500字文体シャッフル: バースディ!
投票募集中!
テーマ:煙草
参加方法:meshiochislashのTwitterかDiscordのdm、wikidotのpmに500字以下の短編を投げる。投稿制限なし。
参加資格:SCP-JPに著作がある。AIでない。
Q.文体シャッフルって?
A.みんなで匿名で文書いて、それを誰が書いたか当てる企画です!だから何書いたかいうなよ!
Q.期間短くね?
A.ああ!
Q.過去作は?
A.Twitterで「#500字文体シャッフル企画」を検索!
Q.構文は?
A.by ukwhatn。偉大なる御大に感謝。
赤枠は複数書いています。
WagnasCousin
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著者ページ
FeS_ryuukatetu
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著者ページ
EveningRose
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著者ページ
usubaorigeki
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著者ページ
meshiochislash
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著者ページ
Hoojiro_san
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著者ページ
Touyou Funky
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著作
souyamisaki014
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著者ページ
stengan774
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著者ページ
four Boretto
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著者ページ
hitsujikaip
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著者ページ
Ruka_Naruse
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著者ページ
pictogram_man
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著者ページ
Jiraku_Mogana
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著者ページ
teruteru_5
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著者ページ
EianSakashiba
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著者ページ
konumatakaki
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著者ページ
Kuronohanahana
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著者ページ
2MeterScale
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著者ページ
islandsmaster
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著者ページ
景品について
思ったよりみんな当てにきてくれなくて寂しいので、今回最も多く当てた方には景品として僕を批評にこき使える権利を差し上げます。この企画終了後1回まで、DMで言っていただければmeshiochislashの全力批評の手をお貸しします。参加よろしくな!
投票締め切り
投票締め切りは6/29の適当な時間です。多分23:00とかそのへん。
No.1:
No.2:
No.3:
No.4:
No.5:
No.6:
No.7:
No.8:
No.9:
No.10:
No.11:
No.12:
No.13:
No.14:
No.15:
No.16:
No.17:
No.18:
No.19:
No.20:
No.21:
No.22:
No.23:
No.24:
No.25:
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No.27:
No.28:
No.29:
No.30:
No.31:
No.32:
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No.38:
No.39:
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No.42:
No.43:
No.44:
No.45:
No.46:
No.47:
No.48:
No.49:
No.50:
投票方法: 上記のテンプレートを使って僕のdmに送ってきてください! 全部埋めなくてもいいです
- No.1
- No.2
- No.3
- No.4
- No.5
- No.6
- No.7
- No.8
- No.9
- No.10
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- No.37
- No.38
- No.39
- No.40
- No.41
- No.42
- No.43
- No.44
- No.45
- No.46
- No.47
- No.48
- No.49
- No.50
- No.001(kajikimaguro 氏)
author:imerimo
hitsujikaip teruteru-5 k-cal tateito×2 meshiochislash Touyou Funky×2 tutuji hasuma-s shinogun
タバコは、漢字で「煙草」と書く、つまりその本質は草なのだ。千年以上前の誰かが草を吸い始め、その文化は長きに渡って人類の脳と肺を犯し続けてきた。だから、それを止めた。
新種のウイルスを作り出した。件のニコチンを持つ草に感染し、その他の草には一切の害を及ぼさない。ニコチンは医薬品として有益な効能を示す場合もあるというので、少量の生産が可能なように安全域を残し、それ以外の全世界にばら撒いた。目論見は成功し、一つの娯楽が失われた。
失職者と死者が大勢出たが、それを上回る肺癌患者の減少が確認された。もう誰一人として煙草が原因で死ぬことなどないのだ。これからは大麻の大流行が予想されるが、それを止める準備も出来ている。世界はますます余計な快楽を忘れ、代わりに健康になっていくだろう。
「新しいタイプのドラッグですね。彼がウイルスの開発中に生み出したものだとか。そのウイルスで世界からタバコを消したという幻覚を見ております。薬の投与で治療できる可能性はありますが、ニコチンが含まれていますので使って良いものかどうか」
「ストレスの消し方が分からないからってバカなことしやがって。いくらでも方法はあるのに」
author:meshiochislash
meshiochislash×2 jiraku-mogana kata-men×2 souyamisaki014 usubaorigeki kronohanahana H0H0
『未成年は飲酒、喫煙をしてはいけない』なんて法律を生真面目に守る大学生は少数派だ。たかだか一、ニ年のフライングを咎めるほど、誰も暇ではない。大学の喫煙所を素通りして、ポケットの中のキャラメルを口に含む。他人の裁かれもしない罪を気にしたって意味がない。値段の割に安っぽくない甘さに集中する。
(それに)バスに乗り込んだ後、ポケットに常駐する紙とシャーペンを取り出して、ふと思う。(酒も飲めず煙草も吸わないガキが酒と煙草を語るのは、そんなしょうもない嘘は──法で罰されないだけで、少なからず罪ではないか?)もちろんこれも、どうだっていい罪ではあるけれど。
ちっとも進まないペンを軋ませる。バスはただ進んでいく。駅に着いたら百均でライターを買おう、そんなことを考える。安いガスライターを買って、日付が変わる時に火をつけよう。嘘を誤魔化すように。
author:jiraku-mogana
jiraku-mogana×2 souyamisaki014×2 carbon13 utsuki-k imerimo stengan774 kata-men meshiochislash
「最近賭け事などの治安が悪い成人向けコンテンツを美少女と絡めてヲタクから搾取するのが流行ってるじゃないですか」
「言い方よ。まあマージャンとか競馬とかのことですかね」
「それで私も考えたんですよ。ギャンブルみたいな依存性の高いものを美少女化すれば沼課金でガッポガッポなんじゃないかって」
「だいぶ生々しくないですかね。それで、何を美少女化するんですか」
「煙草ですよ。名付けて『タバ娘ひろい』。」
「うんまあお題が「煙草」ですからね、そりゃそうなるでしょうね。でも探せばもうあるし他の人とも被りそう」
「擬人化したタバコを集めるソシャゲ。いやぁこれはガポガッポ・ガッポポですよ」
「話聞かないですね。あとボボボーボ・ボーボボみたいに言わないでください」
「私の推しはピースたんですね。あの開いた指の間に顎を乗せたいお」
「気づかぬ間に立ち絵がある前提で進んでるんですね。しかも妄想が気持ち悪い」
「ホプアスてぇてぇ」
「アメリカン・スピリットはそう略すんですね。それでソシャゲって言ってましたけどゲーム部分はどんなのなんですか」
「肺を壊さない範囲でいかにタバ娘を吸うかの戦略ゲーですね」
「誰もやらねえよそんなの」
author:ashimine
dr-knotty konumatakaki teruteru-5 northpole highbriku wagnascousin islandsmaster 2meterscale izhaya
サークルのガヤガヤした雰囲気は正直好きじゃない。人がひしめき合う狭い部屋でお酒の臭いにむせ返りそうになりながら、僕は時間が過ぎるのを待つ。ここを辞めないでいる理由はたった1つ。
いつもの様に飲みは夜明けまで続き、場の全員が潰れて僕1人が取り残された。そっと部屋のベランダへ向かう。ほんの微かな陽光に照らされながら、あの子はいつもみたいに針金みたいな煙草を吸っていた。
「いたの」
彼女が僕に弱々しい笑みを向ける。薄暗がりの中で、その笑顔はとても綺麗だった。
飲み会の最中とか、活動の中では何故か会えない。打ち上げ終わりに朝が来る前のこの時間でのベランダでだけ、いつの間にか現れて煙草を吸う彼女と他愛のない話が出来る。サークルでこの時間だけが苦じゃなかった。煙草も女性も苦手な筈なのに。
「彩が死んだって。ほら、お前がよく煙草吸いながら喋ってた」
サークル仲間に言われ、彼女が死んだことより他人に知られていたことに驚いた。葬式に参列する。棺桶の中に彩さんがいた。初めて灯りの元で彼女の顔を見る。
煙草の吸い過ぎで肌はガサガサに荒れ、口の隙間から見える歯は黄色い。ベランダで僕に笑い掛ける彼女は、其処には居なかった。
author:souyamisaki014
souyamisaki014×3 eiansakashiba R-00X stengan774 k-cal tateito tutuji p51 islandsmaster
「9mm口径ナイン・ショート、着火ファイア!」
親指を立て、人差し指だけを伸ばして唱え、直後、指先で小さく何かが弾けた。
指差しによって定義されたアスペクト・ラインに沿って、『それ』は飛ぶ。
「──!」
「ちッ……!」
──が、それも無駄撃ちに終わる。
遠見の術ソーマトロ・サイトで拡張された視界で、敵影が踏み込みながら獲物を一振り、放った『弾丸』を防いだのを確認した。術具の類か──考える間もなく、間合いが詰まる。速い。数十mは取った距離が、一瞬で半分縮まった。
「吸ってなきゃ即死だろ、あれ」
苦笑い。間合いを取るべく飛び下がる。ここまで繰り返された攻防をなぞるように、距離は再び開いた。
ちらり、と左手を見やる。
大丈夫。まだ残弾はある。
伸ばした腕と逆の手、指に挟まれた煙草は本来の半分ほどの位置から煙を上げていた。
「すぅ……」
迫る敵を見据えて、焦らず、トン、と煙草の灰殻を落とす。
咥える。息を吸い込み煙を肺に浸透させる。力が漲る。そして、指を伸ばす。
一瞬だけ目をつむり、装填する弾丸魔術をセレクト。
「──44口径フォーティフォー、発火マグナム・ショット!」
次弾が弾ける。
攻防はまだ続く。
author:k-cal
k-cal nununu p51 islandsmaster×2 Dr_knotty×2 souyamisaki014 fes-ryuukatetu imerimo
「先生、吸いすぎると早死にしますよ」
先生の担当になってもう長いが、煙草を咥えていない姿は見たことがなかった。
「君は来すぎだよ。煙が君も殺してしまう」
「上からの連絡で仕方なくですよ。恋愛を入れろって」
売れるには色恋が必要だ。けれど、そのために作風を歪めさせるのは、本当に先生のための提案といえるだろうか。
「……経験もないでしょうし、無理にとは言いませんが」
逃げのごまかし。先生は掠れた声で笑う。
「一応、恋人はいたんだ。振られてしまったがね。人と繋がるのは難しいと実感したよ」
硬直する私をみて、先生は続ける。
「あの人は、去り際に私の原稿を燃やした。あの人を描いた作品だった。写真もなかったから、あれが唯一の二人の繋がりの証拠だった」
先生の瞳は私を映していない。
「あの人が唯一残してくれたのが、これなんだよ」
先生は煙草を私の前に差し出した。
「火だけは繋げたんだ。聖火リレーよろしくね」
先生が机に向き直ろうとする。私は小さく息を吸って、鞄から煙草をニ本取り出す。
「あの、新しい銘柄なんてどうでしょう。気分転換に……」
先生は驚いた風に息を漏らす。
そうして、古い火は灰皿の中で静かに消えた。
author:H0H0
tutuji×2 Dr_knotty tateito teruteru-5 kata-men hoojiro-san ruka-naruse Touyou Funky souyamisaki014
暇だったから、やることをほおりなげてコンビニに行くことにした。朝8時のコンビニはひとがえらくこみあっていて、たくさんひしめきあっている。棚をぐるっと回って、ライターを手に取った。レジに並び、ぼそりと番号をつぶやいた。店員さんがレジから少し離れて、タバコを取りに行っている間に口にした数字が何番だったかわすれてしまった。小銭をちゃりんと自動レジに流しいれ、年齢確認のボタンを押した。ポケットに箱を押し込めて、ライターを握りしめて、外に出た。登校中の学生を横目に、人気のなさそうな方へむかった。喫煙所なんかに入る気にはなれないし、と川べりに向かった。みちすがら、シャッターの降りた写真屋を見かけた。川べりにはほとんど人がいない。遠くに犬をつれて散歩させているひとがいたくらいだった。包みのビニールをあけて、タバコを一本取りだす。左手にタバコを持ちながら右手で白い方をあぶってみたけれど火が付かない。しばらくあぶり続けていたら、炎がタバコからあがってしまい思わず手放してしまった。結局、タバコは自分には難しかったのだとおもい、タバコの箱と中身とライターを橋の下に捨てた。二限目から高校に行くことにした。
author:renerd
meshiochislash×2 highbriku×2 souyamisaki014×8 konumatakaki
#出張版痛ツイート
「わかば」コンテストと俺がハタチになること結びつけてお題の煙草を揶揄してる奴w
お酒と煙草は二十歳から、とかさ。日本の法律がそうなだけでしょ。若い内は体に悪いってのが理由。理解してる? 俺は残念なことにメチャクチャ健康なので、酒も煙草も少しは分かるよ。世間知らずな奴らとは違うんで。
(解説)
「法律を順守して二十歳になるまでは飲酒・喫煙を一切しないと誓う十九歳が、ついインターネットでイキりたくなった瞬間」のフレーバーです。「学校で聞こえてくる飲酒・喫煙の話を嫌悪しているため、未成年の内からそういった事を喧伝する輩と一緒にされたくないという意識から、二文目以降で違いをアピールしています。
「『少しは』分かるよ」と、逃げ道を作っていることも特筆に値します。イキりきれないにもかかわらず「世間知らずな奴らとは違うんで」と敵を作ってしまう自家撞着がもの悲しさを誘います。
author:tsukajun
tsukajun nemo111 carbon13 usubaorigeki stengan774×2 ashimine eiansakashiba izhaya×2 pictogram-man tutuji
はい、今日は煙草の仕組みについて学んでいこうと思います!
煙草の構造は大きく分けて3つに分類されます!内容物の「刻み」と煙を濾過する「フィルター」、そしてそれらを包む紙です。
ここで質問です!この刻みは一体何からできているのでしょうか?はい、これが今日のメインです。早速煙草を解剖してみましょう!
おや、小さな白いツブツブが出てきましたね!蠢いてます。一体これが何か分かる方、おられますか?
お米?虫の卵?残念、違います。正解は、人間の魂が粒子化したものです。はい、常日頃から私達が摂取してるものですね。更に言うと普通の人間じゃなくて罪人の物ですね。
えぇ、罪人の魂は苦くて食えたもんじゃない、それが百年前までの常識でしたね。ですが私達は上からの命令で嫌々それを摂取してきた。人間の魂は消費されずに霊界に留まると輪廻転生の輪から外れちゃうから。
そこで考えられたのがこの煙草です。罪人の魂を砕き、燻し、煙として摂取することで消費可能にしたのです!独特の苦味は嗜好品としての役割を齎しました。
では実際に火を、え?もうそんな時間?あー、そういや今日は月曜日か。みんな!申し訳ないけど今日の講義はここまで!さようなら。
author:hasuma-s
p51×2 northpole eiansakashiba konumatakaki×3 tsukajun meshiochislash kronohanahana eveningrose
「ども」
街頭すら避けているような道の隙間。そこに自販機と彼女と私がいた。暗闇の中、長方形の白い光が私と彼女を照らす。黒い隈。白い顔。彼女の仕方なく気だるげに開いた目が私を覗く。
彼女からは灰煙の匂いが微かに香る。きっと彼女がここにいる理由。いつも会う理由。年下の子が纏えないはずの、苦い香り。そんな彼女が型にハマった私には遠く見えて。ただ、黒く眩しかった。
「ぉ……おねーさん」
開けたコーヒーの一口目。徐に彼女の口が開き、小さな牙がチラリと見える。彼女が手をこちらに向ける。掌には1本の筒が置かれていた。
「こういうの、たまには、どうすか、ね」
気恥ずかしそうに、罰が悪そうに言う。きっとそれが悪いことだと分かっているのだろう。でも、今の私、彼女よりも死んだ顔の私が、少しでも楽になるようにと。
「ん」
咥えたものの先と先。彼女の先には、微かな赤い灯。それが、私へ重なり、灯が2つになる。きっとそれは、いつか欲しかった温もりだった。
「どうすか」
小さく頷く。彼女は顔を緩ませた。初めて笑った顔を見た。人形のようで、天使のようで。ただ、愛おしかった。
二重の灰煙が浮かぶ。煙草は最後まで不味かった。
author:kronohanahana
stengan774 eveningrose kata-men izhaya utsuki-k×2 ashimine four-boretto H0H0
私の祖母と祖父、母にとって両親のふたりはずっと別居している。母が言うには、母が高校生、叔父が中学生頃に別居を始めたのだとか。
私にとっては産まれた時には既にその状態だったわけで、ふたりが同じ空間にいるのは殆ど見たことがない。それぞれと会うことはあるけれど、同時に会ったことはほぼ無いに等しい。叔父の結婚式に行った時にふたりが揃ってテーブルに座っていて、なんだか不思議な気分だったのをよく覚えている。
指輪だってしないし、出身地も年齢も違う祖母と祖父の数少ない共通点のうちのひとつは、LARKという煙草を好んでいるということだった。
祖母はよくダイニングで煙草を吸っていた。
食器棚の縁にLARKの箱とライターがいつも置いてあって、よくダイニングテーブルに寄りかかって煙をくゆらせていた。
祖父に関しては、吸っているところは見たことはない。けれど、胸ポケットにはLARKの箱がいつも入っていたし、祖父の車と祖父自身からはいつも煙草の匂いがしていた。
そのLARKの銘柄と匂いだけが、私の中でふたりを結びつけていた。
author:ruka-naruse
ruka-naruse hoojiro-san northpole nununu×2 meshiochislash×2 carbon13 souyamisaki014 tutuji
6:45、いつものオルタナで目を覚ます。朝陽の差し込まない洗面所で身支度を整え、三ツ矢をいつもの外套で隠す。
7:28、いつものニュース番組を天気予報まで見て家を出る。ツーフォーに跨り坂を下る風で眠気を振り払う。
7:34、2つ目の信号をいつも通り右に曲がる。サイトへはもう一つ先で曲がるべきだが、俺には決まって寄る店がある。
7:36、いつも通りシャッターが降りている店の前に停めて降り、隣のたばこ屋に顔を出す。
「いらっしゃい、今日もいつも通りの時間だな」
いつもの初老の店主が黒子を掻きながら丸椅子から立ち上がる。
「あんたが来る時ちょうどテレビの占いが終わるんだ、今日はやぎ座が12位だとさ」
大して落ち込んだ様子でもなく俺に背を向け、注文を聞く前にたばこを取り出す。
「ハイライトとロングピースで良かったかな、いつも通り」
「はい、お願いします…いや」
いつも通りの注文を通そうとして、”そうじゃない”ことを思い出す。
「…ハイライトだけでいいです」
「おや、珍しい。同僚君の分は良いのかい?」
そういえばこの店主には話したんだったか、言わなけりゃよかったと密かに後悔する。
「ええ、もう必要ありませんから」
author:souyamisaki014
H0H0 Dr-knotty×2 four-boretto tutuji stengan774 highbriku eiansakashiba mishary carbon13 sansyo-do-zansyo
君だけは減ってくれるなホタル族 人にも蛍にもなれない祈り
author:izhaya
eiansakashiba ashimine tukajun×2 islandsmaster usubaorigeki pictogram-man Touyou Funky Dr-knotty highbriku
職が無くなって、もう死のうかと思ったんだ。近かったから樹海に行って、あてもなく彷徨った。何だか落ち着く場所があったから、そこに腰を下ろして、最後の一服を楽しもうと思ったときに、それが目に入ったんだよ。そう、解るだろ。
タバコの家だ。扉から柱から壁まで、全部タバコで出来てんだ。
なんてこった、と思ったね。俺は税金が騰がってからも一日に3箱吸ってたんだ。神様のお導きだと思ってな。生きる気力がもりもり湧いてきたんだ。これだけあれば、3カ月はもつぜ。俺はもう一度立ち上がった。
でも、吸えないだろ。家だから。
最初は煙突を吸おうと思ったんだが、火をつける場所が上になっちまうから、どうやったって吸えねぇんだな。あいにく鍵が掛かってるから煙突の下には行けねぇし。
そこで気付いたんだが、思うに、タバコで家を作っちゃいけねぇんだ。な。
手に持てないと、火をつけて、逆側を吸うって仕組みが上手く機能しねぇんだ。
どうしたもんかと思ってなぁ。
まぁ、その、どうしようもなかったから、何とか吸えないかと思って、軽い気持ちで火をつけたんだ。
悪かったよ、魔女さん。包帯が取れるまで、これで一服してくれや。
author:kata-men
ruka-naruse tsukajun usubaorigeki tutuji×2 teruteru-5 k-cal utsuki-k
じゅっ、と肉のやける匂いが煙と共にやって来る。
舌先に押し付けたそれをぐりぐりと押し付けると、目の前で縛られているそれはびくんと身体を動かした。
自暴自棄で起こした行動から3日、新聞の1面は未だその事件で彩られている。年季もののラジオからは情報提供を呼びかける音声が聞こえ、自分のしでかした行動の大きさを嫌という程に理解させられていた。
目の前にいるそれを見つめる。
大企業の令嬢であったはずのそれは、誘拐され縛られているにも関わらず大人しく座り込んでいる。舌先に吸い終えた煙草を押し付けたが声を上げることはなかった。それどころかそれは、私の顔を恍惚とした表情で見つめてきたのだ。
気味が悪い。非常に気味が悪い。
だがそれの恍惚とした表情は、自分の中にある何かをかき混ぜてくるような感覚を与えてきた。
それの吐息が聞こえてくる。
私は胸ポケットから煙草を取り出した。
author:utsuki-k
meshiochislash mishary pictogram-man konumatakaki stengan774 sansyo-do-zansyo×2 ruka-naruse Touyou Funky islandsmaster Dr-knotty
煙草を吸う奴は見栄張りの阿呆だ。
阿呆だから、二留が確定した夏の日も『教授なんぞにどうして僕の聡慧さが理解できるのだ』と嘯きながら煙草を吸うことができる。壁紙の黄ばむ六畳一間で、ポルノ映画を食い入るように眺める姿のどこに知性があるのか、私には分からなかった。
阿呆だから、タランティーノ作品に感銘を受けて煙草を吸うようになった甚六者の癖に『甘たるい煙草を吸う奴は男ではない』などと文句を垂れる。葡萄の香りのする煙を振り撒きながら女を侍らす髪の長い男を殴り飛ばし、それを庇った私ともども映画同好会を追い出されてしまった。
阿呆だから、見ず知らずの子供でも車に轢かれそうになれば後先考えずに走り出す。
とんだ見栄張りの阿呆だ。阿呆は死ななきゃ治らない。おかげで私は、自分では吸わなかった煙草を買って、雪の中を1人歩かなければならなかった。
中庭の小汚い喫煙室。車椅子を押す手を漸く止めると、私も箱から1本煙草を取り出す。驚く阿呆を尻目に、口に当てて火をつけた。ゆっくり息を吸い込んだが、喉を刺す煙にすぐむせかえってしまう。私を異性として見ていない阿呆は、それを見て面白そうに笑った。
煙草を吸う奴は見栄張りの阿呆だ。
author:mishary
mishary×3 utsuki-k hoojiro-san sansyo-do-zansyo shinogun tateito highbriku
紫は古来、高貴な色である。
それは、洋の東西を問わず紫の染料は得難いものであって、美しい紫色に染めることができるのはよく富める者、すなわち高貴なる者に限られたからである。
合成染料の登場によって紫の希少性は薄れたが、しかしその深い魔性の色合いは、我々をなお捕らえて離さない。
紫煙もまた、我々を捕らえて離さない。
「大航海時代」によってユーラシア大陸へ持ち込まれたタバコは、薬品或いは嗜好品として、わずか1世紀余りで世界へ普及した。タバコの消費方法は様々だが、時代と地域を通して最も広く受け入れられた方法は喫煙だろう。
タバコの葉を燃やして吸うことによる喫煙はアメリカ時代から存在し、様々な消費方法が考案されてきた。葉巻たばこ、紙巻きたばこ、あるいはパイプや煙管が好例である。
加熱され燻るタバコの葉から漂うこの紫色の煙を、人類は長らく愛好してきた。
しかし、人が煙を呑む一方で、タバコの方も数多の人を呑んできた。近代以降タバコの有害性が指摘されるようになり、今日では依存防止もあって膨大な税金がかけられるようになっている。
紫煙が古代の紫同様、ごく一部の富裕層のみが消費できる高級品となる日も、近いかもしれない。
author:sansyo-do-zansyo
usubaorigeki highbriku four-boretto ashimine kata-men p51 H0H0 teruteru-5×2
喫煙所でアメスピを吸う奴は嫌われる。他の煙草より燃焼時間が長く、連れを待たせてしまうからだ。
「へえ。いつも吸い終わってからボーッとしてるなあ、と思ってたけど、私を待ってたんだ。」
俺がメビウスを揉み消しながら言った台詞に、彼女はふてぶてしく答えた。彼女は、喫煙所に1つしかない椅子に座っていた。
「いや、俺は別にいいんだけど。昔先輩に言われたんだよね。それで、外ではこっちを吸うようになった。」
「なるほどねえ……。」
扉の方に目を向けて、彼女はメンソールの香りの煙を吐く。喫煙所らしい沈黙が流れた。彼女は吸いかけの煙草に口をつけず、顔を顰めてなにか言葉を探しているようだった。10秒程経って、彼女は透明な溜息をついてから、口を開いた。
「じゃ。また明日。」
そして、彼女は立ち上がって煙草を灰皿に投げ入れた。半分弱は残ったままのアメスピが見えたけれど、俺がそれに反応するより早く、彼女は出ていってしまった。
author:islandsmaster
hasuma-s meshiochislash four-boretto pictogram-man H0H0 Dr-knotty fes-ryuukatetu eveningrose ashimine×2 k-cal
施設に入るようになってから、祖父はめっきり健康になった。
かつての彼はそうではなかった。右手には常にメビウスの水色。夜は会社に相棒のクラウンを置いて、ふらふらと赤ら顔で帰ってきた。明るくて下品な笑い声、無遠慮で勇ましいサンダルの足音。節くれだった掌が、まだ低い位置にあった僕の頭を乱暴に撫でるとき、作業服からは煙の匂いが漂っていた。
まだ自分の足で歩けた頃、彼は絶対に煙草をやめなかった。母とどれほど大喧嘩をしても、彼は水色の箱を手放さず、食卓を離れて換気扇の下で口元に小さな光を灯していた。僕はよく手洗いに立つふりをして彼を追いかけ、襖の影から暗いキッチンに漂う煙の細い影に目を凝らした。
彼は死ぬまで煙草を吸うのだと思っていた。煙草に殺されるのだと思っていた。何よりも彼自身がそう信じ、それが運命だと僕に言い聞かせた。僕は頷いて彼に抱きつき、煙の匂いを吸っていた。
施設が完全禁煙だと知ったとき、彼は静かにそれを受け容れた。免許を返納し、家を処分し、ライターと水色の箱を捨てた。最後に会ったとき、彼は施設の窓辺に腰掛けて将棋を打ちながら、これはこれで幸せだよと笑った。
僕はまだ彼を受け容れられない。
author:teruteru-5
renerd meshiochislash×2 nemo111 Touyou Funky jiraku-mogana shinogun utsuki-k nununu highbriku
いつも、決まった時間に喫煙所にやってくるガキがいる。
有名進学校の制服を着て、丸眼鏡をかけている頭のよさそうな、所謂「優等生」というものだった。明らかに未成年であるにも関わらず煙草を咥え、煙を吐き出し、しばらくしたらそそくさと喫煙所を後にする。
俺はガキとよく話をしていた。人間関係や趣味等を語り合ったが、家庭の事情だけはどれだけ聞いても答えてくれなかった。
だけど、ある日、遂に家庭の事情について口を割った。
ガキ曰く、親は「毒親」らしく、自由なんて今まで手に入れられなかったという。ガキは自分が高校生であると言い、喫煙所から出ていった。
それから、ガキが喫煙所に来ることはなくなった。親ともめてるのか、人間関係で困ってるのか知らないが、赤の他人である俺には全く関係ないことだった。
だけど、最後に喫煙所から立ち去るときに呟いた言葉だけは今でも忘れられていないし、忘れられる気もしない。
「こうやっている間だけは自由なんだ」
きっと、この言葉は俺の心に残り続けるだろう。自由なんて手に入らないから。
author:usubaorigeki
izhaya eiansakashiba tutuji nemo111 kuronohanahana fes-ryuukatetu Touyou Funky imerimo pictogram-man
僕が幼い頃から、母はよく煙草を吸っていた。夜遅く帰ってきて、換気扇の下で足を組み、何の特別さも無く、当然のように紫煙をくゆらす。
昔、一回だけ何で煙草を吸っているのか聞いたことがある。母は理由なんて無いかな…と、笑って話していた。何か辛い事を誤魔化すためでもなく、「いつも通り」だから吸えるのだと。
だから、怖かった。母が煙草辞めようかな…って、笑いながら相談してきた時。禁煙しないと、長生きできないじゃない?って言ってきた時。何かが、母の中で違ったんだろうなって。
だから安心したんだ。昨日、母が静かに疲れた顔で、煙草を吸っていた時。僕が話しかけると、いつも通り不機嫌そうに無視された時。良かった、いつもの母だって。
母の死体を見ながら、僕はそんな思考を巡らしていた。何で母は僕を殺そうとしてたのかなって。正当防衛って認められるのかなって。……色々、そういうの考えるのがすごく嫌だったから。
警察が来るまで、僕は母から煙草を一本分けてもらって吸う事にした。特に理由は無い。
いつも通り、最初のピリッとした辛みの後、すーっと喉に粒子の細かい煙が入ってきて、最後に甘い味がした。
author:nemo111
pictogram-man kuronohanahana shinogun×2 ruka-naruse eiansakashiba 2meterscale k-cal stengan774 souyamisaki014
柔らかい女の肌に、彼の爪が食い込んで血が滲む。
爪切りをしてこなかった事を、男はすぐに後悔をした。だがそれも、耳奥を揺らす嬌声と、股座から湧き上がった快楽によって砂嵐のように搔き消えた。
破裂音、破裂音、そして静寂。
熱性の発作にも似た痙攣が背中を駆け上がり、男の口から呻きとなって吐き出された。栓が抜けた穴からは、淡桃色の粘液が流れ出ている。
倒れたままの女を置いて、彼はハンガーにかけられたコートの胸ポケットから、議会と銘打たれた箱を取り出した。乱雑に封を切るとリセスド・フィルターに口をつける。暫くすると、程よい甘さが口と鼻を抜けていく。
「嗜好品なのね、私も」
汗ばんだ髪を掻き上げて女は立ち上がった。やや大ぶりな胸元には、先程の痕が赤く咲いている。
質問に男は答えない。彼の口元からは、灰色の蛇が立ち昇っていた。沈黙は彼女が風呂場へと向かう足音で途切れる。小刻みな水温が聞こえてきたと同時に、彼は机に伏せていた自らのスマートフォンを手に取った。ロック画面には、テーマパークと思しき場所で笑顔で並ぶ、初々しい恋人の写真が設定されていた。
「別れたくねえな」
頭の焦げた芋虫が、男をじっと見つめていた。
author:fes-ryuukatetu
fes-ryuukatetu teruteru-5 tutuji hasuma-s imerimo ashimine izhaya renerd R-00X meshiochislash kronohanahana hoojiro-san
「よぉ、新入り。今日は暑いな」
「お疲れ様です。休憩ですか?」
「ああ。タバコ、吸うか?」
「いえ、結構です」
「そうか」
「……」
「おう、お疲れ」
「……お疲れ様です」
「タバコ、吸うか?」
「……じゃあ、1本だけ。」
「ん」
「ありがとうございます……ケホッ」
「ハハッ!不味いか」
「……はぁ、こんなものを吸う人の気が知れませんね。辞めないんですか?」
「……そうだな、嫁さんと子供でも出来たら辞めるかな」
「……そういうことは考えられるんですね」
「俺をなんだと思ってるんだ」
「ふふっ、すみません」
「すみません、お待たせしました……あら、タバコでも吸ってるかと思ってましたが」
「嫌味か?辞めたよ」
「ふふっ、昔のこと、律儀に覚えてたんですね」
「うるさい」
「……ありがとうございます」
「……ん」
「……ゴホッ」
「……」
「……タバコ、吸っていいか?」
「だめです。貴方、身体の状態を……」
「……最後だから」
「……1本だけですよ」
「……すまない」
「……」
「……暑いですね」
「こう暑い日は、初めて話した日を思い出します」
「タバコ、置いておきますね」
「じゃあ、また。」
author:Dr-knotty
ashimine izhaya meshiochislash×3 H0H0 nununu stengan774 souyamisaki014 northpole
いつもの休憩時間のルーチン。
いつもの場所に腰をかける。
いつものように火をつける。
火を揺らし、肺の中に煙を取り込み、少ししてゆっくりと吐き出す。
頭上からわざとらしく咳き込む声が聞こえてくる。
顔を上げれば、その後には必ず呆れたような声が降ってくる。
「どうしてそんな体に悪いもの吸いたがるかね。長生き出来ねえぞ」
これが挨拶みたいなものだった。いつもの、自分たちだけの定型文。ここから先の応答のパターンは無数にあった。
無視して業務の話をしたこともある。「いいものは体に悪い」と答えたことも、「お前はこうなるなよ」と言ったこともある。ああ、「お前よりは長生きしてやるさ」もあったか。
まったく冗談じゃない。
いつもの休憩時間のルーチン。
いつもの場所に腰をかける。
いつものように火をつける。
気紛れに、わざとらしく咳き込んで、「長生き出来ねえぞ」と呟く。
答える声があるはずもなく、ただ煙が換気扇に吸い込まれ、ほどけて消えていく。
いつものルーチン。
いつものように煙草に火をつける。
いつものように煙を吐き出す。
声は降ってこない。
いつもの静寂。
いつものように、煙がほどけて消えていく。
author:stengan774
carbon13 k-cal eiansakashiba nemo111 kronohanahana pictogram-man 2meterscale northpole eveningrose Dr-knotty
貴女の唇が離れていく。残り香は遠ざかる身体へ、名残惜しそうに纏わりついていた。貴女は私のものだ、今だけは。今一瞬だけなら、誰でも彼女の中に私の存在を嗅ぎ分けられる。だが一分先は?一時間先は?たったこの一夜でさえも、貴女を私で満たすことができるのか?
ふっ、と貴女は、そんな私の鬱屈を笑うように息を吐いた。唇を合わせ、叫ぶように貴女の中に吹き込んだ私の思いが、身を焦がす激情が、たった一息でこの薄暗い部屋に霧散してしまう。君は所詮、私の指で弄ばれるだけの存在なんだよと、貴女がそう暗に示したような気がした。不明確な、それでいて絶対的な主従。貴女が私を求めるならば、それに抗う術はない。それが愛でも遊びでも、ただそれだけで嬉しくて。
こんな関係を続けて良いわけがないと理解している。けれど貴女はその指先で、いつだってすぐ私の身体に火を付けてしまうのだ。その度に私の頭はパチパチと爆ぜ、この青白い細身はどうしようもなく貴女の思うがままになってしまう。
私の頭を貴女がポン、ポンと叩いた。それだけで私はまた燃え上がってしまえる。私は今夜、何度でもまた貴女に傅くだろう。この身のニコチンとタールを捧げて。
author:northpole
northpole×3 R-00X usubaorigeki islandsmaster nemo111 Dr-knotty stengan774
静かに紫煙を燻らせていた。もう何度目になるか分からないルーティーン、自ら定めた儀式の一つだ。目の前には面布を被った死体があった。若い女の死体。骨の形からそういう判定が下されている。短くなった煙草を灰皿に押し付け、面布をそっと取り去った。顔があるはずの場所には乱雑に断たれた髪と毟れられた後の肉、そして白い頭骨が鎮座していた。
顔を顰める。嫌な予感はしていたがまさかここまでとは思わなかった。続けて体の方のシーツも捲るがその状態は似たようなもので、辛うじて人の形を保っているだけという印象を受けた。懐から写真を取り出し見比べる。これがこうなるものなのかと思うとため息が出た。
懐に写真を戻すとき、硬質な紙に指が触れた。いつか渡された一枚の名刺。そこにかかれたシンボルが脳裏をよぎる。この死体に何が起きたのかは定かではない。だが、彼らに頼めば、あるいは。
しばしの逡巡の後、何も握らないまま手を戻す。確かに彼らに連絡すれば事態は解決するだろう。けれどそれに何の意味があるというのだ。彼らは鎮魂も慰めも与えない。ならばそれを与えるためには。
決意を胸に霊安室の暗がりを出る。警察の仕事はまだ、終わっていない。
author:stengan774
stengan774 mishary eveningrose ashimine shinogun imerimo hitsujikaiP nununu renerd northpole
死神の
燻る紫煙に
寝む夜の
黝き喰らい
アラームを止める
author:eveningrose
eveningrose×2 northpole Dr-knotty renerd meshiochislash sansyo-do-zansyo kronohanahana
煙草の煙の、鼻の奥にこびりつくような匂いが嫌いだった。だから、それを常に纏っているあんたのことも、嫌い。
やめろと言っても笑うばかりで、早死にするぞと言う僕に上等だとだけ吐き捨てるあんたの笑顔はいつも、吐き出す煙に霞んでいて。
「嘘吐き。そういうところも嫌い」
夏の暑さも、嫌い。コンクリートが帯びた熱に溶ける靴底の感覚が、余計な記憶を呼び起こすから。あんたが煙になったのも、ちょうどこんな夏だったから。
「今ならわかるよ、あんたがこんなもの好いてた理由。心配されたいだけだったんでしょ」
十年めの今日もまた、花のひとつも手向けられることのないその石に、僕は煙を吐きつける。かつてあんたがしてきたみたいに。自分の呼吸生きてる証が相手に溶け込むのを、どこかで期待しているみたいに──
煙草よりも、夏よりも、あんたのことよりも嫌いなもの。それは結局、嫌いだった同じ匂いの染みついた、僕自身だ。
author:northpole
northpole wagnascousin×2 hasuma-s fes-ryuukatetu tutuji H0H0 kata-men×2
体に毒だと煙草はやめたが、ライターだけは手放すことができなかった。
そいつの事が好きだった。いつもへらへらとしていて、煙草が好きで、けれど面倒くさがりでライターのオイルをいつも切らしている奴だった。
煙草を吸っていると煙草を咥えて寄ってきて、片眉を上げてライターを取り出す私にそこはシガーキスだろと笑いながら文句を言ってくるような、そんなふざけた奴だった。
お高いライターを何個も買って気分で使う変な女にそう珍しくもないライターをプレゼントして、俺の火はそれで点けてくれ、なんて言う勘違いした奴だった。
毎日煙草に火を点けてやっていたから、あの日も出がけに差し出されたそれに火を点けてやった。オイルが切れていたからと、あいつのくれたライターではなくしまい込んでいたコレクションで。
帰ってこなかった。肉片一つも戻らなかった。あいつの棺は空っぽで、空っぽのまま土に埋まった。何も入っていなければ煙草に釣られてあいつが帰ってくるような気がしたから。
今日も私はあいつが吸った煙草を買って、あいつがくれたライターを手入れして、何に火を点けるでもなく炎を手元で灯している。いつかこの炎が揺れる日を、私はずっと待っている。
author:carbon13
carbon13×2 konumatakaki H0H0 northpole 2meterscale stengan774×3 tutuji
ある
ある神の信仰はあるところにあった。あるとは最初からそこにあったことだ。ある人はあるとはあったことだと言った。煙はあった。煙は可分であったが、あったとは誰も言わなかった。私はあった。煙草を燻らせて、煙をあったことにした。大聖堂にある煙がある天井に這って、火災報知器に吸い込まれて音が鳴った。それは最初からわかってあったことだったのではないか?私は去った。あったとは知っていたが、ここまであるとはわからなかったのであった。
煙草が三つ並べてあって、それらは全て机にあった。右端の煙草の隣にはないことがあって、その隣にはもう一つ煙草があった。そこにシスターがあった。シスターの発言があった。神の目線がありましたよ、私の動揺があった。確かに罪があった。無知があった。あるいは、知識がないことがあった。それが正しくないことがあった? そうだろうか、シスターの発言があった。それは、あったことをあったとするのが罪があったことをなかったことにすることですよ、私はあった。懺悔室があった。おふざけがあった。シスターはこうして、自分のあったことを隠して私の本音をあったことにした。第一日目のことである。
author:hoojiro-san
hoojiro-san×2 Dr-knotty×2 utsuki-k meshiochislash tutuji kronohanahana hasuma-s nununu
PCの画面に齧り付いて、企画書を練り上げる。震える手で眼鏡のレンズを押し込んで、根気だけが指を動かしていた。
いつだろうか、徹夜の友が魔剤から煙草に代った日は。染み付いた魔剤に渇く脳を宥め、眼と喉と肺を早く紫煙で燻さねば。
あの人の訃報を聞いた時、私は呑気にセブンスターを吸っていた。
あの人が弾いた魂も、あの人の愛した煙も、あの人が示した道も。
貴方が遺した傷が治らないようにと、
吸い続けよう、願わくば傷が残るように。
author:konumatakaki
nemo111 2meterscale teruteru-5×2 ashimine Dr-knotty nununu mishary jiraku-mogana p51 tateito
疲れた身体に、ニコチンが染みていく。灰色の煙を吐きながら、小さな窓の先にある同じ色の空をぼんやりと眺めた。
今の仕事はとても楽だが、かつての職場で染み付いた喫煙の習慣はやめられない。身体には悪いし、今どきは肩身が狭いが、軽めの一本があるとないとでは違うのだ。
「それで、例の話はどうする?」
私の向かいで、この会社にあと一人しかいない喫煙者が言う。
「私は断らせてもらうよ。一社員に、そんな陰謀は似合わない」
そう言うと、呆れたように相手は首を振った。
「今の上司は君の才能を理解しているか?もし理解していたとしても、それをきちんと君の待遇に反映できているか?」
「この職場は悪くない給与も出るし、休みもしっかり取れる」
「……駄目なんだよ、お前がそんなところで燻っていていいわけないんだ」
「はぁ」
かなりギリギリまで燃えた煙草を灰皿に落とし、私はポケットをまさぐる。ああ、さっきので最後か。
「一本、もらえないか?」
「俺の話に乗って、この会社を変えるために手を貸してくれるなら」
そう言って、相手は箱から一本出して私に向けてくる。
「……いいよ。私はそれ以上に吸いたいんだ」
手を伸ばして、私は契約に同意した。
author:2meterscale
2meterscale stengan774 eveningrose tutuji eiansakashiba×2 R-00X highbriku meshiochislash four-boretto
灰にだって火は残ってるよ 倍々ゲームのなれの果て
空っぽの肺に煙草の煙をいっぱいにして 命を引っ張って近道を探そう
行きずりの相手と二人っきり 具体性のないオーバービュー
降下中の黒煙をぼくたちは浄化中 白になるまではずっと独演と独演
もう慣れてしまったよ裏切ることに フラジールなビビり合いをずっとずっと
響かない歌が散る風に ブロッケンの怪物を演じてんだ
「現時点での風向きは?」「あらぬ道へと」
知らず知らずのうちに煙は風に煽られ ぼくたちを憧れの先へと連れてって
先へ先へと風は否応なく吹いて へつらおうとも瑕疵なき愛のように
苦労をしろって言われても 黒から白へ変わんないよ簡単に
力持ちなんかじゃないぼくたちは 煙草の煙で空っぽの肺をいっぱいにする
「運頼みはよせ」曰く世間体様 セレンディピティの前でも同じこと言えるか
風は過去から未来へ吹いてって おんぶにだっこでもいいじゃない
ぼくたちが知る風は今の風だけ だから肺いっぱいのタバコの煙を空っぽにする
知らず知らずのうちに風は煙を散らす 然るにぼくたちはそれを見る
先へ先へと風は否応なく吹いて 懲りず媚びずぼくたちをその先へ
知らぬ存ぜぬを貫き通して 瑕疵なき愛のように連れてって
author:Dr-knotty
Dr-knotty×2 FeS-ryuukatetu nununu eiansakashiba nemo111 northpole mishary souyamisaki014 meshiochislash 2meterscale
下宿の窓を開けて狭いベランダに出れば、粘りつくような紫煙の匂いがまず僕の眼球を出迎えた。熱烈な歓迎、というやつだ。
顔をしかめながら後ろ手で窓を閉めれば、こうこうと蛍光灯の輝く部屋の中に響き渡っていた猥雑な声が一気に遠ざかった。ようやくの静かな暗闇にひとつ息をつく。
「なんだ、来たのか」
横から静かな声。暗闇に浮かぶ赤い光に視線を向ける。室内の明るさに眩んだ目で見えるのはそれだけだ。
「悪いですか」
「別に。君も吸ってみるか」
「生憎未成年なんで。新鮮な空気を吸いたくなっただけです」
「そりゃ悪かったね」
「別に」
そうかい、と小さく笑う声。窓一枚を隔てた喧騒は遠く、眼前の高速道路からは車がまばらに通り過ぎる音だけ。その両脇ではさびしい光が等間隔に並んでいる。
暗闇に少しばかり慣れた頃、ちらりと横を伺い見た。手の中から煙を立ち昇らせながら、どこか遠くを見ている。その瞳の中に、ちいさな光が星のように灯っている。煙草の火を、過ぎゆく光を、あるいはもっと遠くの何かを映しているんだろう。
それを漠然と見あげていると、不意に視界が滲んだような気がした。
煙草が目に滲みたんだろう。
author:p51
p51 teruteru-5 four-boretto H0H0×3 sansyo-do-zansyo hoojiro-san imerimo hitsujikaiP northpole
カチッ。
ライターの火を点けた。どしゃぶりの雨で煙草なんて吸えるはずもないのに。
アスファルトに叩き付けた煙草を靴の裏で踏みつける。微かな3-エテニルピリジンの香りは雨の匂いと混ざってすぐに分からなくなった。
自分が何をしたいのかも分からなかった。
カチッ。
ライターの火を点す。
author:ShinoguN
tateito stengan774 hoojiro-san fes-ryuukatetu hasuma-s×2 teruteru-5 utsuki-k tsukajun R-00X×2 ruka-naruse
メールは見てくれたかい?
添付のデータの通りさ。間違いない。気候変動だの地殻変動だの、最近の地球の活動は地殻付近に堆積した化石燃料の減少に応じて活発になっている。
さんざん温暖化が騒がれてたのも無理ないね。ガスも油も炭もガンガン燃やしてる内に気温上昇なんて分析結果が出たらそりゃ結び付けられるとも。だけど、原因は温室効果ガスじゃなく燃料そのものってことに我々は気づけた。しかもこの理論、天候だけじゃなく地中の動きの方も説明できるから大したもんだ。これで歴史が変わる。
これ?原油のサンプル。こんなドロドロが地球の奥深く(と言ってもモホ面よりは上だが)に溜まってるのさ。ニキビの中の膿みたいだろう。もしかしたら人類は地球の内側をキレイにしていったのかもね。
あー、はいはい。ニュース速報の音だよ。山火事だってさ。君のとこでも?やめてくれよ、何か暑く感じるからさ。いや、本当に暑くなってないかここ?
***
「アース。タバコは辞めたんじゃなかったか」
「あー、マーズに見つかるとはツイてないな。ここ数十年、息苦しくない気がしたからつい」
「数千万年単位でゼエゼエ言ってたやつが何言ってんだか」
author:tutuji
tutuji stengan774×2 Dr-knotty×3 Touyou funky wagnascousin izhaya jiraku-mogana×3 eiansakashiba
道行く老若男女。それぞれが平穏な生活を送る中、その人々に魔の手を伸ばす者がいた。
その日、ある街の民衆は1人残らず紙の様に平たくなると、クルクルと細く巻かれて忽ち魔の手に収まった。
「聴け人類よ!貴様らはこのディアボロ・メンソール・ライトⅢ世の名の下に、シガー王国の嗜好品として加工される運命にある!降伏せよ人類!」
上空に漂う煙をスクリーンに、敵の首魁が映し出される。挑発のつもりか、細く巻かれた人間の先端に火をつけながら、これ見よがしに人間煙草の煙を吸って見せつけた。
シガー王国は別次元から地球を植民地にするため、侵攻して来た超次元的敵勢力である。彼らの持つ圧倒的な武力によって人類は僅か数ヶ月で侵略を許してしまうのだった。
「人間は美味い煙を出しますねぇ……」
征服された街ではシガー王国の尖兵が人間を捕えて特殊な力で煙草に加工していた。
しかし、その絶望的な状況に光を刺す者が現れる。
「シガー王国許せねえ!街の人達を解放しろ!オレと喫煙バトルで勝負だ!」
「出たな……シガーバトラー煙!今日こそ貴様を煙草にして閣下の前で吸い尽くしてくれるわ!」
今まさに人類の命運を掛けた、シガーバトラーの熱き戦いが始まる!
author:highbriku
kata-men×2 konumatakaki ruka-naruse izhaya renerd p51 souyamisaki014 wagnascousin fes-ryuukatetu hasuma-s
「犬塚君ってアメスピ派なんだ」
風に揺れる長い髪をかき上げながら、先輩は僕のほうをちらと見て呟いた。
「そうなんです、昔からオレンジで」
「ふーん」
ぷらぷらと振った箱から興味なさそうに視線を逸らすと、先輩は慣れた手つきで隊服から緑色の箱を取り出した。
慣れた手つきで口にタバコを咥えた瞬間に、僕はすかさず優秀な後輩アピールをする。
「あ、火つけますよ……先輩はキャメルなんですね、ちょっと意外です」
「ありがと。まあ昔は色々吸ってたけどね、最近はこれなの」
「可愛い系ですし、フランとか吸ってそうだなって」
「あー、吸ったことないね」
視線を向けるも全く顔色を変えない様子に、これは空振りだなと僕は内心肩を落とした。
「さ、明日は早いし吸い終わったら行くよ。攻撃ミッションは初めてでしょ?」
「はい」
吸殻をケースに突っ込むと、僕はベースキャンプへと歩を進める先輩の背中を追った。
喫煙所の扉をくぐると、見慣れた長髪が目に入った。
「お疲れ様です!てか、先輩タバコ吸うんですね」
「お疲れー。うん、普通に吸うよ」
「俺もアメスピ派っす。赤ですけど」
「まあ昔は色々吸ってたけどね、最近はこれなの」
author:tutuji
tutuji northpole tateito p51 teruteru-5 renerd ashimine nemo111×2 tsukajun H0H0
「初めてのキスは煙草の味がするの本当だね。」
彼女は僕に笑って見せた。付き合い始めて数ヶ月。変わり者の僕を受け入れてくれた彼女との生活は幸せだ。
最初の出逢いは職場の喫煙所だった。僕はその頃、職場の仲間達と昨今の煙草に対する風当たりの強さに愚痴をこぼしていた。彼女が喫煙所に入ると都合が悪くなった仲間達は静かになったが、彼女と仲良くなりたかった僕は思い切って話しかけた。
彼女は僕が話しかけてきて、とてつもなく驚いていたが直ぐに打ち解けた。付き合い始めるまで時間は掛からなかった。
「僕の寿命が尽きるまで愛も体も不滅だ。だから最後まで君を1人にはさせない。」
彼女に告白をして僕らは付き合い、今は同棲も始めている。だがある日、大喧嘩をした。
「君臭いから窓開けて。」
「お風呂に入って洗ってるけど。」
反論に彼女は怒る。僕も彼女に怒った。そして部屋を別々にして眠った。
その夜。
同棲していた家が火事になり、彼女だけが帰らぬ人となった。火元は僕だった。あの夜だけ火が消えていればと思うが叶わない。
なぜなら僕は煙草だから。僕は命が宿ってしまった煙草だ。寿命が尽きるまで消えない。
彼女が死んだのは僕が人間と恋をした罰なんだ。
author:meshiochislash
meshiochislash k-cal tateito souyamisaki014 hoojiro-san izhaya renerd kata-men tsukajun
雨だけどベランダに出て燻らせる 昇らぬ煙に用などはない
author:nununu
tutuji×2 highbriku konumatakaki kuronohanahana meshiochislash northpole shinogu usubaorigeki
煙草を買った。
生まれて30年、一度も吸ったことのない煙草を買ったのは高校の同窓会の帰り道だった。
かつて校内で喫煙する不良たちを糾弾した元生徒会長は起業して、煙の染みついたいいスーツを着ていた。
彼は途中でいくらかの友人たちと連れ立って煙草を吸いに行った。
初めて私が出会った喫煙者は父方の祖父であった。
中学に上がる前の出来事だからはっきりとは覚えていないが、彼はがんで亡くなった。やはり肺がんだったのだろうか。
改めて、手元の煙草に目を落とす。
思えば、生徒会長と喫煙に出た友人たちは皆私より良い企業だったり、肩書が立派だった。
思えば、最近昇進した同期の同僚は昼になると昼食をとる前に喫煙所に向かっていた。
思えば、煙草を吸わなかった母方の祖父は姉の子の顔を見るまで生きてから亡くなった。
吸うか吸わぬか迷いつつポケットを漁る。
生憎と非喫煙者の私の手元にライターは無かった。
ライター一つのためにコンビニへ戻るのも、高校同期や同僚に引っ張られて吸い始めるのも馬鹿馬鹿しくなって、私は煙草を捨てた。
author:R-00X
R-00X×2 highbriku×2 tsukajun×2 p51 stengan774 eiansakashiba northpole 2meterscale wagnascousin
萎れたタバコの葉を見ながら空想する。初めて人類がウイルスという概念と出会った時、彼らは何を思ったろうか。濾過する事は叶わず、結晶となってもその力を失わず、しかし薬毒とは一線を画す幾何学的実体である"それ"。あるいは慄いたろうか、あるいは憤ったろうか、あるいは一笑に伏したろうか、あるいは──
その目に見えぬ大きさの分子機械の有用性は、そこらの食品のパッケージに印字された「遺伝子組み換え」の文字列を見れば、わざわざ語るまでもないだろう。人はウイルスによって己が肉体の最小単位にすらメスを入れ、その全てを解き明かし、その一片まで解き崩そうと試みる。そしてそれは、目に見えぬ大きさでなされる御業であるが故に、素朴な人の倫理観では濾過する事など叶わなかった──人は、己が手でネズミの一匹を縊る事には躊躇しても、端から生きていけぬネズミを作り上げる事には、驚くほど躊躇うことがないのだ。
初めて"それ"に出会った時、あるいは、人は魅入られてしまったのかもしれない。燻されてしまったのかもしれない。まるで、燃える葉の紫煙が、人の脳髄に染み付いてしまうように。
author:four-boretto
four-boretto×3souyamisaki014 2meterscale wagnascousin×2 shinogun hitsujikaiP utsuki-k renerd stengan774×2 islandsmaster
1855年7月3日:
私は1854年のクリミア半島での一件からアメリカへ舞い戻った時、私は非常に奇妙なモノを戦地より持ち帰った。
それは一見すると、パイプよりも貧弱であり、一摘みのタバコ葉を戦火に炙られた貧相な紙で纏めただけの代物だった。私の身形にこれが如何なものかと問われれば、当然ながら私はオリーブパイプの方が好ましいと答えるだろう。軍の精神をパイプごと剥奪されたそれは、見るからに軟弱であり、無造作に巻き付けられた火薬紙は、兵の見るに堪えない熱傷を模している。要するに、私には自信を持って、私の幻想的なる探検談がそれに打ち勝つことが可能だと主張できるからである。
デーズ君は私のフランスにおける探検談に少なからず興味を唆られたが、私の趣向に賛同することは無かった。彼は何時何時も私のパイプを常備するような人間であり、つまり、彼は飽くまで使用人としての体勢を全く以て崩さなかったのである。
author:eiansakashiba
eiansakashiba eveningrose nemo111 R-00X Dr-knotty hasuma-s usubaorigeki konumatakaki
煙草の匂いが鼻につくたび、思い出したくない記憶が頭の中にくゆり、広がる。
自分が物心ついた時にはもう彼女は煙草を吸っていた。ピアノの発表会で自分と連弾する直前に、彼女が出来て眠れなくて起きた午前0時に、合否を確認するために大学へ向かう車中で。自分のターニングポイントに彼女はいつもぷかぷか煙をふかしていた。
なぜ。と自分が問うと彼女は、貴方に大人だって思われたいから。と答えた。その後にでも、いけない大人だって思われちゃったかな。と笑って付け足した。自分は煙草を吸う大人たちを見るとそんなにうまいのかと思っていた。だが彼女に煙草の味を聞く気にはなれなかった。火のついたそれに唇を付ける彼女の横顔は、まるで煙草を吸うときだけ自身は存在している。煙草を吸わなければ存在意義が薄くなり消えるから吸うのだとでも言いたげだった。
大学に入り親元を離れ彼女は姿を消した。友人にはイマジナリーフレンドだと言われ両親から心配もされた。故に自分もあれは悪しきものだと忘れるように努めた。だが大学の敷地で、夜の飲み屋街で、アパートの隣人がベランダで、煙草を吸うたびに微笑が現れ、すぐに消えていく。まるでまだ子供だと言いたげに。
author:eiansakashiba
eiansakashiba kata-men souyamisaki014×2 tutuji Touyou Funky carbon13×2 sansyo-do-zansyo hasuma-s jiraku-mogana
「…おい、タバコ持ってねえか」
「…持ってるわけ、ないじゃん。ここにぶち込まれる前にボディチェックさせられたんだし」
「だよなあ…持ってても手錠どうにかしねえと吸えねえしなあ」
「あ…いやでも」
「アテがあんのか」
「看守が運んできた食事に嫌がらせでツバとか虫とか入ってて、シケモクも入ってた」
「お、上出来」
「正気…!?絶対バッチいよ、それに手錠どうするの」
「一応聞くけどフォークの類は?」
「ううん」
「あったところで使える訳ねえし犬みてえに食えってことか…よし、口に加えて俺の口まで持って来い」
「やるわけないじゃん」
「ふーん、じゃずっとこのままでいいんだな。お前には算段があるんだ」
「…意地が悪い」
「いやあ悪いねえ間接シケモクキッスなんて…」
「はやふふはえははいほ!」
「すまん。…よっと」
「…火は」
「んー?いらん。シケモクでも火がなくてもタバコはタバコよ。ほれ視界一面を覆うほど煙が出てきて…霧散した頃には手錠と牢屋のカギは全部外れてる」
「…驚異的ね。それが貴方の異常ってことなんだ、日奉 芥葉(いさなぎ かいば)」
「まあね~..さっ出ようか。今度こそ噓のない真実の自由を追い求めに。太陽の黄金律の導きに沿って、な」
author:WagnasCousin
wagnascousin touyou funky×2 hasuma-s k-cal jiraku-mogana tutuji eiansakashiba konumatakaki shinogun izhaya renerd×2
「嘘です!嘘に決まっています!主人がこんな事するはずがありません!」
エス夫人は白いベッドの上に横たわる主人の遺体に縋り付き、泣き叫んでいる。見かねた刑事が口を挟んだ。
「先ほどの話は本当なのか?」
私は目を閉じた。私も鬼ではない。現実を受け止められないエス夫人の気持ちはよく分かる。だが、いつか前を向いて貰うために真実を明るみにしなければならない。
「先ほど申し上げた通り、昨晩エヌ子さんだけはご主人と二人きりになる機会があった訳です」
「その殺害方法が信じられないのだが」
「驚くべき手口です。彼は経口による急性ニコチン中毒で亡くなりました。ですが、普通ニコチンは致死量を飲んでも吐いてしまうんです。どうすれば良いか、刑事さんならご存知でしょう」
「アルコールを飲ませれば解決するはずだ。毒物の作用が増強する上に認知能力の低下も狙えるな」
「はい、エヌ子さんはアルコールを飲ませ、執拗なボディタッチによりワンチャンあると誤認させた訳です。そしてエヌ子さんはパーティーゲーム……いえ、自身は安全圏にいながら死のゲームを仕掛けた訳です」
「それが煙草ポッキーゲームと言う訳か……!」
エス夫人の泣き声が一際大きくなった。
author:hitsujikaiP
hitsujikaiP×5 renerd mishary×2 stengan774 pictogram-man four-boretto konumatakaki
大崩壊以前のラテン語文献における「たばこ」の最も重要な言及は、「opus ex foliis siccis plantarum generis Nicotianae factum」の一文だろう。通説によれば、この文は「たばこはplantarum generis Nicotianaeの葉を乾かして作ったもの」という意味になる。これでは、まったく意味が通じない。21世紀以前の書物に現れる「たばこ」という物品は、旧世界資料発見以来、古くから議論の的となっていた。「たばこ」とはある種の草を加工した物品であるとされるが、それがどのような目的の元使われていたかを知るには、数少ない旧世界資料のほかには、考古学によるしかない。断片的ではあるが、「たばこ」という語の用例は、物語などで描写されている。大崩壊直前の作品『容疑者Xの献身』の描写は面白い。
「草薙の指に挟んだ煙草が、半分以上灰になっていた。彼はそれを灰皿に落とした。」
ここでは、「たばこ」は指に挟み、灰になるとされている。これが当時の一般的用法かは知るすべもないが、用途のわからないものをすぐに宗教と結びつける考古学の考えよりは信用できるだろう。
author:tateito
tateito×2 sansyo-do-zansyo imerimo×2 highbriku ruka-naruse souyamisaki014
煙草は身体に悪いからこそ魅力的だ。
あえて無駄で意味のない事をするからこその趣味であり悪癖なんだ。
肺ガンにすらならないなら、どうしてあんな煙たくて熱くて臭いモノを吸わなきゃならないんだ?
アルコールやギャンブルも同じだし、スポーツやコンピューターゲームの類だって害が無ければ誰だってしない。美食だってブクブク太って血液が腐らなければ誰がわざわざガチョウを脂肪肝にするものか。
紙巻き煙草のパッケージにデカデカと身体への害が書かれているのは言うまでもなく宣伝文句だ。
緩慢で怠惰な自殺こそがこの世で至高にして究極の遊びなのさ。
そう話す彼は人類が文明を持つより前から生きている不老不死のバケモノだ。
当然、煙草の害が知られていなかった頃から煙草は吸われていた事は知っている。
しかし、彼が今そう思っているということは紛れも無い真実だと感じた。
人もバケモノも、自分にない何かを求めるモノだ。
author:pictogram-man
kuronohanahana sinogun mishary jiraku-mogana 2meterscale×2 islandsmaster×3 nemo111 meshiochislash k-cal
無精髯の男の口元から自由落下して、未だ吸い切られておらず、副流煙を巻き散らしながら、小さい水溜りの隅に着水した吸い殻は、燃焼点の温もりと吸い口の冷たさを味わいながら死を感じつつも、我が眼前に広がる黒色火薬の平原に惹かれていた。
今ここで、ささやかで物理的な一押しがあれば、例えば風が少しばかり吹いて火種が火薬に触れさえすれば、吸い殻を蝕む冷たさは一挙に解消されるはずだ。若しくは、黒色火薬の方から近づいてきてもいい。無精髯の男の助けを借りてもいいのだが、彼はどうも気分が悪そうに膝を折り頭を地面に擦りつけて黙りこくっている。
もはや猶予はなかった。吸い殻は、自らが行動し黒色火薬のもとまで向かうしかなかった。芋虫のように我が身を折り曲げ伸ばし、消えかけの火種を消さないように慎重に、濡れそぼった半身を引きづりながら。
爆音が響き、熱波が吸い殻の背中を押し潰す。黒色火薬は吹き飛び、遠くに飛んで行った。だが火種は激しく燃え上がり、前進する力は益々増し、黒煙巻き上げる蒸気機関車のように吸い殻は雄叫びをあげた。
足音が通り抜ける。水溜りは靴底に勢いよく押され、巨大な津波となって吸い殻を飲み込んだ。
author:Touyou Funky
Touyou Funky four-boretto kronohanahana pictogram-man imerimo 2meterscale tateito northpole k-cal p51 renerd
財団職員の喫煙率は高い。一方肺がんで死ぬ職員は割と少ない。健康を気にする間もなく死ぬ奴が多いからかもしれない。嶋もその一人だった。正確には一本の煙草を吸い切る前に彼は死んだ。所謂場所系のオブジェクトの行軍中の時だった。我々はどのくらい広いかも分からない原っぱを3日程歩き続けた。芝以外何もないところだった。休憩の時決まって嶋はまず初めに後生大事に懐にしまい込んだ煙草の箱を取り出した。長い行軍の間ずっと服がこすれあっていたので箱の角は彼の性格のようにねじれてしまっていた。最早話題の尽きた一行を煙が包み込んだ。嶋の口からは気の利いた冗談は出ず、ひたすら煙が出るだけだった。一口につき人間の肺の3倍の容積にあたる煙が産出された。3日に渡る古典的条件付けの成果か、私はその臭いに静かな安らぎを感じていたことに気づいた。嶋が消えた。予兆すらなかった。我々間抜けどもはそれがオブジェクトの仕業だと気づくまでただ呆然としていた。彼の痕跡は火のついて短くなった煙草しか残らなかった。隊長から怒鳴られるまで、私はその先から出る毒々しい息吹が空気に溶けて無くなっていくのをぼんやりと見ていた。
締め切りより後に送っていただいたため、掲載のみとします。
カチリと音を立たせ、煙草に火をつけ、ゆっくりとそれを吸う。
吸った煙が身体の中に溜まる。身体の中にあるその煙は確かに心を落ち着かせ、スッと頭が冴える。そうしてふと曇り気味の空を見上げ、またゆっくりと息を吐く。煙草の煙を含んだそれは空に浮かぶ雲に紛れるかの様に消える。
いつからだろう、この煙草が、好きとなったのは、空が、より安心に浸れる物となったのは…
あぁ知ってるさ、世界は巡り巡って、いや、巡り過ぎなほど動き回たからだろう。世界には異常が、超常が蔓延り過ぎている事を、あの夏の日、世界が知ってから世界は大きく変貌を遂げ、昔の非日常はとうとう私生活にまでその根を下ろした。
隠れていた巨大組織、空間移動、神の発電所、軌道エレベーター…
そんな、まるでフィクションの様に変わり果てた世界に人々は順応していったが、自分はどうしても順応出来なかった。急速に変わり続ける社会にも、生活にも疲れてしまった。そうしてそんな中でも数少ない、変わる事なく生活の中にあったこの煙草ももう直ぐ廃番になる。
また、煙草を一吸いし、ゆっくりと、雲の晴れてきた空へともう一度目をやる。
あぁ、どうかお前も変わらないでおくれ、青い…青い空よ
結果発表!
目利き部門
優勝
14point stengan774
準優勝
9point suamaX
作風部門
優勝
5point No.47 hitsujikaiP
主催者の! 岡目八目
目利きで勝ちすぎて殿堂入りで主催に回ったと噂の俺のワンポイントアドバイスです。偉そうです。
No.2 「翌日成人するが未成年の主人公」「ひねくれている」「文体も特にいじっていない」と個人的にはサービス問題くらいの気持ちで書いたんですが、なぜかあまり当てられず。確実に取りたい問題だったと思います。
No.8 あなたたちは何も悪くない。この主催の痛ツイいじりをしっかりやってくる所業、souyamisaki014を確定させるでしょう。彼でなくともまあmeshiochislash本人だと思うでしょう。
renerdです。僕はこの企画でrenerdの名が真っ当な良作に投票されるたび、「お前らが思ってるよりそいつは頭おかしいぞ!!!!」と叫んでいました。でも冷静に考えて一作しか出してない彼がこの一作だと予想できる人はおそらくいないでしょう。仕方ない、けれど覚えて帰ってください。renerdは狂っています。
No.9 良作ですね。ここでみなさまに有用なコツを教えますが、まず作品を見て「SCP主体の人」か「tale主体の人」かを見分けましょう。SCP主軸の人(今回ならこの作品の著者であるtukajunさん)は発想を軸に作品を組み立てる傾向にあります。ただ今回この傾向を破ってtale勢みたいな書き方をしていたSCP勢のeiansakashibaさんがいたので、僕としてもこの定石を考え直しているところです。
No.32 関係性ガン振りだろ!!!konumatakakiを視野に入れようよ!!!!
No.37 販促ホビーアニメっぽいですね。この時点でtutujiさんかjiraku-moganaさんに当たりをつけてもいいと思います。もちろん文体シャッフルでの常識である「寿司題材でDr_kudoを選んではいけない」の原則に似たところはありますが、結局時間制限あり500字では著者は手癖で「書きたいもの」を書く傾向があります。ホビアニをやりたい人であるとは思っていた方がいい。
ただ今回No.3もホビアニというか、販促系っぽいのでむずそう。