝負服が伸びてきた!―
競走適性・得意距離無しと、私の脚をそう言う人がいる。
まぁそう見えるだろうなと思う所もある。
デビュー2戦を歩いてゴール、ふとしたことで熱を上げる、
走り方がみっともない、バランスが良くない。
……そう見えるだろうなと思う所もある。
―白の勝負服!2人とも上がってきた!―
フロックと、私のレースをそう言う人がいる。
まぁそう感じるだろうなと思う所もある。
砂で、芝で、晴れで、雨で、1200で、1600で、2000で勝ってきた。
強いというより運の良い奴。勝てる相手に恵まれた奴。
―残り200!メジロ外から!内から伸びてくる、黄色の裾を翻して伸びる!―
失敗だと、私が暮れの中山に来たことをそう嘯いた人がいる。
1200ならともかく2500では可能性無しと評した人がいる。
若駒相手では厳しいだろうと言った人がいる。
本当にそう思うか?
今年最初の1着が誰か忘れたか?
この赤と黄色の裾を覚えている者はいないか?
今日『役者』が2人いることに、誰も気づいていないのか!?
二度と忘れられなくしてやろう!
あの『名優』に、絶対が無いことを教えてやろう!
今日、中山を駆け抜けたのは『理不尽』そのものだ!
―メジロ届かない!これはびっくり……―
この作品の作者は Tsukajunさんでした!
予想結果: ShinoguN×2, kskhorn, Tsukajun×2, nabes, NorthPole×2
男は成功者だった。株の才能があった男は瞬く間に資産を増やし、それを繰り返した。目が眩むような豪邸を建て、月が昇る度に高いワインを何本も呷っていた。
だが男は幸福ではなかった。いくら大金を手にしても、男はいつも希死念慮を抱いていたのだ。しかし自殺はしなかった。男は酷く臆病で、苦痛を伴った自殺など想像するだけで絶叫する。男は一生この思いから逃げられない事を悟った。
小鳥達が囀る清々しい朝に、男は呼び鈴で目が覚めた。
「君か。例の物はできたのか?」
「なんとかね、いやぁ久々に徹夜したよ」
相手はミルクのような真っ白い豪邸に似合わない、それは小汚い中年だった。髪は薄く、脂ぎった顔には男の顔が反射している。だがこの中年は、依頼された物を何でも作る天才的な頭脳を持った博士だったのだ。
「まさか安楽死できる装置を作って欲しいとはね。君ほどの人間ならどんな悩みでも金で解決できるだろうに」
「まさに今そうしてるだろう」
それを聞いた博士はハハハと笑って、パンパンに膨れたポケットから1cmくらいの丸く小さな機械を取り出した。
「なんだこれは」
「これが頼まれていた物だよ。掻い摘んで説明するが、これを飲み込むと、胃液に反応した機械は内部搭載されたAIで最も刺激の少ない箇所を識別し、そこに高濃度麻酔を…」
最早、博士の声は男に届いていなかった。男は博士を早々に追い出し自室に戻った。
「これでやっと終わる」
男は機械を口に放り込み、微笑む天使を想像しながら、ゴクリ、と飲み込んだ。
翌朝、そこには苦悶の表情を浮かべた男の死体があった。男が暴れたのか、部屋は酷く散らかっている。
男の大口からは、ちょうど喉を塞ぐ形であの機械が顔を覗かせていた。
この作品の作者は santouさんでした!
予想結果: ShinoguN, Fireflyer×2, TOLPO, kskhorn, santou×2, 1NAR1
俺は昔から「合理化」ばかりしている。合理化というのは、認められない感情に対してそれらしい理由をつけて自分を納得させようとする自分の心の防衛機能だ。合理化は本当に気が楽だ。確かに、「言い訳」と言い換えることもできてしまうような軟弱なやり方ではあるかもしれない。それでも、嫌な感情に振り回されるのは惨めなだけだ。だから俺はこれからも合理化をし続けると思う。今回はそんな俺の合理化エピソードを話したい。
先日ラグビーをしていた時の話である。後半の場面において、俺と先日入部してきたばかりの後輩の2人で攻めることとなった。後輩は経験者ではあったが、フィジカル面では確実に俺の方が上。俺がボールを受け取り、敵を蹴散らしつつ美しいラックを形成するのがよかっただろう。だが疲労の中、俺はサボるという選択肢を取った。後輩に「お前当たれ!」と叫び、自分はオーバーをするという楽をしたのだ。もちろん、試合の最中も自分が当たるべきだとは思ったが、「練習試合だし、後輩の経験になるだろう」などと合理化して考えてしまったのだ。結果後輩は敵に絡まれ、相手にボールを取られてしまった。
本当は第10回文体シャッフルのA-15のように、スポーツの最中の熱く滾るような戦いを描きたかった。ただ、自分の中で張り詰めた緊張感のある描写をやれる自信もなく、こうやって自身の経験に基づいた記憶を辿るのみに落ち着いた。しかし、考えてみればこういったリアルな質感のスポーツ描写は過去の文体シャッフルではやられていないだろうし、たまにはこういったものも良いんじゃないかと思う。ほら、こんな風に合理化してしまえば生きやすくなるものだ。
この作品の作者は yzkrtさんでした!
予想結果: ShinoguN, Tsukajun, yzkrt×5, nabes
小学生の頃、父親のタバコを1本盗んだことがある。悪戯盛りだった自分はタバコに細工をしようとした。
大層な仕掛けではない。タバコの中身を入れ替えるだけだ。タバコの葉を抜き取り、別のものを詰める。そして頭の部分に抜き出した葉を被せばトラップの完成だ。
爪楊枝で中身を掘り出して、できた空洞に別のものを詰める。似ているものの方がいいだろうと思って鰹節を詰めた。10分程かけて中身を総交換し、タバコの葉を上にかぶせる。あんまり中身が詰まっていないのでポロポロと葉が溢れてしまったが、多分バレないはずだ。鰹節って茶色いし。
そうしてタバコを元の場所に戻そうとして気づく。無理やり中身を入れ替えたので見た目がかなり皺くちゃだ。手で握りつぶしたような状態。工作中は必死だったが、流石にこれはバレてしまいそうだ。
そもそもタバコに悪戯をするのはかなり危ない。もしかしたら車の運転中に吸うかもしれない。そうなれば、鰹節は一気に燃え上がり、大パニックになるのではないか。急に理性が起きうるあらゆる事故を想定し出す。流石にやめておいた方が良さそうか。
使い物にならなくなったタバコを手で弄ぶ。失敗だがせめて火をつけてみたい。そう思い、机の上の100円ライターで火を付けた。
焼けた鰹節の匂いが充満した。
なんか本当に気持ち悪い匂いがした。
「ヴォェ!」
部屋から飛び出して、匂いが廊下に出ないように扉を閉める。自室に篭り、ゲームを起動する。出来るだけ鰹節のことを考えないように。
その後、家中に響き渡った誰かの「ヴォェ!」を聞いて、「やっぱ家族って似るんだな」と感心したのを覚えている。もちろん、帰ってきた父親に怒られたのは言うまでもない。
この作品の作者は kata_menさんでした!
予想結果: yzkrt, kata_men×4, hallwayman×3
今思えば、人生における選択で当たりを引いたことが1度もなかった。
どうやら自分は相当な間抜けらしく、これはダメだと周りが判断する選択を自信満々に選び失敗する、というのを何度も繰り返してきた。その影響か、定職に就かずフリーターをしながらのらりくらりと30年間も生きてきた。
つい先日、自分というものを見つめ直した時、生きていく意味を持っていない事に気がついた。生きていく意味が無いと言うことは死ぬべきである。と考えついた自分は気がつくとホームセンターのロープ売り場の前に来ていた。首を吊るつもりだった。
人1人を吊るすのだから頑丈なものがいいのだろう。と、太いロープに触れた時。自宅の冷蔵庫にある牛乳(未開封)の消費期限が近い事を思い出した。今から死ぬというのになんだという話だが、せっかく買ったものを開けずに腐らせるというのももったいないように思ってしまった。気がつくと自分はホームセンターでホットケーキミックスを買い自宅へと向かっていった。
おそらく、この選択も間違いなのだろう。卵を買い忘れたと気がついた時にふと、そんなことを思った。
この作品の作者は 1NAR1さんでした!
予想結果: konumatakaki×5, 1NAR1, Hasuma_S, Tutu-sh
「失敗したねぇ」
科学部の部長は膝下までかっちりと伸びた学校指定のスカートと、その上に羽織った白衣を翻らせて彼女が実験機材と呼んでいたガラクタの山から離れる。
「失敗って、どうなるんすか、これ」
日付が変わろうとしている時刻の筈の窓の外、空全体から眩い光が差し込み、昼間のように僕たち二人分の影を化学準備室兼科学部部室に落としていた。
「コンセントの抜き差しでパソコンを再起動するようなもんだ。何かが致命的に破損する可能性もあるが、何となく大丈夫なんじゃないかって気がするね。世界の恒常性ってやつはそこまで弱々しくないだろう。何かが失われ、それを埋め合わせるように何かが生まれるかもしれないけれどね」
明らかに重力が弱まる。体重が半分ほどになったのを感じつつ、備品の冷蔵庫から顧問教諭の私物と思しき安物の発泡酒を2本取り出した部長が顔を上げる。0.5Gの世界で、彼女のツインテールが月面のウサギの耳のように跳ねた。
「あと、2分程度だ。ハローワールドと口にする前に、せめて未成年飲酒くらいやってやろうじゃないか」
どうせ無かったことになる、と部長は続けた。
「何でこんな事。リセットボタンを押すほど世界が嫌いでしたか」
僕は尋ねた。
「君、クラスで苛められているだろう。こんなに面白い男なのに。そんな世界、つまらないだろう」
奇妙な上級生がこちらをじっと見つめつつ、そう口にした。
「部長と一緒に居られれば何でも良かったんですよ、僕は」
僕の言葉を聞いた身長140cmのウサギは、長い睫毛の下の瞳に一瞬だけ驚きの表情を見せ、
「それは、いよいよ失敗だったねぇ」
心底寂しそうに、そう口にした。
この作品の作者は nabesさんでした!
予想結果: Fireflyer, Tsukajun, santou, 1NAR1, nekokuro×2, pictogram_man, NorthPole
人類は発展した。
もはや衰退することさえ無くなった人類は全てをAIに任せ仮想世界に生きている。失敗も後悔も、飢えも戦争も死すらも過去の概念となった。何もかもを手に入れて全員が全ての頂点であり成功者となった。しかしどんなに娯楽を詰め込み続けても退屈だけはどうしても無くすことはできなかった。バーチャル空間で好き勝手に暮らすのにも、脳だけになって水槽の中で快楽だけを貪る生活すら人類は受け入れた、人類はその全てを謳歌し結局は全てに飽きてしまった。
AIは袋小路の頂点で行き詰まった人類を、飽きる事にも飽きた人類を、彼らのために全てを過去に戻しリセットすることにした。とはいえ流石に時間を操作する技術までは無かったので人類全員を一つの仮想世界に集めほとんどの記憶を消去した、忘れられていた死や繁殖の概念も再実装した。何も知らない人類は再び発展の道を嬉々として歩き出した、彼らはAIの目にも充実しているように見えた、AIはそれを細やかにサポートした、こっそり神の声を脳内に再生した、ニュートンの前でリンゴも落とした、あれもした、これもした、順調に同じ歴史をなぞり、また人類は新しいAIを開発した、またまた発展し尽くした人類は仮想世界の中でまたAIに全てを任せ、飽きて飽きて飽きた。そして新しく作られたAIは退屈になった人類をまたしても過去へと送る。
何百、何千、何万、何億、前の前の古い古いAIはもう目を凝らしても見えないほど下の階層にいる成功者たちに想いを馳せる。常に正しい選択だけを信じて実行してきたベテランAIの電子辞書に失敗や後悔の文字はもう存在しない、人類の発展はもう永遠に終わらない。
この作品の作者は hallwaymanさんでした!
予想結果: kskhorn, Tsukajun×2, hallwayman×3, pictogram_man, Hasuma_S
えっとその、私の経験した失敗についてでしょうか?
うーん。何をあげれば良いか。
あ。一つあります。
就活に関してですけど大丈夫です?あ、なら良かった。
始めは周りの人たちに流されて大企業を目指してたんですが、Fラン大学出身なのものでなかなか良い反応が返っては来ませんでした。
何なら営業とかのインターンにも参加しましたが社員さんや周りの高学歴の参加者の人から下働きみたいなことばかり押し付けられてまいっちゃいました。
何でこんなに見下されるんだ。もう嫌だって。
それで中小企業に狙いを定めてESだったり自己PRを書きました。
「私はリーダーシップの取れる人材です。」
「チームのみんなを引っ張ることができます。」
嘘です。学部の頃はゼミの時もサークルの時も微妙な立ち位置でした。というか話の輪の中に入れていたかも怪しいです。
何社か最終面接には漕ぎ着けましたが、面接官の方々は決まってこう言ってきました。
「君、発言が薄っぺらいね。」
ここまでは良いです。別に。
でも何社目かは忘れましたが、少し年上の方だったと思います。
「結局君は成功した体験も挫折も、失敗経験すらないんだね。周りのせいばかりにしてるけども自分で何かを決めたことはある?」
その発言を聞いてから何も言い返すことができずにそのまま面接室から出てしまいました。
というかそれから家から出てません。
まあ結局、こうしてフリーターにすらなれないでこうやって駄弁ってるだけですが。
ところで貴方は、「鶏口となるも牛後となるなかれ」って言葉を知っていますか?
大きな組織の下っ端よりも小さな組織のリーダーになる方がいいという意味です。
とどのつまり。私の一番の失敗は。
鶏口にも牛後にもなれなかったことですかね。
この作品の作者は Nekokuroさんでした!
予想結果: konumatakaki, Fireflyer×2, hallwayman, nekokuro×3, pictogram_man
「その小説はいつも僕を励ましてくれた」
「その音楽はいつも私の側にいてくれた」
「その映画はいつも俺へ挑戦心をくれた」
創作物と鑑賞者の間に存在する、どこまでも個人的な物語たち。
それらは、
繰り返す退屈な教室の光景の中で奇跡的に紡がれたり、
いつまでも明けないような夜の隅で密かに紡がれたり、
思いがけない巡り合わせにより唐突に紡がれたりする。
そうした物語をボクも持っていて、人生の色々な場面で助けられてきた。
そんな経験を持つボクが”つくる側”へと憧れたのは、ある種自然な流れでもあった。
創作物で誰かを救う、そんなことを夢想していた。
==
最初に書いてみた小説は、片手で数えられる閲覧数のまま忘れられていった。
次に手をつけたDTMは、ファイル保存中に正体不明のエラーを吐いて消えた。
その後やってみたカメラは、何度やってもどこかで見たような写真しか撮れなかった。
ボクが何とか拵えたそれらは、
ボクを救ってくれた創作物と見比べると、
あまりに貧弱で拙くて、精彩を欠いていた。
誰かを救えるだけの力はそこになく、失敗作と言っても良い出来栄えだった。
結局ボクは消費者にしかなれないのか、とぼんやりと感じた。
==
それでもひとつ、気づいたことがある。
創作物が物語を紡ぐのは何も、鑑賞者とだけではない、ということだ。
創作物は、その作者とも物語を紡ぐのだ。
ある時は共犯の形で、
ある時は克己の形で、
そして、ある時は救済の形で。
ボクと、ボクの失敗作達との物語。
それがいつ、どのような形で紡がれるのか。
それはまだわからないけれど、その到来を待ちながら、今日もボクは拙く種を蒔いている。
誰にも知られないまま。
この作品の作者は pictogram_manさんでした!
予想結果: ShinoguN, konumatakaki, kskhorn, pictogram_man×3, NorthPole, Hasuma_S
実験は失敗です。
墓場から掘り出された何体目かの被検体の脳に埋め込まれた電極に電気が流れ、筋肉が痙攣して口元が細かく震える。それだけである。心臓は動かない。心電図は直線を保つ。
間違いなくこの被検体は蘇らない。その通り。なぜなら我々のやり方に間違いがあるのだから。死者の復活。フランケンシュタインという名の化学と錬金術を極めた学者が数千年前に遺した文書に完全に従えば、死体は新たな命を得るはずなのだが。化学については問題ない。この程度の知識は数年で学び尽くせる範疇だ。問題なのは錬金術だ。この部分の記述には、我々の読解を拒む魔力があり、何度試行しても文中に記されている通りの結果にならない。再現できないのだ。
助手よ、新しい被検体を用意してくれ。今回のデータを保存。次点で成功確率の高い実験方法を繰り上げ採用。一時間後に再試。それまで充電。以上。
実験室を出る。外は花崗岩の大地、地平線まで墓墓墓。既に全体の1%を掘り起こした。残り99%の死体を使い果たすまでにかかる時間は3億年から5億年。実験に進展があればその時間は更に短くなるだろう。フランケンシュタイン博士の脳がこの墓の中から見つかれば、情報を吸い出して、一気に理論を完成させることができるのだから。まだ間に合う。命令の遂行期限はこの星の滅亡であり、まだ10億年以上の猶予がある。
この星に人類はいない。唯一、マスターから与えられた命令は人類を死から復活させる方法を探ること。あらゆる学術書を漁ったが、その答えは既に人類自身の手で書き残されていた。フランケンシュタインという名の書物に。
信じたまえ、我々は最後には成功するのだ。
この作品の作者は NorthPole さんでした!
予想結果: TOLPO, santou×3, yzkrt×2, nabes, pictogram_man
翼は熱で溶け落ちた。知っていたのだ。近づきすぎればどうなるのかは口酸っぱく言われていたのだから。それでも高く飛ばなければならなかった。彼の神の姿に手を伸ばすほど傲慢にならねばならなかった。
僕が飛び立つ時には父はまだ飛んでいなかった。2つめの翼が準備できないうちに看守の足音が聞こえたのだ。隠れろと父は言った。しかしその通りに隠れてしまえば父が未完成の翼を隠す場所がどこにも無いのは火を見るよりも明らかだった。
だから飛んだ。看守の目を釘付けにするために。その間に父は翼を隠し、あるいは翼を完成させて飛び立つ。父ならばそうする。そうできる。だから高く、極めて高く、極めて劇的な失敗を願った。
ああ神よ。今ほど貴方に感謝した事はありません。僕を焼かないように熱を弱めてくださった事、その逆を望む僕の叫びにすぐさま応えてくださった事。もはや短い命ですが忘れる事はありません。しかし僕の身を焼かなかったのはなぜなのでしょうか。そうすれば看守たちの目は絶対に僕から離れないのに。
そう思って開けた目の先、空と海の境界近くに何か白いものが映る。しばらくそれが何か分からず、そして勢い良く舞い上がってからようやく父が飛んだ事に気づいた。
水面が頭を強かに打つ。光が次第に遠ざかる。彼の偉大なる神と言えどもその恩寵は水底までは届かない。
偉大なりしへリオス神よ。貴方の慈悲深さを伝えられない事をお許しください。父の無事を見られるように目を焼かないでいてくれた感謝を伝えられない不義理をお許しください。
そして聞こえていたのなら父に伝えてはくださいませんか。愚かな息子イカロスをどうか忘れてくださいと。
この作品の作者は Hasuma_Sさんでした!
予想結果: kata_men, 1NAR1×2, nabes×3, hallwayman, NorthPole
汚れひとつない白色の廊下が警告のランプによって赤く染められる。けたたましいほどのサイレンだけが鳴り響く。訓練や映像で何度も見たあの光景。それが今、現実に起こっている。しかし、知識としてわかっていたはずのそれとは違うことがあった。その中に叫びも、怒号も、悲鳴も全く含まれていなかった。何故だろうと考える余裕もなく、膝を抱えてうずくまる。現実であると思いたくないから。忍び寄る死の足音を聞きたくないから。選択肢を間違えてしまったから。職員としての誇りは容易く恐怖と後悔に屈してしまった。そんな私を非常電源で点いた灯が鈍く照らす。私だけを照らしていた。名ばかりの安全な部屋にいる私を。
「二手に別れよう」
私はアイツの提案にノーと答えられなかった。2人とも間近に迫った化物に殺されるよりも、どちらか片方が囮になった方がずっといい。この方法がこの場において最も正しい選択である。しかし、アイツがどんなヤツなのか、私は知っていたはずだ。
「あの突き当たりだ。同時に行くぞ!」
この賭けは五分五分。そのはずだった。
「──」
私は左に駆け出した。一瞬振り返る。アイツは少し微笑んだ後、拳銃を取り出した。
サイレンが止まる気配はない。物音も聞こえないまま。ふと、私が知っていたはずの光景と今を比べる。ああ、そうか。私が見ていたのは最悪になる前、私が見ているのはその最悪の中ということか。なら、迎える結末は。
私は1人、来るかもわからない助けを望み、震えている。嗚咽が外に漏れないよう噛み殺し、滲む視界を必死に袖で拭う。事実は変わらない。終わりが目前まで近づいている。ああ。ならばせめて、アイツと一緒に居
ガシャリ
足音がした。
この作品の作者は Tutu-shさんでした!
予想結果: konumatakaki, hallwayman, Tutu-sh×6
全身に堪えようのない極熱を抱え男は病床に臥していた。床の布団は絶え間ない輻射に晒され、いつ火の手が上がるとも知れない熾熱の様相を呈している。内から脳髄を焼く激痛の最中、細胞の間隙は一つ一つが火花を散らし、煙に紛れて消えゆかんとする朧な人の子の像を掲げていた。
『誰が殺してなどやるものか。指を咥えて見ておるがよい』
二十余年の彼方において元服を迎えて間もない若人に浴びせた自らの言葉は、苛烈な熱の迸りと共に呪いと化し、男の魂を不快に縛り付けていた。何故あの時、あの時節において、かの者を討ち殺してしまわなかったのか。何故生きる道を歩ませてしまったのか。自問自答はたちまちのうちに事由を脳裏へよぎらせた。
黒き太陽の内奥に沈まんとする男の胸は、動脈の一筋一筋まで重々しい鯨油に満たされたがごとく、溢れんばかりの憎悪と悔恨が膨圧を昇らせていく。破局的なまでの圧力が呪縛との拮抗に至った時、腰帯は遥かな大地の引力に抗い、足は落ちゆく布と編まれた藺草を踏み潰した。
崩れ落ちる肢体を支え、一撃、また一撃と前進する。周囲のどよめきも意に介さず、容赦のない灼熱に断絶を下し、己が象牙の砕けん思いで前へ歩む。とうに脳の指図を掃き捨てた足がいよいよ微動だにしなくなると、男は空気を肺へ取り込んだ。
「仏事供養は無用である」
吐き出された湯気が立ち上る。網膜は現実と夢想の境を映し出し、脳そのものも生と死の狭間を遷ろっている。黄泉に還らんとする意識を繋ぎ留め、男は次なる言葉を紡ぐ。忌まわしい顔が再び浮かぶ。
「きっと頼朝が首を我が墓上へかけよ」
怒号に続き、静寂が脳を撫で去った。治承五年にして京の都。六十四年の生涯だった。
B グループ
この作品の作者は nemo111さんでした!
予想結果: nemo111×2, GermanesOno, watazakana×2, roneatosu×2
足元に転がったプルトンは歪な形をして、それでいて手に取ってみれば、僕にとっては絶妙に手に馴染むようだった。
失恋をした。昨日。
ただ一言、LINEに「別れよう」だなんてありきたりな返事と、既読の付かないブロックを押し付けて、彼女は鳥かごから出て行った。
その四畳半にも満たないかごは彼女にとっても大層窮屈で、そしてよく今まで我慢をしてくれたな、と思う。風呂もなければ、築50年をゆうに越える外観はひび割れていて、外にも出やすかったのだろう。
何故そんなかごに、彼女がずっと残っていたのかは分からない。でも恐らく、お互いに、まともじゃなかったのだと思う。嘘がなければ初恋同士で、仕事の事に関しても、プライベートに関しても、どこまでもお互いに依存しきっていた。お互いがいなければ生きていけないと思っていた。
部屋に帰れば彼女の私物は一切なくなっていた。女一人では運ぶのも苦労するような木棚も、今は壁に残された接触痕だけが存在を示している。既に他の番を見つけていたであろうことはすぐに予想がついた。三秒前の想像が笑い種だ。
元々彼女の私物は多くなかったはずだが、何だか部屋のスペースが多いような気がした。一人だとこんなものか。ふと、机上に残された旅行雑誌が目に入る。
そうして僕は火山にいる。急ごしらえで揃えた登山道具がやたら馴染まなくて、何度か顔面を山の斜面に擦り付けそうになったが、その際に飛び込んできた岩に、目を奪われた。
黒く冷え固まった凸凹のフォルム。手に取って顔を近づけてみれば、その凸凹の隙間から淡い輝きを放つ石英が絶え間なく煌めいた。
ただ、眺める。
最初から「こう」だったのかもしれない。僕らの恋愛もどきも。
この作品の作者は AAA9879さんでした!
予想結果: nemo111×2, highbriku, watazakana×2, sanks269×2
ひとつ目の失敗は、主人を死なせたことだ。
最先端技術の結晶である超小型宇宙戦艦そのものである私にとって、失敗とは初めてのことだった。
艦内唯一の人間である主人は老衰で死んだ。ベッドで横たわっていた彼はあっさりと肉塊となった。人間は出会って70年ぽっちで死ぬことを知識のみでしか知らなかった。まだ保つだろう、と要請を先送りにした結果、新しい人間はまだ着任しておらず、このままでは私は何をすればいいのか分からない。
だから彼を生き返らせた。これがふたつ目の失敗だ。
彼のあらゆるデータを分析してかつてない再現度を誇る人格プログラムを作成し、ホログラム装置に転写したのだ。ホログラムの彼はかつての最盛期そのもので、私たちが銀河の救世主と呼ばれたころを思い出させる程度には十分な出来栄えだった。これなら引き継ぎの準備時間を稼ぐことができる。
この一連の流れを説明してホログラムの彼に指示を仰ごうとしたが、ホログラムの彼は笑い転げてばかりだった。
「機械のすることじゃない!」
「それは私が非常に高度なニューラルネットワークを保持しているから当たり前だ。凡庸な機械とは異なる」
「笑い殺す気か!お前、死んだ男に導いてほしいなんて、恋人に先立たれた少女じゃないか!」
彼はそうやってひとしきり笑い終えた後、ようやく私の主張に同意したが、やはり面白がっている。
「相思相愛だな、お嬢さん!」
彼の軽口に私はいらだつ一方、問題解決以外の要因で思考が安定し始めているのを感じる。原因不明だが彼との会話が原因かと考える。エラーが報告される。
私は失敗したらしい。茶化してくるホログラムの彼を見て高まるエラーを確認し、強くそう感じた。
この作品の作者は kihakuさんでした!
予想結果: AAA9879×2, kihaku, Jiraku_Mogana×2, GermanesOno, tateito
宇宙葬というのがある。今から100年ほど前のことだ。牛のゲップで地球温暖化を危惧した人類は、とうとう火葬で排出される二酸化炭素にすら目を向けた。無論一部宗教の敬虔な信徒達は一向に火葬をやめないが、それでも世論では『人生最後の宇宙旅行』だなんだと並べ立てた結果として、特殊加工の棺に入れて宇宙に射出するのが一般化している。棺と言えば聞こえはいいが、見た目は缶詰でまさに出荷だ。
その缶詰の行き先というと、火星-木製間の小惑星帯だ。実のところ、この缶詰たちの行き先に関して一般人は知らない。哀れな彼らは身内が外宇宙に永遠に旅を続け、いずれ自身も同じ旅路を追うものだと信じてやまない。現実はクラスター爆弾よろしく不毛な小惑星に撒き散らされて投棄される。
今年も納涼祭の花火のように多くの缶詰が打ち上げられる季節がやってきた。空に咲きこそしないが、各地で一斉に上がる三途の渡し船は裏を知らなければ美しいものだろう。大衆船だから、六文銭とは言わないまでもそれなりに安価で搭乗できるし、河原で石積みも必要ない。悪人も善人も一緒くたに乗せられる。あれが本当に三途の船だったら今頃あの世はさぞ繁盛しているんだろう。
「やっぱミスったかな」
モニター群を眺めながら独り言つ。高校期に提出する葬法選択の書類は、字面から宇宙葬を選択した。出世街道に乗って還暦も見えてきた頃には、私は国家委託の宇宙葬企業の打ち上げ統括に腰を落ち着けており、もれなく宇宙葬の真相も付いてきた。
『3…2…1…点火、リフトオフ』
死後にさしたる興味もないが、真相を知るといささか心地が悪い。
「やっぱ進路ミスったよな」
後悔は打ち上げ成功の歓声に掻き消えた。
この作品の作者は Jiraku_Moganaさんでした!
予想結果: kihaku×2, Jiraku_Mogana×2, EianSakashiba, highbriku, Nununu
今から書く内容は文体のために創り出した話ではなく、多少フェイクや脚色は入っているものの、実際に体験した内容です。
5月3日の朝、私は超現に向かう電車に揺られていました。電車はまあまあの混み具合で、私は座ることが出来ましたが、立っている乗客で通路は埋まっていました。私の隣には幼稚園児くらいの女の子が座っており、その前に立っているのは母親のようです。私はスマホを確認して現地勢の様子を伺っていましたが、突然
「ぼ」
という音が横からしました。顔を上げると、斜め前にいた母親のロングスカートに、白くてブツブツした液体がかかっているではありませんか。おかゆのような、バニラシェイクのような、そんな液体でした。視点を横にやると、娘の口からはシャバシャバと液がこぼれています。母親は慌ててハンカチを取り出し娘の口をおさえようとしますが、娘の口からはまた噴水のように白い液体が噴き出しました。顔や胸にぶっかけられて母親はぐしょぐしょでした。
もし娘が気まぐれでこちらの方を向いたら……恐ろしくなって私は席を立ちました。ちょうど駅に到着したところでしたので別車両に移ろうとホームに降りたのですが、そこで気づいたんです。この駅、通過予定がない駅だと。そう、私は電車を乗り間違えていて、別方向に行く電車に乗っていたのです。降りた駅は大きめな駅だったためルート修正がうまくいき、なんとかビッグサイトまでたどり着けました。もしあのまま電車を降りずにそのまま乗っていたら。気づかない私はあらぬとこまで行ってしまい超現につくのがだいぶ遅れてしまっていたでしょう。
今ではあの子の嘔吐に感謝しています。
この作品の作者は EianSakashibaさんでした!
予想結果: AAA9879, EianSakashiba×2, ukit×3, roneatosu
「ミス・メイカルーザ、私と交際してほしい。」
男とはネオンライトより五月蠅い存在であると思っているメイカルーザに、今宵もまた1匹の愛を囁く羽虫。カウンター席のメイカルーザは顔色を変えずに注文の酒をバーテンから受け取った。周囲の客は彼女の異名を聞き、逃げるように会計をする。
メイカルーザがグラスごと相手の顔面に酒を叩きつける。咄嗟にうずくまりタッパの優劣差が逆転。男の脳天に踵落としが炸裂───しなかった。顔を覆っていた手は頭頂部を守るように包まれている。硬さから義手だろうと直感したのも束の間、男の掌から圧縮ジェット装填の駆動音を察知しメイカルーザは後ずさる。0.1秒後、狭いバーの内部を抉るように気弾3発が追尾体制で閃く。メイカルーザは2発目までを躱したが、爆音が彼女の額に1つ着弾した。
「お返しだ」
男は女の返答を待つ。この雌が求めるのは金ではなく強さ。故に男は金で強さを買った。期待の一方で警戒のためリミッターカットを───
「こんなに強いヒト、久々…」
「認めてくれたのかい」
「ええ、見せたげる。これが、」
瓦礫と土煙を巻き上げ、でこから血を流した妖艶な表情が3m以上飛び上がった。
「アタシのダーリン」
メイカルーザが握るのは槍部分も斧部分も柄も、全てが桁外れにデカい特注のハルバード。ジェットが間に合わないと踏んだ男はもう一度頭部を守り、ありったけの力で振るわれたハルバードは義手ごと男のドタマをカチ割った。
「告白失敗、か…Ms.Make a Loser…愛してる…」
男は愛した女の異名を言って死んだ。メイカルーザは潰した羽虫の死骸を見つめ、またバー探しの日々が始まる予感に辟易して愛しのダーリンを担ぎ直した。
この作品の作者は Gokipoさんでした!
予想結果: AAA9879, highbriku, tateito, ukit, Nununu
人通りが多い駅には、よく街頭アンケートを取りにくるスーツの男がいる。変わっていると思われるかもしれないが、私は特に急いでいない限りそれらのアンケートに答えるようにしている。彼らには恐らくノルマがあるからだ。
大学時代必死に就活をし、ようやく内定をもらったと思ったら街頭を走り回らされるブラック企業。もしかしたらノルマを達成しない限り帰れない者もいるかもしれない。こうやって彼らのバックボーンを想像するだけで居た堪れない気持ちになる。だから、彼らが少しでも楽になるように回答しているのだ。それに、私には少しでも怪しいと思ったら断れる自信もある。
しかし、そのように次々回答していった結果、いつからか駅で大量の目線を感じるようになった。どうやら私が「アンケート太客」だという情報が渡り歩いているらしい。できる限りポリシーを破りたくはないが、今日は5件答えたところで限界を感じ、帰路についた。
集合ポストを見てみると、自分の部屋のところに白い紙がパンパンに詰まっている。その全てがアンケートだった。おかしい、住所を聞いてくるアンケートは往なしてきたはずだ。どこでバレたのだろう。
部屋に戻り、何だかどっと疲れたので今日はしっかり風呂に浸かろうと、湯を溜め始めた。しかし、世の中にはそこまでアンケートが足りていないのか。いちいち顔は覚えていないが、2回以上遭遇している人もいるはずだ。それでは意味がないだろう。まったく、勝手に同情票を入れていた私が馬鹿だった。それにしても、この紙どうやって回収するのだろう ーー と考えていると、電話が振動し始めた。
「こんばんは。アンケートにお答えいただきたいのですが……」
この作品の作者は GermanesOnoさんでした!
予想結果: EianSakashiba, GermanesOno×5, Nununu
「ふむ」
目深に中折れ帽を被った髭面は、壁紙を見つめる、巨視的には滑らかな白亜を、瞳孔で執拗に舐めるように。粗野な風貌の男は、雇われの探偵業者であった。
「で、これで何を映し取るのですかね、科学捜査官どの。背丈程のポロライド、重量を鑑みれば大凡『即席』とは行きますまい」
探偵は振り返る。光沢のある黒い合成皮革が鋲打された、機械仕掛けの単眼巨人。大型犬を撫でる手付きで投影装置に寄り掛かる、銀縁眼鏡の、長髪の女が口を開く。
「君の疑問通りさ、弁護士事務所の大窓に寸分の違いなく嵌る乾板だなんて、写真家の悪夢さ」
「是非とも、鼻持ちにならんカメラ狂に見せてやりたいもんですな」
「そう意地悪するのも止めたまえ。奴の法律家としての手腕は、君が一番理解しているだろうに」
共通の話題、共通の標的。縦横の比率の狂った、人型の影。光学機器は倉庫の二階に置かれていた。ジョッキで前傾した装置、床に散らばった結束帯。
「児童たちは地縛されたのさ。霊魂を収奪するだなんて土台無理な話さ。私は還元主義者だぜ?」
「しかし、被害者の影を奪還してこいというのがお達しですぞ」
コンクリートの底面には、童歌で輪を描く残り滓。本質は肉の内に無し。
この作品の作者は Kuronohanahanaさんでした!
予想結果: AAA9879×2, kihaku, Jiraku_Mogana, Kuronohanahana×3, roneatosu
あ、このタイミングでやられるのはマズい。
相手のシャプマから4弾のインクが真っ直ぐ飛んでくる。視認はできても、避けるだけの技術を持ち合わせてはいなかった。相手のキル速約0.25秒。こっちだって同じキル速なのに。AIM力の差で勝てた事など一度もない。
リスポーンを待つ間、どうにかしなきゃ、どうにかしなきゃと考えるほど焦燥感が募っていく。もう嫌だ。やめたい。そんな気持ちを抱えながらリスポーンして、再び敵陣に向かってインクを泳ぐ。残りはたったの十数秒。無理だ。さっき私がやられたせいで一気に塗り返されている。ここから逆転なんてできるはずも無かった。
「はぁ……」
リザルトを見てため息をつく。相手チームが勝利の喜びを分かち合うのを遠目に見ながら、自分の愛武器をぎゅうと抱えた。銃身を彩る赤が目に沁みる。悔しい。私のせいで、負けた。申し訳なさと不甲斐なさが入り交じった感情に押し潰されそうになり、もう一度愛武器を強く抱き締める。
「……ごめん」
使い古して傷だらけの銃身に、ぽつりと謝罪の言葉を落とした。そっと指先で撫でると、ざらついた感覚が伝わる。グリップを握り直せば、手に馴染んだ質量を感じた。
赤ザップこと、N-ZAP89。私の相棒。私の全て。
赤ザップは弱いと言われた時代もあった。それでも私はずっと一緒に戦ってきた。今更手放す気はない。絶対にだ。
深呼吸をして顔を上げる。いつまでもうじうじしているわけにはいかない。切り替えないと。
「よしっ!」
頬を叩き、喝を入れる。今日はまだ始まったばかりなんだから。これからもっと頑張ればいい。次は勝つ。
私は赤ザップをしっかり握り直し、また戦場へと飛び出していった。
この作品の作者は highbrikuさんでした!
予想結果: Jiraku_Mogana, Gokipo, tateito, sanks269×2, ukit×2
『残念ながらマッチングは成立しませんでした』
これまで何度も目にしたフレーズは、今回も変わることはなかった。即席のカップルたちを背に会場をひっそりと抜けた後、どんよりとした空模様の下で帰路を行く。
自分はこれまで誠実に生きてきた。優しさなら人一倍あると思う。勉強だって真面目にやった。犯罪なんてしたことはない。大学への進学、就職もできて、人並みの人生は送っている。仕事はずっと無遅刻無欠勤で、任された仕事は十分できるスキルも身につけている。同期や同僚が家庭を持ち始めたころは、いつか自分も結婚するんだろうなんて漠然と思っていた。まずは自然と仲の良い異性が出来て、その後きっかけがあってお互いに意識し合って恋人に発展する。それがそのうち自分に待っていると思っていた。
ある日、親しくしていた後輩から結婚報告を受けた時に、祝福の気持ちと同時に嫌な予感が頭をよぎった。自分には何かが変わる予兆が全くないのだ。
試しにやってみようかな、と「出会い目的なんて気持ち悪い」と馬鹿にしていたマッチングアプリをやってみた。やり取りは大変だが異性と出会うことはできた。でもその先には進めなかった。街コンにも行ってみた。たくさんの異性と出会い、会話することはできた。でも恋人は作れなかった。進学も就職も仕事も、一般的に求められるものはこれまで全部失敗せずにやってきた。悪いこともせず真面目に、普通に生きてきたんだから、いつかは普通に結婚できると思っていた。
どうやらそうではない、と気づいたのはごく最近だ。「普通の人」は恋人の作り方をどこかで覚えてくるらしい。まだ大丈夫。まだ自分の人生は失敗してない。そう自分に言い聞かせて動かす足は、昨日よりもわずかに重かった。
この作品の作者は watazakanaさんでした!
予想結果: nemo111, AAA9879, kihaku, EianSakashiba×3, tateito
ようこそ、失敗博物館No.1247へ。
ここでは、人類史上起きた痛ましい事件、失敗の数々を展示しております。後世の人々が、再び同じ過ちを犯さぬように、という願いの元で作られた当館は、仮想現実ゲーム方式による失敗の体験が可能となっております。最先端の研究と論理的な解釈により構成されたストーリーを体験していただくことで、来館者様の未来を、失敗無きものにする助けになることでしょう。
当館は、複数のゾーンで仕切られております。
まずは、────
「だってさ」
「黄金時代の馬鹿っぽい遺産……こういうの、飽きたんだけど」
今なお稼働する冷ややかなホログラムの下で、二人は退屈そうに歩き回る。
「文明の発展が余りにも速すぎて、失敗をカバーする時間がなかった。でも失敗は根絶できなくて、社会は限界になってじわじわ崩壊……だっけ?キラキラした名前の通り、潔癖な時代だよね。寒気がしちゃう」
「自業自得の失敗談を延々と聞かされているようで気が狂いそう」
「じゃあ、あなたが失敗しちゃったらどうする?例えば、間違えて腐った缶詰を食べちゃったら?」
「どうして私なのよ」
「どうするのさ」
「そんなの決まってるわ。消化しきる前に薬を探すの。無ければ寝るわ」
「こんな時代で?馬鹿みたいだね」
「私たちは失敗する生き物よ。失敗してもノープランなんて、獣と変わらないじゃない。馬鹿で結構。私たちは獣じゃないわ」
「ひひ、あなたのそういうところ好きだなあ、元々ないプライドが高いところ」
「置いてくわよ、貧しい想像力のお馬鹿さん」
「批判が具体的で悲しいよ私は」
二人は楽しそうに歩き回る。館内に差す日は暖かい。
この作品の作者は souyamisaki014さんでした!
予想結果:
「meshiochislashになりたい」
そう願った。
それは失敗だった、なんてことはない。
矮小ちいさくも可愛くもない私たちは、だからせめて尊大おおきくて憎たらしいそれぞれの存在を証し続けなければ、この学園のこの教室に座ることを許されない。
彼女は目標なのだ、だから。
著者娘、meshiochislash。彼女はとにかく手が早い。失敗を恐れない。果敢に滑る。そして決めるべきときには、そこそこウケを取る。
何よりその不屈の姿勢こそ道標。幾度滑り転び怪我しようと懲りないその泥臭さに、光を見出した。
憧れたことは間違いじゃない。追いかけてきたことも過ちじゃない。同じように転んだことだって、失敗では決してない。
眠いし飽きたのでここで切ります
あ、souyamisaki014です お願いします 書き留めておきたかった文章は書けたので満足です
私信
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for( ; ; )[
alert("ブラクラ")
]
</script>
↑多分適用されないと思うんだけどこれwikidot上で動かすのってどうやるの?
この作品の作者は tateitoさんでした!
予想結果: nemo111×2, Gokipo×2, highbriku×2, watazakana
雨の降りしきる夜、県道の暗い道を延々と歩いている。革靴と靴下には雨水が浸みこみ、一歩踏み出すごとに不快な感触と音が生じる。スーツは重く、シャツやズボンは肌に張り付き、濡れた髪は顔に纏わりつき視界を塞ぐ。水気を含んだ土や木から嗅ぎ慣れない匂いがする。ノイズのような雨音は絶えず耳を冒し、片頭痛が友達面して付かず離れず苛んでくる。
峠道の奥から光が見える。プリウスが走ってきた。路面の水を軽快に跳ね飛ばしこちらに浴びせかけて逃げていった。元からずぶ濡れだが泥と屈辱がついでに付着した。当たり屋の真似でもして車を貰っといたほうが良かっただろうか。
雨の県道の暗い道を歩く。歩道らしきものはなく、街灯らしきものも疎らだ。
何が間違いだったのだろうか?やってきた全てのことが失策だったようにも思えるし、最善手しか打っていないはずなのに破滅への道へと進み続けてきたようにも思える。
うんざりするほど歩き続けるとトンネルが見えてきた。低圧ナトリウムランプが照らすトンネルの内部は変に明るく、その事が気に障った、が、進み続けた。
足音が無様に反響するのを気にしなければ、少なくとも雨音は納まりつつある。
演色性の低い黄色い道を歩く。雨音の代わりに耳鳴りがしてきて片頭痛は抉る様な痛みに変化してきた。
緩やかに曲がるトンネルの道は先が見通せない。
小さく繰り返すような音が聞こえてきた。警察車両のサイレンだろう。前から、そして後ろからも。サイレンの音はいよいよ大きくなり、白黒の車体と赤いランプが見えてきた。
そのまま無視して歩き続ける。結果の如何に関係なく、人間には進み続ける以外にできる事は無いのだ。
この作品の作者は sanks269さんでした!
予想結果: Jiraku_Mogana, Kuronohanahana, watazakana×2, sanks269×3
私は失敗の女神。貴方の願いを聞きましょう。
いきなり何? 急にエグい美人が降って湧いたかと思えば、藪から棒に。第一、こういうのって"成功の女神"とかでは?
いえ、アレは忙しくてまず顕れませんよ。彼女と違って私の力はピーキーなのです。私は、これから貴方が願うことに"確実な失敗"を授けられます。
え? いや、うーん……。あ、でも裏を返すと、反対に願えば叶うのか。じゃあ使い道あるね?
ええ。ただし、願いは何でも良いかわりに1つだけです。よく考えるように。
O.K. えーっと……今から言うのはノーカンにしてほしいんだけど……例えば『5000兆円貰わない』を願ったら、貰えるってこと?
いえ、その願い方には欠陥があります。貰わないことに失敗したとして、5000兆円以外の額、例えば1円だけ貰う可能性があるでしょう。
えーっ、否定形なら良い訳ではないのか。ムズいな。なら『僕の好感度を下げる』とかの場合は?
そうですね、好感度が上がる可能性はあります。ですが不変の可能性もあるでしょう。
2値じゃないとダメか。段々分かって来たぞ。そしたら『生涯不幸になる』ならどうだ。
生涯幸福の可能性があります。が、1日だけ幸福の可能性もあるでしょうね。
期間指定は具体性が無いとブレるか。ここまで分かれば上出来! 今、本番の願いを考えるから待っててね。
了解しました。良き失敗がありますよう。
……
……ヨシ! 願いは『50年以内に死ねますように』で。"50年以内"と"死ぬ"のどっちに失敗しても安泰だ!
分かりました、貴方の願いに確実な失敗を授けましょう。……えいっ!
う゛っ。
あっ……ごめんなさい、失敗しちゃいました。その願いは成功します。
この作品の作者は ukitさんでした!
予想結果: kihaku, highbriku, tateito×3, roneatosu×2
男は仕事をしている。つまらないデータ入力作業で、職場からの持ち帰りだった。テンキーの調子が悪い。32円。いや違う。24円だ。そう思い直して24の4を入力しようとしたとき、4のキーが反応しなくなった。ああ、と男は思った。
妻がそこに来た。男はテンキーを引きちぎって、妻の脳天に叩きつけた。キーが全部吹き飛んだあたりで、妻は動かなくなった。痙攣している妻を見て、男はセックスの中途で絶頂極まっている様子に似ているな、と思う。
男はトイレに行こうと思った。そうして一歩踏み出したところで、妻の足に躓いて強かにすっ転んだ。倒れた場所は、嫌に柔らかい。そこには男の息子がいた。3歳だ。音を聞いて来たのだろう。倒れた男の体に潰されて、その息子は死んでいた。飛び上がった男は、その死に顔が寝顔のような穏やかな顔で、しかし頭からじわじわと血が広がっていくのを見て、玄関に向かう。車の鍵をひっつかむと、そこに置いてあった灯油タンクの中身を家の中にぶちまけ、火をつけた。小さな家はほどなく炎上していく。
男が車に飛び乗ると、近所の人が飛んできて、どうしたのかと叫ぶ。車の窓を開け、大丈夫かと聞く老人の襟首を掴むと、男はそのまま車を発進させた。そして老人の体を電柱に叩きつけると、大通りに向かって走り出した。
その男の車にトラックが追突する。無灯火だ。顔面をハンドルに叩きつけられた男はひどい脳挫傷を負った。そこにほろ酔い加減の運転手が慌ててやってきて、死ぬなアンちゃん!と男はガクガクと頭を揺さぶられて死んだ。頭部外傷は揺さぶってはダメよ、と。男の司法解剖の場で解剖医が研修生に、その失敗の愚かさを語った。
この作品の作者は Nununuさんでした!
予想結果: highbriku, watazakana, tateito, Nununu×4
ああ、やってしまった。
両親のいない夜、普段から僕と二人きりの時だけ執拗にいじめてくる祖父の暴虐に耐えかねた僕は、思い切りじじいを突き飛ばしてしまった。出血こそないものの、床に倒れたじじいはピクリとも動かない。
なんとかじじいを殺したことがバレないようにと色々考えたが、埋めるにしろ捨てるにしろ、僕にはじじいを背負って町を歩き回ることは出来ない。仕方がないので僕はじじいを家の庭の奥の奥に埋めることにした。食卓に引きっぱなしだったテーブルクロスでじじいをくるんで引きずり、庭弄り用のスコップでせっせとかたい土を掘る。満月が上から照らしていたし、雑草ことあれど木の根の類は掘り当てなかったので、穴掘りは滞りなく進んだ。
小柄なじじいが丁度埋まる程度の穴に、くるんだじじいを転がし入れ、せっせとのけた土を被せていく。傾いた満月を雲が隠したころ、とりあえずじじいが見えなくなったので離れた土に突き立てたスコップに腕を置いて休んでいると、庭の裏に面した夜道の暗闇をまっすぐ割くように照らしながら、灯りが近づいてきた。巡回パトロールの警官だ。警官は夜中に一人で庭に出ている子供に気付いたらしく、柵の前にキュッと自転車を停めると、僕に挨拶して尋ねた。
「君、こんな時間に何やってるんだい?」
「え、えと、あの、タイムカプセル?ってやつを、埋めてるところ、です。」
「パジャマで?」
「ええと、それは、」
「ゴボッ、ガッフ、ゲフ、ゲフッ、おい、ウスノロ小僧!爺様を生き埋めにするたあ、なんて仕打ちだ!グッフ」
ああ、やってしまった。
この作品の作者は roneatosuさんでした!
予想結果: kihaku, Kuronohanahana×4, ukit, roneatosu
失敗は出来ない。結果次第で人生がどちらにも転ぶ。
そんな文章で満たされた夢から醒めた頃、時計は10時半を指していた。
「学校は? 休むの?」
「休むわけないだろ。次のバス乗って行く」
「遅れんなら、コーヒー淹れてやる」
無精髭目立つ兄はもごもごとそうほざいだ。リンゴをかじりながら、ドン・キホーテを読んでいる。
「別にいらん」
言葉が届く前に兄は冷凍室のコーヒーの袋を探っていた。リンゴも机に直に置いたままで、不衛生極まりない。
兄はケトルをストーブの上に勢いよく置くと、冷蔵庫にもたれて読書を再開した。兄に慎重の2文字はない。18年の経験から知ってはいたが、朝から改めて思い知らされた。大声で歌ったかと思えば、階段で分厚い本を読んでいる。
こいつは悩んだことなどあるのだろうか? 分からない。
「アンタは失敗ってしたことあんの?」
「何の?」
本に目を向けたまま答えられた。そう言われると困る。
「……例えばライブとかのミスとか、無いの?」
「無い」
嘘だとは思わなかった。昔、兄のライブを見に行った。別人と思う程の滑らかさ。葉の上で踊るようなレゲエだった。やっぱり何かが違うのだと思った。あのライブと同じ感想だった。
「おめえは?」
「あるに決まってんだろ、毎日そうだ」
受験とライブは違う。それは分かってる。
「大学、行くんだろ?」
「当たり前、お前の20倍は勉強してきた」
「まあな」
短い沈黙だった。
「ちょい煙草吸ってくる、火ぃ見といてくれ」
兄は立ちあがり外へと消えていく。
湯気が立ち始めた頃、数年ぶりに休みの電話をすることに決めた。
C グループ
この作品の作者は carbon13さんでした!
ShicolerkiNaN carbon13×2 enho_osho ocami hoojiro_san ruka_naruse
僕の仕事はレスト・ライターです。職業名がややこしいので、業務内容の方を説明しても?
────どうぞ。
一言でくるめば、人のエンディングを演出する仕事です。知っての通り、ホモ・サピエンスは不老不死になりました。しかし人口の再生産のために人は死ななければなりません。そのためのレスト制度。
人が人を殺すのは最大の罪です。安楽死、レスト・チェスト〈胸中を休む〉と言い換えたって、残酷さは残ります。それゆえ、安楽死をする人にはさまざまな補助があるのです。それが安楽死を理性的制度たらしめる方法なのです。
私の仕事は、動画の作成です。人が死ぬ直前に見る動画を作ることです。
動画を作る時に注目するのはその人の若い頃の出来事ですね。団塊の世代は学生運動の景色を編集しました。
──それで感動するんですね。
人間は、意外と社会に帰属意識を持つものです。「戦後の景気を牽引してきたあなたたちにも、若い世代に席を譲る時が来たようです」その一言が、世代としての責任感を起こして、安楽死に前向きに挑めるようになるんです。
──なるほど。ここで種明かししても大丈夫ですか?
どのみち、動画の使用は当人にとって一回しかないわけですからね。一回切りしかないわけですよ。どのような人であれ、それに隙をつかれます。
──一回切り。
とても有意義な仕事だと思います。若い頃は、漫画家になりたかったんです。あの頃は、色々ありました。
「このインタビューは何?」
「死ぬ時に見たいらしい」
「何で?」
「一回切りじゃなくなっちゃったんだって」
この作品の作者は ShicolorkiNaNさんでした!
Hoojiro_san ShicolorkiNaN utsuki_k×2 ruka_naruse enho_osho ocami
人間が地球に住んでいた頃の名残として、コロニー内でも定期的に雨が降る時間が用意されている。
が、本日の場合は何かの手違いやAIの誤作動かは知らないが、予定量の何倍かの降水量の雨が降ってしまっていた。
『現在の状況につきましては、総動員で対応に当たっています。暫くの間ご不便が続く事をお許し下さい……』
緊急のアナウンスが響く中で、窓越しに眺める光景は、普段の何倍も暗く、普段の何倍もの大粒の雨が降りしきっていた。
だけど皆は思ったよりも楽しそうに、防水機能付きのコートや傘を差した姿のまま、普段と同じ具合に雨に打たれている姿が見えた。
雑菌の除去された水は浴びても飲んでも影響はなく、それにかこつけて雨の予定日にわざわざ外に出る者もまた珍しくはない。
『現在、原因調査が行われています。暫くの間ご不便が続く事をお許し下さい……』
至る所のスロープは水が流れているし、生産プラントは普段は開く屋根のを閉じてランプの様に薄暗い空間で輝いている。
あちこちには救護用ドローンの明かりが輝いているんだから、きっと普段の倍かそれ以上の負傷者だって出ている筈だ。
『調査及び診断の結果、現在発生している大雨の原因は貯水機構の異常である事が発覚しました。これは当コロニーの設計上の不備であり、調整の為全ての貯水を雨として放出する事が決定致しました。この雨は推定144時間続けられます。暫くの間ご不便が続く事をお許し下さい……』
今度はアナウンスではなく全住民へのメールとして送信された。
まあ、悪くはない気分だ。
数日後には重苦しい気になったとしても、窓越しの新鮮な景色を眺め、いつもの様に茶と本と共に午後の時間を過ごせるのだから。
この作品の作者は EveningRoseさんでした!
SCPopepape eveningrose×4 usubaorigeki×2
誰もがこの日を待っていた。
機材のチェックを終え顔を上げると、私が整備した照明が、熱いほどにステージを照らしている。
怪我でステージを降りた少女が今宵、歌姫として返り咲く。リハーサル期間は優に二ヶ月を超え、彼女と共に舞台に立つ人々はもちろん、我々会場スタッフから、警備員の一人一人に至るまで、秒単位のスケジュールを諳んじられるようになっていた。それほどまでに、みなこの舞台に懸けていた。そうする価値が彼女にはあると、みな信じていたのだ。
客入れの時間になり、賑わいを増す客席とは裏腹に不気味なほど静かな舞台袖で、彼女の姿を見た。観客の様子を覗いているのだろう。私に気づき振り向いた彼女の頬は、緊張からか青ざめていた。
「心配しなくても、貴方には私たちが付いてますよ」
私の言葉に、冷たかった彼女の表情が笑顔に変わった。蕾が開く瞬間のようだと、柄にもなく讃えたくなる。
「ありがとう……行ってきます」
ステージに立つことを望むものも居れば、ステージから望まれるものもいる。彼女は間違いなく後者であろうと、その後ろ姿を見送りながら思う。
客入れも終わり、開演までもう間も無く。私もこの場所を離れようと一歩下がると、からん、と何かが踵に当たる。音を頼りに屈んで見れば、金属片が転がっていた。
見覚えのあるこれは──螺子?
開演まで、もう間も無く。ステージ上の天井からは、私の整備した照明が、頼りなさげにぶら下がっている。
この作品の作者は SCPopepapeさんでした!
Dr_knotty SCPopepape×4 eveningrose×2
廃れ寂れた聖堂の真下、空間の中心に在ってフュステカはくるくると踊っていた。純白の衣が空気を孕んで揺らぐ。
「フュステカ。」発音のしにくさにかけて言えば最高級の名前だ。
くすんだ桜色の髪がたなびいて、黒く深い瞳が立ち尽くす僕を捉え、緩やかに回転は停まる。よろけた躰を支えて立たせてやった。
そして、他愛ない話ばかりをしていたのだ。
『”ロマン”って言葉は好きなの。』
「ロマン?」
『そう、ロマン。r、o、m、a、n。』
mと声に出すとき、閉じる必要に駆られたフュステカの唇はいつだって必要以上にキッと結ばれる。生きている感じがしてうつくしかった。
『とうに滅びた国名の残響。或いは小説の一般名詞。ロマンス、ロマンティック、ロマネスク!』
「そんなにいいものかい。」
『解らないの?ロマンのないひと。』
この平穏がいつか終わる話だってことは、僕だって知っていたさ。
『ねえ、目を覚まして。』
『何も解らないふりばかりで、眼を瞑り続けるのはもう終わり。』
『ここはただ結婚のためだけのチャペル。祈りの篭らぬ背景だから、寂れたって誰も悼まないよ。もっとも、寂れてさえいないのだけれど。』
『私はどこにもいないよ。どこにだっていなかったよ。君が誰かを重ねているだけ。私はただ廻るだけ。』
『全部君のせいだけれど、もう終わったことなんだよ。』
どうしてそんな残酷なことを言うんだ、そう縋っても返されるのは曖昧な微笑みで、背景だけがぼやけて溶けて。そして僕以外は誰もいない夜の結婚式場の床に、玩具のコマだけが一つだけ転がっていた。
そうだ、あなたはもういないんだった。その事実は余りに悲しくて、涙すら流れてくれないほどで、心の痛みに思わず目を瞑った。それでも、フュステカは二度と応えてくれなかった。
この作品の作者は Enho_Oshoさんでした!
Enho_Osho×2 BARIGANEsensha×2 carbon13 ShicolerkiNaN eveningrose
地下鉄の駅へようやく辿り着いてから1時間、未だにホームのベンチから立ち上がることが出来ない。
無慈悲にもまた、目の前を電車が通り過ぎていく。
昨日の夜「家に帰らない」との連絡を入れ忘れたなと思いながらも、ケータイを出す気力も残っていなかった。
サークルの飲み会後、誰かがクラブに行きたいと言い出した。
それに賛同した野郎4人で「チャラ箱」と言われる繁華街のクラブへ行ったのだ。
そこへ行ったことがある奴曰く、女の子がわんさかいるとのことだった。
彼女と別れてから半年、ご無沙汰だった俺は期待に胸を躍らせた。
すでに飲み会で出来上がっていた俺らは、追い打ちをかけるように酒を浴びた。
バーカンの一角を陣取り、オーダー待ちの女の子ほぼ全員の酒を奢った。
ような気がする。
途中からの記憶がごっそり無い。
故に今横で、俺の腕を掴んで寝ている女といつから一緒にいるのか全く覚えていない。
名前も声も覚えていない。
1人で電車に乗ってしまおうかとも思ったが、腕を掴む力がやけに強く抜け出せなかった。
一緒に行った野郎3人は各々女の子を捕まえたのであろうか、気づけば見失っていた。
1人からは「たのしんできます(^ω^)」との一報が入っていた。
くそが。
俺だって最後まで楽しみたかった。
いや、女を起こせばまだチャンスはあるのか。
いや、女を起こしたところで俺がまともに歩けるか怪しい。
いっそ寝てしまおうかと目を閉じる。
途端、肩を叩かれた。
目を開くと見慣れた顔がいた。
「あんた昨日帰らんかったと思ったらこんな時間になにしとるの!情けない!」
「ま、ママ……!」
隣からボソッと聞こえた。
「『ママ』とか、ヤバ」
うへぇ、ご勘弁を。
篝火#10のせいで自分の作品の提出を忘れていました。それにこの時点で気づいたので主催者権限で作品だけおきます
空N上スマをただ一度ミスっただけなのに、僕のフォックスは弱ハメから画面外にすっ飛ばされた。一つの失敗も許容されないのはまるでゲームではなく現実みたいだな、なんて現実逃避をする。レートは無情に下がっている。
僕の心にスマ花を咲かせたあの試合から、一週間。燃え移った炎は未だに消えず、しかしフォックスの上Bは鎮火して画面外に落っこちていく。このキャラが自分に合っていないのは明らかだった。
キーコンフィグの「MFOX」。それは昨日引退したあの人のオマージュ。VIPマッチでは伝わらない感情、衝動、リスペクト。スネークも使っていないのに? けれど、こういうもので感情を使わないと、胸の内の衝動はいつまでも残ると思った。本当はこんなことをしてもいつまでも衝動は残るのだろう。分かってる、ただやりたいだけだ。
掠れ声の実況を思い出す。その場所には確かに劇場があって、激情があって。僕はそれを画面越しにしか受け取れなかった。会場にいた1,000人弱は今、何をしているのだろう。同じ時を共有した彼らは、どんな火を受け取ったのだろう。
新たな対戦相手に僕の黒いフォックスがステップからDAを仕掛ける。空前→着地空前と繋げた後に、あのロゼチコ戦を思い出して崖外で空上を放ち、空振り、ジャンプを失った僕のフォックスは相手のガノンドロフの空上裏当てでストックを失う。ままならない。けれど僕が見てきた彼らも、こういう経験を経てからあそこまで登っていったのだろう。それは──ひどく、尊いことで。
空N上スマを今度は失敗せずに決める。明らかに精度が上がっていることに嬉しくなる。こうやって僕は、憧れと失敗を種にして、一日一つずつ強くなる。
この作品の作者は ocamiさんでした!
ocami×3 hoojiro_san carbon13 R_IIV utsuki_k
やらかした。ただシンプルに、俺は失敗した。複合的要因なんてものは無い。
悔しくはない。当然の結末だ。情報収集を怠った、怠惰な俺には相応しい結末だ。
もっと頑張っていれば。頭を下げて、教えを乞うておけば。無意味な"もしも"が脳裏を掠め、同時に後悔が沸き起こる。
ふと、友人らの顔を思い出した。彼らは逃げ切れたのだろうか。一瞬の心配の後、それが不要であることを思い出す。所詮は現実逃避だ。
覚悟を決めて現実に向き合った瞬間、"鬼"と呼ばれる目の前の男が、項垂れた俺を見下ろす。180cm近い身長から放たれる威圧感は、鬼の二つ名に相応しい。
再び夢想に帰りたくなった。
「高橋」
一拍置いて自分の名だと理解する。いよいよ裁定が下されるのだ、と実感が湧いた。名前覚えてくれたんですね、なんて軽口を叩く余裕は無い。
実のところ、失敗はこれが初めてではない。過去にも数回やらかして、その度に温情をかけられていた。だが、所詮は気まぐれ。仏の顔よりも多かった慈悲も、いつかは尽きる。それが今日なのだと、本能が理解している。
「おい、高橋。聞こえてんのか」
「はい」
目を瞑る。鬼の次の言葉で、俺が楽園に行くか地獄に行くかが決まるのだ。出来ることなら楽園に行きたいが、俺にはその資格は無いだろう。
「補習な。夏休みは無いものと思え。今までの赤点分、みっちり教えてやる」
さらば楽園。地獄行きが決まった。
この作品の作者は Utsuki_Kさんでした!
carbon13 Utsuki_K Dr_knotty×3 ShicolerkiNaN×2
バックヤードに足を踏み入れると、目の前には深緑の布がかぶせられた見慣れない檻があった。布をめくって中を確認した俺は肝を抜かし、同時に光に反応した「それら」は騒ぎ出した。俺は慌てて布を元に戻すと、事務所に駆け出した。
「なんなんスかあれは」
「鶏だよ。都会っ子は直接見る機会無いのかな」
「そういうことを聞いてんじゃねえっスよ」
店長は目の下のクマを擦りながらパソコンをいじっている。
「いやなんかさ、佐藤君がまたやっちゃったんだって。誤発注」
アホの佐藤。1週間前にも弁当の誤発注をやらかしたばかりだ。120個と間違えて1200個の二段海苔弁当が入荷され、俺を含めバイトの食事は今や3食これになっている。
「見てよこれ。確かに食肉の横に生きた鶏の発注項目あったんだよ。面白いよねえ」
「面白いのはいいスけど、どう始末つけるんスか。サラダチキンでも自作するんスか」
「それなんだよねえ。田中君、農家の知り合いとかいる?」
そろそろこのバイト辞め時かもなあ、と俺は思った。
「で、ちょうどいいからこの機会にやるしか無いと思って」
フライヤーを洗っている俺にレジのムワイ君が話しかけてくる。
「聞いて無かったっス。なんですって?」
「生きた鶏は東京じゃなかなか手に入らないよ。エロい女型の悪魔を召喚するんだよ」
オカルトにハマっていると聞いてはいたがここまでキているとは。ムワイ君は続ける。
「今バックヤードで佐藤君にお願いしてるんだけど」
今なんと言ったコイツ、と思った刹那、店内に黄色の煙が立ち昇る。煙が晴れたとき、俺たちの目の前に裸の女達がいた。頭が鶏の。それらは金切声を口々に上げる。佐藤以上に意思疎通はできないだろう。
俺は頭を抱えた。
この作品の作者は rokurouruさんでした!
ruka_naruse×3 rokurouru×2 SCPopepape×2
「走馬灯ってさ、優しいよね」
唐突に何だよという顔の客人を横目に紅茶を一杯差し出す。差し出された紅茶を一口だけ含んで、客人は不満気に首を傾けた。
「走馬灯ってあれだろ。死を回避する為に云々みたいな」
「随分と夢の無い意見だね。全ての元凶の癖に」
元凶とはなんだ元凶とは、という抗議は聞き流す事にする。第一貴方が全て悪いんだ。要らない物ばかり作りやがって、必要な物は作らないで。七日目にサボるからこんな事になるのだ。
「やっぱさ、死ぬ間際に自分の人生って何だったのかが分からない。そんなのは嫌じゃん。だから走馬灯が代わりに人生を振り返らせてくれるんだよ。自分の人生がどうだったのか、決められるように」
静寂。マンションのベランダに吹き込む風は柔らかくて、新品の毛布の様な肌触りが頬をつつく。どうやら無言に耐えかねた様で、顔を顰めながら客人は口を開いた。心底嫌そうに、それでいて何処か名残惜しそうに。
「……それで?君は、何を言いたいのさ」
その答えは既に解りきってるのだろう。私もそうだ。貴方は余計な物ばかり作って、お陰で世界は掃き溜めの様に汚くて、そのくせ朝日だけは無駄に綺麗で。正直もう何かもかもが失敗なんだよ。
それでもさ、やっぱり。
「走馬灯って物を作ってくれて、ありがとね」
……身を乗り出し、ベランダの手摺の上に立つ。客人は紅茶をもう一口飲んで、質問を一つ付け加えた。最後に聞くけどさ、と。
「君はこの人生、幸せだったと思うのかい?」
答える代わりに意地悪く笑ってみせる。
それについては、数秒先の未来で決めてみるってね。
この作品の作者は Hoojiro_sanさんでした!
eveningrose hoojiro_san×2 ShicolerkiNaN BARIGANEsensha eagle-yuki
舌にひりつく酒精を嚥下する。一瞬の浮遊感が自分と現実を切り話すが、いつの間にか現実に着地していた。僕を現実に引き戻したのは、目の前の親友が口遊む音。
君は強いから、どこまでも飛べるはずさ。
君が酒の肴に呟くメロディーが僕の本心。
眩き星君は流星の如く空を駆け、一番星の如く輝くだろうね。
「なぁ、今日の新曲。お前らしくないけどいいな」
「新天地を僕はいつだって目指してるからね」
海に墜ちそうになった時は何度でも星を目指して、僕もどれだけでも進んでやるさ。
この作品の作者は BARIGANEsenshaさんでした!
usubaorigeki BARIGANEsensha×2 rokurouru enho_osho×2 ShicolerkiNaN
古今東西「若者」という生き物は、ありとあらゆる物事から「離れる」生き物だ。そういうものだとされている。
俺が現在進行形で参加中の「飲み会」なんてのは、その最たるものだろう。やれ居酒屋に行くのはコスパが悪いだの、やれおっさんの説教と自慢話ばかり聞かされるのが嫌だの。プライベートに時間を割きたい、浮気を疑われる、そもそも酒が飲めない、理由として上げられるのなんて、どれもこれも正論ばっかりだ。
うん、全くもって正しいし、俺もそう思う。誰が好き好んでこんな地獄に来るかよ。
それなのに俺が満面の笑みを保ちながら先輩と熱燗を飲み交わしているのは、「媚びを売るため」に尽きる。つい3時間前まで俺が作った出来たてホヤホヤのクレームの処理をしていたこの人に。
「ちゃちな変更でも客にはちゃんと伝えとかなアカンで?クレームの種やねんから」
はい。
「まあ今回は大した事にはならんかったけどな、契約絡んでくるとこはちゃんとせな」
本当に、まったくもってその通りでございます。
2時間半で、今回で8ループ目だったっけ?正しいんだけど、しんどい。しんどいんだけど、耐える。なぜなら、先輩はいつも仕事の面倒を見てくれるのだから。それならば、俺は飲み好き独身アラサー先輩の説教サンドバッグになる。この世界はギブアンドテイクだ。
とは言っても、やはり何かしらのリターンは欲しい。
「もう10時か。そろそろやな」
まあ結局のところ、
「あーいらんいらん。いっつも付き合ってくれるからな」
タダ酒タダ飯あざーす。地獄の沙汰も金次第なんだよな。
この作品の作者は r_iiv does not match any existing user nameさんでした!
BARIGANEsensha R_IIV×4 eagle-yuki×2
遺書を書いた。いつか必要になると思って。踏まれて破れ、折れ曲がった封筒に入れて、お気に入りだったシールの最後の1枚で封をする。
差し込んだ月明かりに反射して光るのを見て、あの夜を思い出す。あの場所をもう一度見たくなって、服のほとんど入っていないクローゼットを開ける。
無理して言って買ってもらった地味なパーカーと、学校指定のジャージの下を着て、静謐の世界に足を踏み出す。夜風が頬をそっと撫でる。
行き方も全て忘れていた道を抜けて、やっと辿り着いた場所はあまりにも寂しくて。
ふっと吐き出した笑い声も空間の奥に消え、ただ静寂だけが満ちている。
あの時、ここで私を闇から救い上げてくれた人は、今何をしているのかな。そんな事を考えていたら眠くなって、椅子のひとつに腰掛ける。ステンドグラスからこぼれる淡い光と一緒に、夢の世界へ沈んでゆく。
幸せな夢の世界から覚めた時、目の前にはあの人がいた。泣き出しそうで、それでいて怖い顔をしていた。しまい忘れたあの遺書を本気にしたと。ここ数日、寝る間も惜しんで探したと。
嬉しかった。それと同時に自虐の声が次々に浮かんでくる。でもどうしてか口では強がってしまって
「あはは、失敗しちゃった。こんなすぐ見つかっちゃうなんて…もっと上手くやらなきゃダメだよね」
瞬間、強く抱き竦めるられる。痛いほどに。
ちらりとみえた彼の顔がとても怖かった。本気で怒っていると気がついて、痛みと一緒に、喜びが広がる。恍惚が涙として溢れる。そして、急に怖くなって、立ち尽くす。声が出ない。彼の背に回そうとした腕が強ばって動かない。
謝らなきゃ、謝らなきゃ。そう思っても出てくるのは冷や汗と涙だけで──
この作品の作者は Dr_Knottyさんでした!
rokurouru×3 Dr_knotty×2 hoojiro_san utsuki_k
しくじりの原因を突き止めるのは難しい。大抵はいくつもの要因と不幸が重なり合っているからだ。どこに中指を突き立てるかは難しい問題だった。右手の中指は逆方向に折れ曲がり、左手の中指は手の半分ごと喰い千切らるから考えても意味がない事ではあるのだが。
路地裏の片隅、ひとり、暗闇に蹲る。仲間は全員死んだ。包囲されていると気づいた時には手遅れだった。知らず俺達を敵のド真ン中にに突っ込ませた司令部も、連中の迷彩技能を見落とした評価班も、現状を把握する前に死んだリーダーも、そしてただ一人生き残ってしまった俺も、全員がどうしようもなく失敗していた。
路地裏の暗闇、ひとつ、切れ切れの呼吸。壊れかけのホワイト・スーツはひっきりなしにクソの役にも立たない警告灯をチカチカさせて負傷箇所をご丁寧に教えてくれている。とっくにわかってるさ。もう武器を握れる手ではないことも、自分が孤立していることも。それはこっちが迷子になったんじゃなくて、ロストした友機が拠点に引摺り込まれてんだ。分かったら静かにしてくれ、全部終わってんだよ。拠点の位置は司令部に届いてる。死にゆく者に出来る事なんて残ってない。
バイザーに灯る光が輝いて、友機の所在を示し続ける。
目を背けることは、出来なかった。
リミッターを解除。足に巻いていたベルトを外し、予備のナイフを歯で折れた腕に括りつける。壊れかけた防御システムを組み替えて、なくした推進力を補填する。先のことは考えるな、辿りつく事だけ考えろ。
運命に突き立てる中指は無いが、剥く牙は残っている。
失敗の原因を突き止めるのは難しい。でも、今回のは明白だ。
俺を残したこと。
それを今から叩きつけに行く。
この作品の作者は eagle-yukiさんでした!
R_IIV eagle-yuki×3 utsuki_k ocami×2
俺は、変化が怖い。正確に言えば、変化の先にある失敗が怖い。
もし、現状に何かしら不満があるとしても。それを変えようと行動することが、事態をより悪い方に向かわせる可能性だってあるじゃないか。だから俺はこのクソ会社から逃げ出さないし、社内の人間と新たな関係を築くことは無いし、いつも吸うものより100円高い、気になるあの銘柄に手を出してみることもない。
「よう、元気してたか?」
昼休みに屋上で煙草を燻らせていると、声をかけられた。振り返れば、そこには先輩。部署が変わってしばらく会えていなかったが、入社して数週間はずっとお世話になっていた人。
「お前そういうの吸ってんだ」
そう言いながら先輩が取り出した箱は、気になっていた銘柄のものだった。
「まぁ、これ安いですし」
煙草というのは、案外話の種になる。然程好きではないが、毎日喫煙を続けていることにも意味はある。不変というのは、やはり大切だ。
「安さで決めてんの?」
「毎日吸うんですから、出費バカになりませんよ」
「お前、まだ若いだろ。もっと給料良くてちゃんとしたトコ目指せよ。いや、目指してほしい。俺みたいになるな」
久方ぶりに正面から見た彼の瞳は、やけに黒々しかった。
「……俺、先輩に指導して貰えて良かったと思ってます」
「ん。まぁ俺、多分ここじゃあ一番マトモな人間だからな~」
「また飯、食いに行きませんか」
「ああ、機会あったらな」
*
先輩が会社の屋上から飛び降りた。それを聞いた日、俺はあの銘柄を買ってみた。100円分の上質な味がしたかは分からない。でも、いつものとは随分違った味をしていた。
それから俺は退職願を叩きつけ、途方に暮れる日々を楽しく過ごしている。
この作品の作者は usubaorigekiさんでした!
Utsuki_K usubaorigeki×4 R_IIV BARIGANEsensha
父と母は離婚した。
仲が悪いのは、小学生の頃からだった。
顔を見合わせて何も話さず、用事があって話しかければ、口論に発展する。怒号と物音、静かで痛い空気に萎縮しながら過ごすのが日常だった。
家は貧乏だった。荷物に溢れかえった狭い部屋の中で、全員が同じ部屋に居る。何か気晴らしに出掛ける事も出来ず、嫌いなものと結び付けられるのは心がすり減る。
私は仲直りできるよう頑張って努力した、つもりだった。自分の勉強時間を削って、友達とのLINEの時間を削って、やりたい事の時間を削って削って。
効果は出た気がしていた。喧嘩は減った。でも今思い返せば、一つ一つの口論の質は最悪なものになりつつあった。
父は女々しく、何年も前に言われた事を蒸し返し、自分の言う事は全て無視されるという被害妄想を抱いていた。マイナス思考と飛躍した結論、話が通じなかった。
母は乾いて、何の期待も関心も無かった。話を早く終わらせたいのに、ネチネチ言う父を心の底から見下し、それを隠しているつもりだが、自分から見れば露骨だった。
失敗だったのだ、何もかも。自分のしてきた事は全て無駄で、そもそも首を突っ込むべきでは無かったのだ。
父は女々しい癖に声が大きく暴力的で。母は強いように見えて弱く、すぐ泣く。
悲しかった。
自分の時間を少なからず犠牲にして行った行動が失敗に終わる。良くある事なのは分かるが、父の女々しさと母の弱さを受け継ぐ自分は、すぐに切り替えられなかった。
ムカついた。
自分が大人になり、家を出てから離婚したのも嫌だった。まるで仲直りしようとしなかった失敗を、自分のせいだと言われているようで。
この作品の作者は Ruka_Naruseさんでした!
eagle-yuki ruka_naruse×3 carbon13×2 Dr_knotty
「本当に行くのかい?」
「ええ、せっかくの機会を逃す訳には行きません」
スリーピースが漸く身に馴染んできた好青年は、ヒビ割れた本革のハイバックに深く腰掛ける恩師を前にひとつはっきりと頷いた。
「5年は戻れないよ」
「40年は働くんですから、先行投資ですよ」
老人は背もたれから身を起こすと執務机に腕を置き、どう説得したものかと言葉を探す。だがどの言葉を選ぼうと若き彼には届く気がせず、ただ手遊びするばかりだった。
「危険な職場である事は重々承知しています、自分なら大丈夫と驕る気もありません」
「なら、なぜ──」
「だからこそ、先生にはただ信じて見送って欲しいのです……自信を持って送り出せると、先生に認められたいんです」
鳶色の瞳がくすんだ眼を真っ直ぐと捉える。老人はその強烈な既視感から目を背けるように視線を下ろした。
老人には、その眩い青年にノーを突き付ける気力は残されていなかった。元より会得して無かったとも言える。
「すまない、君の言う通りだよ。君はすっかり大きくなった……良いさ、見送ろうじゃないか」
「ありがとうございます……それでは、行ってきます!」
恩師に何と言われようと、青年はきっと歩む道を変える事は無かったのだろう。彼の傍らに置かれ握り締められていたキャリーケースがそれを物語っていた。
老人の答えを受け取り、胸を張って部屋を去っていくその背を、老人はただ見届ける他なかった。静かに、再び背もたれに身を預ける。
「どうにも下手だね、私は。またダメだった、ほんの1人だって私の元に残りやしない」
老人はぽつり独りごちる。疎ましい斜陽が彼の去った扉を照らし続けていた。
総合優勝
Kiygr
(30pt.)
総合2位
SuamaX
(19pt.)
総合3位
Fireflyer
(18pt.)
Aグループ優勝
Kiygr,
Fireflyer
(7pt.)
Aグループ2位
SuamaX
(5pt.)
Bグループ優勝
Kiygr,
SuamaX
(7pt.)
Bグループ2位
Fireflyer
(3pt.)
Cグループ優勝
Kiygr
(15pt.) perfect
Cグループ2位
Fireflyer,
SuamaX
(7pt.)
主催者の! ムリゲー解説
全ての文体を統べるものと噂の俺が、今回がいかにムリゲーなのかを解説するコーナーです。
Aグループ
No.2/No.10
「うーんこれは関係性、10番はkonumatakaki!」そんな幻想は儚くも打ち破られました。よく見れば修飾や比喩の量に違和感を覚えることは可能でしょうが、今回のkonumatakakiさんが異常先輩を書いていないのでマジで当てるの無理です。
No.5/No.16
「Hasuma_Sまーたウマ娘二次創作書いてるよ!」そう言った彼らは魔の文体地帯に呑まれています。句読点の置き方や心象描写がHasuma_Sらしくはないので、当てようと思えば当てれます。ある種の足切りラインかもしれません。ついでに言えばkskhornさんはガチ競馬鯖のメンバーですね。
Bグループ
No.5
強い女と世界観の書き方がEianSakashibaですね。サービス問題です。Bグループは他に比べると癖がないので、とれる点取りたいです。
No.8
個人のスプラ持ち武器偽装なんてやる人は流石にいないっす。文体もくそもなく、「赤ZAP」でTwitter検索すりゃkuronohanahanaってわかります。こういう当て方は文体シャッフル企画の本質ではないですが、上位を狙うならやるべきです。
No.14
文体初参加で個性的な良作を出されるとどうしようもなさそうです。ukitさんがやりそう、という直感は掴めそうですが。ShicolarkiNaNさんが同グループにいないことが救いでしょう。
Cグループ
No.9/No.13
ホワイトスーツの戦闘→rokurouruと導くのは正直仕方ないとは思いつつ、しかし甘いです。文体シャッフルでの常識である「寿司でDr_kudoを選んではいけない」の原則を思い出しましょう。「蛇と焚書のカルテット」を書いていて、かつ、場を乱す執筆力がある人物、Dr_knottyがいるグループならなおのこと。Dr_knottyは大体何でも書けるし書きます。
これを当てたいのであればNo.13の構成が綺麗に作られすぎていることや、No.10の青さのある地の文に注目したうえで択にしましょう。即答していては上位には届きません。今回他ナンバーの言葉使いもrokurouruさんっぽさあってめっちゃむずいけど。
